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モンスターストライク リミックスで目指す次世代クリエイター 【第3回】モンスト音楽の制作現場

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スマートフォン向けアプリ“モンスターストライク”(以下、モンスト)のメインテーマをリミックスする“【XFLAG公式】リミックスコンテスト”が開催された。応募受付は終了したが、今回はゲスト・リミキサーのmono(神聖かまってちゃん)による制作解説と、モンストを手掛けるXFLAG Sound Studioのフィールド・レポートをお届けする。  

モンスターストライクとは?

tsuioku_ashura_02 世界累計利用者数4,900万人を突破したスマートフォン向けアプリ。ゲームの内容はシンプルで、自分のモンスターを指で引っ張り、敵のモンスターに当てて倒していくというもの。最大4人までの協力プレイが可能となっており、強い敵や難しいクエストも協力してプレイすることにより突破することができたり、1人で遊ぶよりも多く報酬が得られたりするのも魅力の一つだ。今回リミックスする「モンスターストライクメインテーマ」をはじめ、多くの楽曲を作曲家の桑原理一郎が手掛けている。  

mono(神聖かまってちゃん)

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自作のMVなどで注目を集め、現在も精力的にライブを行い、オーディエンスを熱狂させ続ける4人組バンド、神聖かまってちゃんのキーボード担当mono。今回はシンセサイザーを多用し、4つ打ちのキックから華やかに展開していくアシッド・ハウス/アシッド・テクノに仕上げている。

monoの音源はこちらからチェック!  

DJ的な感覚で直感的にリミックスしました

 もともとアシッド・ハウスやアシッド・テクノが好きだったんです。今回リミックスのお話をいただき、自分が好んで聴いているジャンルをベースにするのが一番やりやすいかなと思い、このようなアレンジにしました。  制作の流れとしては、サンプルのビートに、使用必須の武田真治さんのサックス音源を乗せてみて、テンポや音の雰囲気が合うか試しながら進めました。DJ的な感覚で作っていったので、実際に制作を始めてからは1日半ほどでリミックスが完成しましたね。  リズム・トラックは、アシッドなノリを出すために、ROLAND TR-707系のビートと五十嵐公太さんのドラム素材を半々くらいの割合で使用しています。五十嵐さんの素材にはBITWIG Bitwig Studioに内蔵されているフランジャーをかけて、独特の雰囲気を演出しました。  同じくソフト・シンセはBitwig Studioに搭載されているPolysynthを使用しています。冒頭のハモリのように入っているシンセはPoly Pitch Benderというプリセットで、パッドのように聴こえるサウンドはプリセットのSaw Reverb Plucksを使っていますね。楽曲の冒頭から鳴っているアルペジエイターのようなサウンドは、ROLAND TB-303を再現したFUTURE RETRO Revolution R2です。内蔵されているサウンドを一つずつ聴きながら、16のパターンを重ねて構築していきました。地道で時間のかかる作業でしたが、TB-303の王道なサウンドに寄せた音作りができたかなと思います。最初から16音すべて使ってしまうのは展開的にもったいないので、最初は音数をセーブし、後から残りのパターンを追加して、華やかになるようにしました。  また、曲の後半からうねるようなシンセが入りますが、これはPIONEER RMX-500を使用しています。ちょうど買ったばかりだったので、せっかくだから使ってみようと思い実験的に取り入れてみました。直感的に操作して、納得がいくまで何度も録り直しましたね。最後に転調するのですが、その直前に鳴っているアグレッシブなシンセとスクラッチ音もRMX-500です。転調する合図として入れたのですが、非常に分かりやすくなったかなと思います。転調は一度完成したときには無かったのですが、ずっと同じキーでいるのも退屈だなと思い、急遽(きゅうきょ)取り入れました。  このようなコンテストがあると、どうせ機材を買わなきゃダメなんでしょと思う人もいるかもしれませんが、僕も基本はDAWソフト内蔵のエフェクトとシンセで完成させました。アイディアがあればパソコンだけで何でもできる時代なので、ぜひリミックスに挑戦してみてください!     [caption id="attachment_77983" align="alignnone" width="650"]▲BITWIG Bitwig Studioに内蔵されているPolysynth。Poly Pitch Benderというプリセットを使用しており、細かな数値は初期設定からあまり変えていないとmonoは語る ▲BITWIG Bitwig Studioに内蔵されているPolysynth。Poly Pitch Benderというプリセットを使用しており、細かな数値は初期設定からあまり変えていないとmonoは語る[/caption]   [caption id="attachment_77984" align="alignnone" width="628"]▲ROLAND TB-303系の音を求め、6~7年ほど前に購入したというFUTURE RETRO Revolution R2。このリミックスでは当初からRevolution R2の音を前面に押し出すことを決めていたとのこと ▲ROLAND TB-303系の音を求め、6~7年ほど前に購入したというFUTURE RETRO Revolution R2。このリミックスでは当初からRevolution R2の音を前面に押し出すことを決めていたとのこと[/caption]   [caption id="attachment_77985" align="alignnone" width="650"]pioneer_RMX500 ▲転調の直前などで聴こえるアグレッシブなシンセ・サウンドはPIONEER RMX-500によるものだ。本体と同機能のプラグインが付属しており、Bitwig Studio内で処理し、ハードをコントローラーとして使用したという[/caption]    

XFLAG Sound Studio 〜XFLAGコンテンツのサウンドが生み出される場所〜

190128_0003

モンストをはじめとしたXFLAGスタジオが手掛けるコンテンツの音楽面を担当する“XFLAGサウンドチーム”。多くのユーザーを熱狂させるコンテンツのBGMや効果音が、ここXFLAG Sound Studioで生み出されている。リミックスコンテストのデモ作品を制作した、XFLAGサウンドチームの早坂匠氏とタニサトシ氏に案内してもらった。

  [caption id="attachment_77987" align="alignnone" width="650"]▲XFLAGサウンドチームのタニサトシ氏(写真左)と早坂匠氏(同右) ▲XFLAGサウンドチームのタニサトシ氏(写真左)と早坂匠氏(同右)[/caption]  

楽器やボイス録音はもちろんディスカッションする場としても活用

 XFLAGサウンドチームのデスクが並ぶフロア。そこに隣接する形で、XFLAG Sound Studioが設けられている。コントロール・ルームとレコーディング・ブースという構成だが、どちらにもワーキング・デスクを用意することで、それぞれ別の制作が行えるようになっているという。DAWはAVID Pro ToolsとSTEINBERG Cubaseを導入しており、モニター・スピーカーはGENELEC 8330Aを使用。コントロール・ルームのラックにはUNIVERSAL AUDIO LA-610 MKⅡ、RME Fireface UFXⅡをマウントしている。また、レコーディング・ブースにはRELOOP Mixon4やKEMPER Profiler Rack、HUGHES&KETTNERのギター・アンプなどの機材を用意。XFLAG Sound Studioは、楽器や音声の収録から、ミックスやMAまで可能だ。早坂氏が設立の経緯とスタジオでの具体的な作業を説明してくれた。  「さまざまなゲームやイベント、動画コンテンツなどを展開していく中で、音声収録の需要が高くなってきました。社内にスタジオがあれば外部のスタジオのブッキングをせずとも、“じゃあ、明日録ろうか”ということが可能になる。そこで業務の効率化を考え、2017年に設立しました。僕の場合は、楽器のレコーディングや歌が必要な曲のときに仮歌を録ったり、各クリエイターの成果物をレビューするときに使用しています。また、クリエイター間の技術共有と相互理解を目的とした定例企画があり、お題に対して30分の制限時間内に作曲し、それを披露し合うということもやっています」  タニ氏は「僕はある程度大きなボリュームでプレビューする際に使用しています。その際には、サウンド担当だけでなく案件の担当者も呼び、イアフォンとは違った環境でモニタリングしていますね。また、メロディを考えるときにも、自分のデスクだと周りに気を遣ってしまいますが、スタジオだとより集中して気兼ね無く口ずさみながら作ることもできるので重宝しています」と語る。  

将来的には部署や会社を越えさまざまな方と一緒に活用していきたい

 それでは【XFLAG】公式リミックスコンテストのデモ作品の制作ではどのように活用したのだろうか。まずは早坂氏が制作を振り返る。  「今回僕は武田さんのサックスと五十嵐さんのドラムに、ベースとピアノを重ねる形でリミックスをしたのですが、XFLAG Sound Studioで実際にアンプを通してベースとキーボードを鳴らし、発想を膨らませました。完成した音源のモニタリングも行いましたね。普段の制作から、細かいノイズはヘッドフォンでチェックしますが、最終的な出音はスピーカーでの確認を重視しています」  タニ氏はどのように制作を行ったのだろうか。  「僕の場合はAstroNoteSの関野元規さんと共作したので、彼のスタジオと僕のデスクで制作を行い、XFLAG Sou nd Studioで確認作業をしました。最初のアイディア出しの段階から、最終のチェックまで使用したという感じですね。制作はデスクで、大きな音で確認したい場合はスタジオでという使い分けです。いろいろな環境でモニタリングすることは僕も大事だと思うので、XFLAG Sound Studioに幾つかスピーカーを持ってきて、聴き比べも行いました」  最後にXFLAG Sound Studioの展望を両氏が語ってくれた。“開かれたスタジオにしたい”とタニ氏。  「社内のサウンドチームだけでなく、社外クリエイターの方も交えて一緒に音を生み出す場にしていきたいですね。ミクシィは“コミュニケーション創出カンパニー”を掲げているので、ただのスタジオではなく、外部の方を招いてセミナーを行ったり、一緒に学んだりする機会なども設けていければと思います」  早坂氏も多くの人が使ってみたいと思うようなスタジオにしていくことが理想だという。  「【XFLAG公式】リミックスコンテストも、“サウンドクリエイターが集まり相互に交流し刺激し合う場をつくりたい”をコンセプトにしているので、僕たちだけでなくいろいろな人たちを巻き込み、一緒に盛り上げていきたいなと思います。“あのスタジオを使ってみたいよね”と言われる活動を展開して、音楽クリエイターのハブになるような場所にしたいですし、音楽業界全体に何かしら刺激を与え、大きなムーブメントを作っていきたいですね」     [caption id="attachment_77988" align="alignnone" width="650"]190128_0012 ▲レコーディング・ブース内にもデスクを設けることにより、別の作業を同時に行うことが可能となっている。マイクは写真のNEUMANN U87AIのほか、AKG C414-XLⅡ、SHURE Beta 58Aなどを用意[/caption]   [caption id="attachment_77989" align="alignnone" width="650"]▲スタジオのすぐ隣にあるXFLAGサウンドチームのデスク。普段は各人がデスクで楽曲制作を行っている。コミュニケーションの取りやすいデスクと、集中して作業の行えるスタジオを適宜使い分けているそうだ ▲スタジオのすぐ隣にあるXFLAGサウンドチームのデスク。普段は各人がデスクで楽曲制作を行っている。コミュニケーションの取りやすいデスクと、集中して作業の行えるスタジオを適宜使い分けているそうだ[/caption]  

応募総数170通 ただいま審査中!!

結果は3月25日12:00に特設サイトで発表。また、同日発売の本誌5月号では結果発表とともにREMIX JUDGES(審査員)のコメントも掲載予定だ!    

特設サイトhttps://xflag.com/sound-creators/remix-contest-vol1/

  サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より転載 [amazonjs asin="B07NMZJSR6" locale="JP" title="Sound & Recording Magazine (サウンド アンド レコーディング マガジン) 2019年 4月号 雑誌"]

MIDOが使う「Pro Tools」第2回

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打ち込んだドラムをパーツごとに分割してオーディオ化

 こんにちは、MIDOです。前回に続き、AVID Pro Toolsでのビート・メイクについて解説していきます。今回は、打ち込んだドラムのパラ出しについて。前回、上ネタの解説〜ミックスについても予告していたのですが、説明することや紹介したいショートカットが多くなってしまいましたので、こちらは次回にしたいと思います。  

MIDIノート・ナンバーごとの分割は イベント操作を使って一瞬で行える

 前回NATIVE INSTRUMENTS Batteryを使って打ち込んだドラムのMIDIデータは、1つのトラックになっているため、キック/スネア(クラップ)/ハイハットの音量を個別に調整する場合、Battery上から操作する必要があります。ですが、それだと作業効率が悪いのでPro Toolsのフェーダーで音量調整ができるよう、オーディオにします。今回は作業効率を優先し、筆者が確実だと思う手順で解説していきます。  まずは打ち込んだMIDIクリップを選択して、前回も紹介したoption+0で“イベント操作ウィンドウ”を開きます。そこで、“ノート選択/分割”を選択。ピッチ条件を“すべてのノート”、アクションを“ノート分割”、“コピー”して“音程ごとに新規トラック”を選び、実行します。 [caption id="attachment_78177" align="alignnone" width="345"]打ち込んだドラムのデータをMIDIノート・ナンバー=ドラム・パーツごとにトラック分けするイベント操作設定 打ち込んだドラムのデータをMIDIノート・ナンバー=ドラム・パーツごとにトラック分けするイベント操作設定[/caption]    すると、打ち込んだドラムの、使用した音階(MIDIノート・ナンバー)の数だけインストゥルメント・トラックが作成されます。今回はキックとスネア、ハイハットで3つの音階を使用したので、3本のインストゥルメント・トラックが作成されました。この段階で、元のインストゥルメント・トラック(Batteryがインサートされたもの)はミュートしておきます。  次に、1つ下のインストゥルメント・トラックのインサート・スロットに、元のトラックのBatteryを、optionキーを押しながらドラッグ&ドロップします。元のドラムのトラックと同じ設定のBatteryが複製されます。3つのうち一番上はハイハットを打ち込んだトラックですので、試しに再生してみるとハイハットだけが流れます。  ここで、イベント操作で作成した3つのインストゥルメント・トラック(ハイハット/スネア/キック)を選択します。次に、shift+optionを押しながら、トラックの出力を任意のバスにします(以下ショートカットはMac用です)。仮に1-2としておきましょう。そうすると、3つのトラックすべての出力がBus 1-2となります。shift+optionを押しながらトラックの入出力を変更すると、選択したトラックの入出力を一括で変更することができます。オーディオ・トラックでも使える技ですし、便利ですので覚えておきましょう。 [caption id="attachment_78176" align="alignnone" width="650"]複数のトラックを選択し、shift+optionを押しながらどれか一つの入出力を変更すると、選択したトラックすべてが同一の設定となる。これに⌘を加えると、Bus 1-2、3-4、5-6……のように昇順になる 複数のトラックを選択し、shift+optionを押しながらどれか一つの入出力を変更すると、選択したトラックすべてが同一の設定となる。これに⌘を加えると、Bus 1-2、3-4、5-6……のように昇順になる[/caption]    続いて、モノラルのオーディオ・トラックを用意します。私の場合は、テンプレートのセッション・ファイルに、あらかじめ録音用のモノラルのオーディオ・トラックを用意しています。このトラックのインプットをBus 1にし、録音待機にして、実際に録音してみます。この段階で、メーターが振り切れている場合や音量が小さ過ぎる場合は、再生しているインストゥルメント・トラックのフェーダー、またはBattery内の該当セルの音量フェーダーで適切な音量に調整します。  今回は4小節ループのドラム・パターンをオーディオ化しています。ですので、曲の頭から最後までを録音する必要はありません。4小節過ぎたくらいまで録音したらストップして、スネア→キックを順に同じ手順でオーディオ化します。録音したデータは、後に解説しますが、クリップの頭とお尻を調整してリピートします。 [caption id="attachment_78175" align="alignnone" width="650"]ハイハット、スネア、キックをオーディオ化した状態(青いオーディオ・トラックはキック、クラップ=スネア、ハイハットの順に並び替え済み)。同じことを行う方法はほかにもあるが、筆者は作業の確実性とスピードを考えて本稿のような手順を採用している ハイハット、スネア、キックをオーディオ化した状態(青いオーディオ・トラックはキック、クラップ=スネア、ハイハットの順に並び替え済み)。同じことを行う方法はほかにもあるが、筆者は作業の確実性とスピードを考えて本稿のような手順を採用している[/caption]    この後は、ハイハットのMIDIトラックで使用したBatteryをそのまま次のインストゥルメント・トラック(スネア→キック)へ、順にドラッグ&ドロップします。これを繰り返して、使用したドラムのパーツ数分の短いオーディオ・クリップを作ります。    

オーディオ編集を高速化する ショートカットを活用せよ

 次に、録音したオーディオ波形の縦幅と横幅を最大まで拡大します。まず、コマンドフォーカスがオンになっていることを確認しましょう。 [caption id="attachment_78174" align="alignnone" width="300"]編集ウィンドウ右上のコマンドフォーカス・ボタン。これをオンにしておくと、例えば通常⌘+X/C/Vのカット/コピー/ペーストがX/C/Vだけで行えるようになる 編集ウィンドウ右上のコマンドフォーカス・ボタン。これをオンにしておくと、例えば通常⌘+X/C/Vのカット/コピー/ペーストがX/C/Vだけで行えるようになる[/caption]    そして、波形表示の縦幅と横幅を最大まで拡大します。縦幅は⌘+option+@/[(日本語キーボードの場合)で縮小/拡大、横幅はRキーで縮小、Tキーで拡大です。波形の頭が小節の頭からわずかにズレていることが多いので、その補正をしていきます。前回も書きましたが、私は完全に正確で機械的なドラム・パターンを好むので、オーディオ・クリップの頭に少しでも余白がある場合はカットします。  続いて編集モードをSLIPにして、カットしたい部分をクリックし、キーボードのAを押します。そうすると、クリップの指定した部分より前の部分が削除されます。ちなみに、指定した部分より後ろを削除したい場合はSを押します。 [caption id="attachment_78171" align="alignnone" width="650"]コマンドフォーカスをオンにした状態でAを押すと、クリップの選択位置より前がトリミングされる。コマンドフォーカスを使用していない場合はcontrol+Aで同じことが行える コマンドフォーカスをオンにした状態でAを押すと、クリップの選択位置より前がトリミングされる。コマンドフォーカスを使用していない場合はcontrol+Aで同じことが行える[/caption]    これで、クリップのスタート位置が完全にドラムの発音位置になりました。Pro Toolsの左上のモードをGRID(絶対グリッド)にして、小節の頭にクリップを合わせます。  次に、4小節ピッタリになるようにマウスで選択し、shift+option+3を押します。すると、クリップが統合されて4小節ピッタリのクリップが作成されます。このクリップをoption+Rを押して、指定した数だけクリップをリピートすることができます。 [caption id="attachment_78173" align="alignnone" width="650"]option+Rで開くリピートのダイアログ。選択範囲をリピートするので、編集モードをGRIDモードにして、きっちり4小節分選択するのが大事 option+Rで開くリピートのダイアログ。選択範囲をリピートするので、編集モードをGRIDモードにして、きっちり4小節分選択するのが大事[/caption]    私の場合、曲の構成としてイントロ×8小節→バース×12小節+フック8小節を3回→アウトロという構成が多いのですが1曲辺り100小節前後になります。ですので、4小節ループを30回ほどリピートします。少し多いですが、要らない部分は後から削除します。 [caption id="attachment_78172" align="alignnone" width="650"]4小節のビートをリピートした結果。4小節×30=120小節なので少し長め 4小節のビートをリピートした結果。4小節×30=120小節なので少し長め[/caption]    これで曲全体のドラムの配置が、ひとまず終わりました。私の場合、後からパターンを変更したい場合や4小節おきにフィル・インを設ける場合、またMIDIからやり直すのではなく、オーディオ化したものの波形を切り取って、グリッドに沿って張っていきます。Pro Toolsのグリッド単位は、画面上部のグリッド項目でも変更できますが、option+controlに+/−キーで増減できます 。このショートカットも覚えておくと、マウスでの操作が減り、作業効率が上がります。 [caption id="attachment_78170" align="alignnone" width="646"]グリッド単位はoption+con
trolと+/−キーで増減が可能となっている。こちらはグリッド単位=4分音符 グリッド単位はoption+con
trolと+/−キーで増減が可能となっている。こちらはグリッド単位=4分音符[/caption]   [caption id="attachment_78169" align="alignnone" width="648"]グリッド単位=16分音符の状態。編集ウィンドウ上のグリッド・ガイドが変わっていく グリッド単位=16分音符の状態。編集ウィンドウ上のグリッド・ガイドが変わっていく[/caption]    いかがでしょうか。今回は、前回より多いショートカット・キーを数多く紹介しましたが、どれも作業効率をアップする上で大切なものです。もし知らないショートカットがありましたら、ぜひ覚えてみてください。しばらく使っていると、手が覚えてきますので非常に便利です。それでは、次回をお楽しみに!   サウンドハウスでAVID Pro Tools関連製品をチェックする *AVID Pro Toolsの詳細は→http://www.avid.com/ja  

MIDO

1990年生まれ。ミキシング・エンジニアとしての活動と並行して、TENZANやL-VOKAL、Zeebraのプロデュースでも注目を集める。以降も掌幻、CHICO CARLITO&焚幕、PKCZ(R)、EGOなどに、シンセを多用した迫力満点のビートを数多く提供している。 2019年3月号サウンド&レコーディング・マガジン2019年3月号より転載

専門知識ナシで参加できる『手作りの真空管アンプ』講座が5月に開催

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真空管アンプ・キットの製作から試聴を行う講座『手作りの真空管アンプ』が開催決定。真空管アンプの人気メーカー、トライオード代表取締役社長の山﨑順一氏が講師を務め、同社の技術者による指導が受けられる限定5名の講座となる。 日時は5月2日(木)、場所は東京・新宿住友ビル。 ハンダごてなどの道具は会場に用意されているので、専門的な知識や準備が無くとも、温かみある真空管サウンドが得られるアンプを自作可能。16万円相当の完成品アンプが11万円強(受講料+教材)で手に入ると考えると、キットを通常価格で購入するよりもオトクな計算となる。 自分で作る“世界に一つだけの「MY」真空管アンプ”……興味のある方は朝日カルチャーセンター 朝日JTB・交流文化塾のWebページをチェックしてほしい。 94f4182a-a0a9-52c4-005a-5c4936670b7dshikukan2 【『手作りの真空管アンプ』概要】 ◎日時:2019年 5月2日 1回 木曜日 10:00〜18:00 ◎場所:〒163-0210 東京都新宿区西新宿2-6-1新宿住友ビル10階(受付) ◎受講料:会員 一般 8,640円(入会金は5,400円。70歳以上は入会無料、証明書が必要です) ◎教材:105,840円(ご自宅への配送料を含みます) ※入会金・受講料・教材費等は消費税8%を含む金額です。 ★お申込み、キャンセルの受付は4月25日 11:00まで。以降はキット手配の都合上お受けできません。 ◎朝日カルチャーセンター 朝日JTB・交流文化塾 https://www.asahiculture.jp

DeMIX Pro「Panの概念で既存のソフトでできなかった分離が可能に」〜製品担当者インタビュー

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既存の2ミックスをマルチトラックに分離することを可能にした音声分離ソフト=AUDIOSOURCERE DeMIX Proをご存じだろうか。2ミックスからボーカルを抜き出すためのVocals、ドラムを抜き出すDrums、そしてパンニング位置を指定して任意部分を抜き出せるPanという3種類のセパレーション・タイプを用意し、特にPanではこれまで難しいとされていた楽器単位での分離が可能になっているという。昨年、InterBEE 2018に向けて来日した同社のリック・シルヴァ(Rick Silva)氏にインタビューした模様をお届けしよう。

長年研究してきたNNMFのアルゴリズムが 高精度なボーカル・セパレーションを実現

●まずはあなたの経歴を教えてください。 シルヴァ氏 もともとオーディオ・エンジニアリングの学校で先生をしていた関係で、前職も音に関するソフト・メーカーに務めていました。その会社をいったん退いて初心に戻り、現在のAUDIOSOURCEREに来ました。DeMIX Proのベータ版を試してみて非常に可能性を感じ、このソフトを広めていきたいと思ったのです。 ●DeMIXではソフトの内部にもかかわっているのですか? シルヴァ氏 もちろんです。私はコーディングなどはしてませんが、ユーザーがどのように使いたいかという点はアドバイスできますので、ベータ版を元にマルチトラックへの分離などを私が付け加えています。 ●このDeMIX Proにはどういったテクノロジーが使われているのですか? シルヴァ氏 こうしたソフトにはマシン・ラーニングを土台にしたものはたくさんあるのですが、DeMIXはノンネガティブ・マトリクス・ファクトライぜーション(Non-negative Matrix Factorization=NNMF)を用いています。CTOであるDr. Derry FitzgeraldがこのNNMFを18年間研究しており、そのアルゴリズムを最適化してボーカル・セパレーションに使用しています。そのオプティマイズされたNNMFににスペクトラル・エディティングを追加し、マルチトラック処理を組み合わたのがDeMIXなのです。 ●セパレーション処理はインターネットを通してAUDIOSOURCEREのサーバーで行われるそうですね? シルヴァ氏 その通りです。アルゴリズム自体はサーバーにあります。一度セパレーションしてしまえば、いちいちサーバー処理をせずともスペクトラル・エディティングが手持ちのパソコンで可能です。 ●サーバー処理はどのくらいかかるのですか? シルヴァ氏 ボーカルのセパレーションだと実時間ほど、ドラムのセパレーションとパンニング・セパレーションは実時間の1~2倍ほどの時間がかかります。例えば3分くらいの曲で、すべてを分解するとなると15~20分ほどかかる計算になります。もちろん曲全体ではなく、自分がセパレーションしたい部分だけを処理することも可能です。 ●セパレーションにはVocals/Drums/Panの3種類があるそうですが、それらは一気にセパレートされるのですか? シルヴァ氏 1つずつセパレーションしていきます。まず2ミックスからボーカルとバッキング・トラックを抜き出し、そのバッキング・トラックからドラムを抜き出す……といった具合でセパレーションします。 ●ピアノのような帯域の広いポリフォニック楽器も抜き出せるのですか? シルヴァ氏 そういったパートは、Panで解析していくといいでしょう。ただ、ピアノの鍵盤がいろんな位置にパンニングされているようなミックスだと奇麗に分離できないかもしれません。 [caption id="attachment_78261" align="alignnone" width="650"]▲DeMIX Proのスペクトラルエディティング画面 ▲DeMIX Proのスペクトラルエディティング画面[/caption] ●セパレート系ソフトはほかにありますが、その中でもDeMix Proの特長となる部分はどこですか? シルヴァ氏 ほかのセパレーション・ソフトだと、ユーザーが何を取り出すか指定できないものが多いです。しかし、DeMix Proは前述したように3つのセパレーション・タイプを使い分けて、“ボーカルだけを取り出す”といった自由度があります。特に、パンニングでの分離はDeMIX Proでしか現状ではできません。そしてセパレート・トラックは無制限です。もちろんセパレートしたオーディオの書き出しも可能ですよ。また、DeMIX ProはMac/Windowsで動作します。シンプルですが大事な部分ですよね。 ●DeMIX Proのユーザー・ターゲットはどの辺ですか? シルヴァ氏 DJからオーディオ・エンジニアまで多くの方に使ってもらいたいですね。 ●今後の計画を教えてください。オーディオの分離からオート・ミックスといった流れも想定していたりですのでしょうか? シルヴァ氏 いえ、オート・ミックスはIZOTOPE Neutronがありますから。私たちはまずオーディオ分離にフォーカスをしていきたいと思います。 ●最後に、日本のユーザーにメッセージを。 シルヴァ氏 DeMIX Proを手にしたら、きっとオーディオ・セパレーションのすごさに驚くことでしょう。Have fun! いろいろと興味深い話が聞けたDeMIX Pro、まずは使ってみるのが早道だろう。デモ版のインストーラーはSONICWIREのWebサイトで入手可能。また、用途によってはボーカル/ドラム分離に特化した簡易版のDeMIX Essentials、パンニングによる分離に特化したRePANが手に入りやすい価格なので、これらをセレクトするのもいいだろう。   [caption id="attachment_78262" align="alignnone" width="650"]▲ボーカル/ドラム分離に特化した簡易版のDeMix Essentials ▲ボーカル/ドラム分離に特化した簡易版のDeMIX Essentials[/caption] [caption id="attachment_78263" align="alignnone" width="505"]▲ステレオ素材から任意パン位置の分離/調整が可能なRePan ▲ステレオ素材から任意パン位置の分離/調整が可能なRePAN[/caption]  

「AURORA AUDIO/GTP2」製品レビュー:ジェフ・タンナー氏の設計による2chディスクリート・マイクプリ/DI

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往年のNEVE製品の設計者がデザイン 入力は10dB刻みで出力は連続可変

AURORA AUDIOの創業者、ジェフ・タンナー氏はもともとNEVEで製品の設計を行い、開発の中核を担っていた人です。入社は1971年。マイクプリ/EQの1073などに代表される“赤いインプット・ゲイン・ノブ”はタンナー氏の設計によるもので、音の心臓部であるMARINAIRのトランスも氏が草案設計し、製造依頼を出していたそうです。タンナー氏は1985年、SIEMENSがNEVEを買収したタイミングで会社を去り、その後は主にNEVE製品のメインテナンス業務に従事。NEVE製品のパーツ/回路設計を知り尽くした、生き字引とも言える存在なのです。 この背景を踏まえて、GTP2の仕様を見ていきましょう。箱から取り出した瞬間、筆者が感動したのは重量感です。“トランス入ってまっせ〜!”と言わんばかりのズッシリさで、天面の網の部分からはトランスがのぞき、見ているだけでうれしくなります。出だしから好調ですね。フロント・パネルには2つのチャンネルのコンポーネントが並び、構成は極めてシンプル。スイッチは48Vのファンタム電源と位相反転のみで、ハイパス・フィルターなどはありません。トレード・マークの赤いインプット・ゲイン・ノブは10dBステップ(オールドNEVEやAURORA AUDIO GTQ2は5dBステップ)。その右隣にはアウトプット・レベルのトリム・ノブがあり、連続可変式なので細かい調整が可能です。±0dBの位置(12時)でラッチされるのも大変気が利いています。それからフォーンのDIインプットと先述のスイッチ類を挟んで、アウトプットのレベルに反応して光る3つのLEDインジケーターがスタンバイ。−20dBu、0VU、CLIPがそろいます。実戦に役立つであろう絶妙な値で、使い勝手が良さそうです。   [caption id="attachment_78025" align="alignnone" width="650"]▲GTP2のリア・パネル。左から電源インレット(115〜230V)、各チャンネルのライン・アウト(アンバランス出力はフォーンで、バランス出力はXLR)やマイク・イン(XLR)がレイアウトされている ▲GTP2のリア・パネル。左から電源インレット(115〜230V)、各チャンネルのライン・アウト(アンバランス出力はフォーンで、バランス出力はXLR)やマイク・イン(XLR)がレイアウトされている[/caption]  

特筆すべきは伸びやかな高域 豊かな低域から“潤い”を感じる

実際のレコーディングで使ってみました。まずはSTEINWAYのグランド・ピアノの録音でチェック。オンマイクとして、ふたの中に入る手前50cmほどの場所にNEUMANN U87のペアを耳の高さくらいにして置き、ビンテージのマイクプリFOCUSRITE ISA 215と比べてみます。オフマイクは、リボン・マイクAUDIO-TECHNICA AT4080のペアをピアノから5mほど離した高所に設置し、1073シミュレートで知られるVINTECH AUDIO X73と比較。このセッティングでGTP2を一聴したところ、周波数レンジの広さと解像度の高さに耳を奪われました。ハイファイかつ質感をしっかりとらえているため、音楽的にも心地良いサウンドです。さらに言えば、高域は奇麗に伸びており、低域はゆったりとした感じ。比較した機種よりも輪郭がはっきりとした音で、それと同時に低域の豊かさから潤いのようなものも感じられ、総じて現代的な印象です。もともとオンマイクの支えとして使うつもりだったオフマイクが、GTP2の解像度の高さのおかげでオフ単体でも十分成立する音になりました。素晴らしいです。 続いて歌録りに使用。マイクはNEUMANN U67に統一し、新旧のマイクプリを織り交ぜて試してみたところ、高域の出方に特筆すべきものが見られました。真空管マイクプリやオールドNEVEなどとも違うシルキーで耳当たりの良い高域と音の近さは、GTP2ならではのものです。 次にDIインプットへエレキギターとエレキベースを接続。サウンドはマイクプリ部と同傾向で、高域の輪郭がはっきりとするのでギターにバッチリです。ただ、高域が伸びてサウンド全体がやや縦長な印象になる分、エレキベースについてはもう少し低域の広がりを聴かせたくなりました。とは言え録り音が素直なので、録音後の処理で補えそうです。 最後にライン・アンプとしてのサウンドにも触れておきましょう。筆者は、ミックスの最終段でビンテージの1073を使い、インプット・ゲインを上げ目にして質感を付けるという処理を時々やります。これと同じことをGTP2でやってみました。結果は、やはりマイクプリのときと同じく、ハイハットの辺りが自然に持ち上がって高域がクリアに。低域は厚みが出て、潤いのある感じになりました。音像を上下に広げたいとき、特に上の方を伸ばしたいときには有効な手段となりそうです。ちなみに、1073を通した音は乾いてパンチが出てくる感じ。低い帯域については、GTP2よりも上の部分である中低域寄りのところが強まる印象ですが、音全体の広がりを感じられます。レベルを突っ込んだときのひずみ具合は、ゲインが5dB刻みだともう少し良いところを探れそうでしたが、ビンテージ機のようにひずみで質感を付すというよりは、サラッと通してレンジ感をふんわり広げるEQ的な使い方で活用できそうです。 GTP2は、オールドNEVEの再現を狙ったものというよりは、当時の仕様を踏襲しつつ現代の音楽にもマッチする音を目指していると言えそうです。手入れの行き届いたビンテージ機の質感には素晴らしいものがありますが、今はそれだけで音を作っても面白くない時代になってきていると思います。目指すサウンドに応じて両者を使い分けることは、これからの音楽にとって有益でしょう。ビンテージ機には出せない潤い、そして高い解像度が得られるGTP2は、プロ・ユースでも宅録でも有用な、コスト・パフォーマンスに優れた一台です。   [caption id="attachment_78028" align="alignnone" width="650"]▲モノラル・モデルGTP1(オープン・プライス:市場予想価格160,000円前後)のフロント・パネル。構成はGTP2と同様で、チャンネルに10dBステップのインプット・ゲイン・ノブや連続可変式のアウトプット・レベル・ノブ、DIイン(フォーン)、48Vファンタム電源と位相反転のスイッチ、アウトプット・レベルを示す3種類のLEDインジケーターが並ぶ ▲モノラル・モデルGTP1(オープン・プライス:市場予想価格160,000円前後)のフロント・パネル。構成はGTP2と同様で、チャンネルに10dBステップのインプット・ゲイン・ノブや連続可変式のアウトプット・レベル・ノブ、DIイン(フォーン)、48Vファンタム電源と位相反転のスイッチ、アウトプット・レベルを示す3種類のLEDインジケーターが並ぶ[/caption] (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

「KORG/Nu I」製品レビュー:Nutubeを搭載したDSD対応のAD/DA&オーディオ・プリアンプ

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こだわりのアナログ回路を採用 アナログ・ソースのアーカイブに最適

Nu Iのフロント・パネルは、高級オーディオ・アンプのような出で立ちです。後述するNutubeの設定やUSB/アナログの切り替え、インプット・セレクト、大きなボリューム・ノブが並びます。リア・パネルには、ライン入出力をXLRとRCAピンで併装しており、ボリュームを通さないダイレクト・アウトも用意。フォノ入力には MC/MMカートリッジ切り替えスイッチまであります。電源ケーブルは着脱できるIECタイプ。USB端子と、ワード・クロック入出力もありますが、入出力の構成は一般的かつシンプルなオーディオ・アンプに近いと思います。 電源には、プロ機器や高級オーディオに使われている、トロイダル・トランスを採用。ヘッドフォン端子はXLR4ピンのバランス仕様のものも用意されており、アナログ回路へのこだわりが感じられます。 さて、KORGのWebサイトからAudioGate 4.5をダウンロードし、過去にMR-2000Sへ落としてミックスした音源データを再生してみました。10年近く前の音源もあるのですが、そのときのミックスの記憶がよみがえる、新鮮で豊かな品の良いDSDサウンドにあらためて感心。音の密度や情報量がひときわ豊かに感じられます。続いてCDフォーマットから24ビット/96kHzまでさまざまなフォーマットの音源をインポート。再生時にはAudioGateでフォーマットやサンプル・レートのアップ/ダウンが簡単に設定できるので、比較も容易です。 聴いているうちに、意外な驚きが。再生フォーマットを上げるだけで、音場やバランスの表現に余裕が出て、表現力の違いがはっきりと感じられます。特にDSDとPCMではかなり印象の差があり、ダイナミック・レンジの広いアコースティックの楽器、ピアノやシンバル系の余韻の長い音や長めのリバーブの消え際などはDSDが優位で、音の減衰が自然に感じられ、コンプやEQのかかり具合もよく分かりますね。逆にトータルでコンプが強めにかかった曲や、ビートの強い曲は、PCMの方が押し出し感が強く、迫力あるサウンドになります。 ちょっとワクワクしながらレコードの音も聴いてみます。AudioGateではアナログ入力したステレオ・ソースを録音可能。分割やトリムなどの簡単な編集もできますから、1曲ごとのファイル管理も可能です。もちろんカートリッジの特性によって大きく変わりますが、予想以上の良い音です。入力レベルの設定は、Nu I Control Panelという付属ソフトで行います。ちなみに、フォノ・イコライザーは、AudioGateの中にソフトウェアとして用意されています。   [caption id="attachment_78042" align="alignnone" width="650"]▲リア・パネル。左からグラウンド端子とフォノ入力L/R(RCAピン)、MM/MCカートリッジ切り替えスイッチ、ライン入力L/R(XLR×2、RCAピン×2)、ライン出力とUSB-DACダイレクト・アウト(各XLR×2、RCAピン×2)、DEVICE IDスイッチ、USB端子、ワード・クロック入出力とオン/オフ・スイッチ、オート・オフ ▲リア・パネル。左からグラウンド端子とフォノ入力L/R(RCAピン)、MM/MCカートリッジ切り替えスイッチ、ライン入力L/R(XLR×2、RCAピン×2)、ライン出力とUSB-DACダイレクト・アウト(各XLR×2、RCAピン×2)、DEVICE IDスイッチ、USB端子、ワード・クロック入出力とオン/オフ・スイッチ、オート・オフ[/caption]  

出力段のNutubeで明りょう度アップ S.O.N.I.C.でリマスター再生も可能

Nu Iの特徴の一つが、出力段にかかるNutubeでの色付けです。Nutubeは、底面積46×17mmという小型のデュアル三極管。従来の真空管と比べ2%以下の省電力で連続期待寿命3万時間という、とんでもないスペックです。真空管特有の豊かな倍音を得ることができ、特にボーカルやさまざまな楽器の音に絶妙な味わいを加えることができます。効果としてはサウンド全体の輪郭がはっきりしていき、3段階で少しずつ明りょう度が増す感じでしょうか。レコードを含めすべてのフォーマットの音源再生で楽しむことができます。 また、Nu IのControl Panelアプリケーションには、S.O.N.I.C.(Seigen Ono Natural Ideal Conversion)という機能が付属しています。その名の通り、サイデラ・マスタリングのオノ セイゲン氏が開発に携わったリマスタリング機能で、AudioGateはもとより、コンピューターからNu Iで再生するすべてのサウンドに使うことができ、リアルタイム変換でDSDクオリティに。そしてプリセットの選択とLow/Hi/CONSCIOUSノブで、サウンドの調整が行えます。ネット動画などの音質向上が簡単にできるのは良いですね。再生用補正機能ではありますが、これまでDSDと言えばデジタル領域での音質補正が難しかったところに、こうした音質補正機能が登場したのは画期的なことだと思います。 [caption id="attachment_78041" align="alignnone" width="300"]▲Nu I Control Panelで見たS.O.N.I.C.画面。ジャンルや楽器、目的などに合わせたプリセットが用意される ▲Nu I Control Panelで見たS.O.N.I.C.画面。ジャンルや楽器、目的などに合わせたプリセットが用意される[/caption] Nu Iは、オーディオ・プリアンプとしてはもちろん、レコードやオープン・リールなど“アナログ音源のアーカイブ用入力”としては、最上級のシステムでしょう。また、スタンドアローン駆動で高級オーディオ・アンプとしても使えます。一方、我々のような仕事をしている環境下では、DSD 11.2MHzやPCM 384kHzなどのマスター録再用I/Oとしての利用が可能。シンプルなモニター・コントローラーにも使え、各種フォーマットを一度に扱える多様なハイレゾ・ライブラリーの出口にもなります。さらに、今回は1台のみだったのでテストできませんでしたが、AudioGate Recording Studioという付属ソフトを使った最大4台/8chのDSD 11.2MHzマルチ録音も含め、多チャンネル・マスターの記録などにも使えそうだと、さまざまなアイディアが膨らみます。 欲を言えば、もう少しインプット/アウトプット数があるとありがたいのですが、作曲家やエンジニアなど、我々プロの環境でのモニター・コントロールを含めたマルチなライブラリー管理/プレーヤーとしての可能性があると感じました。純粋に音楽を楽しむ環境を、根本から考え直すターニング・ポイントになる一台になるかもしれませんね。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

「SONY/PCM-D10」製品レビュー:最高24ビット/192kHzで録音可能なPCMステレオ・レコーダー

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3段階で調節できる ステレオ・ペアの可動式マイク

まずはPCM-D10を箱から取り出してみた感想ですが、筐体は予想以上に大きく、外形寸法は80.2(W)×197.6(H)×37.4(D)mmとのこと。本体上部に搭載された可動式ステレオ・マイクにはゴールドのパーツが装飾されていて、高級感があります。外観が格好良いため、これだけで購買意欲をかき立てられました。可動式マイクは低域から高域まで非常にフラットな周波数特性を持っており、最高24ビット/192kHzでのハイレゾ録音が可能。また、XY/ステレオ/ワイド・ステレオ・ポジションの3段階で設定でき、さまざまな録音状況に対応することができます。 フロント・パネルの最上部には、L/Rのマイク入力レベルを−20/−12dB/Overで示す3つのランプを装備。ディスプレイ内の上部にはL/Rの入力レベル・メーターが表示され、本体右側にあるダイアルでL/Rのマイク入力レベルを個別に調節することができます。また、フロント・パネルの下半分にはスイッチやボタンが複数配置されていますが、ある程度のレコーダー使用経験がある方なら説明書を読まずとも直感的に操作することが可能でしょう。C1/2ボタンには、よく使用する機能を登録することができるので便利です。 本体底部には2系統の入力端子(XLR/フォーン・コンボ)を搭載し、外部マイクや音楽機材などを接続できます。さらにPCM-D10は、48Vファンタム電源供給が可能なのでコンデンサー・マイクにも対応。フロント・パネルの最下部には、入力切り替えスイッチや接続機器の出力レベルに合わせたマイク/ライン入力切り替えスイッチ、48Vファンタム電源オン/オフ・スイッチが配置されています。 [caption id="attachment_78063" align="alignnone" width="300"]◀本体底面。2系統の入力端子(XLR/フォーン・コンボ)を備えている ◀本体底面。2系統の入力端子(XLR/フォーン・コンボ)を備えている[/caption] PCM-D10の両サイドも見てみましょう。本体右側にはプラグイン・パワー対応のマイク/ライン入力(ステレオ・ミニ)や入力切り替えスイッチ、マイク入力レベル調整ダイアル、−20dBのマイク・アッテネーター・スイッチ、SDカード(別売り)を挿入するスロット、コンピューターへのファイル転送や外部電源供給の際に使用するUSB Type-C端子を装備。ちなみにPCM-D10は16GBの内蔵メモリーを搭載し、単三電池×4本で駆動するので、電源を入れてすぐに使うことができます。 [caption id="attachment_78066" align="alignnone" width="650"]▲本体右側。左からUSB Type-C端子、SD/SDHC/SDXCカード対応のスロット、−20dBのマイク・アッテネーター・スイッチ、L/Rのマイク入力レベル調整ダイアル、プラグイン・パワー対応のマイク/ライン入力(ステレオ・ミニ)と入力切り替えスイッチを装備している ▲本体右側。左からUSB Type-C端子、SD/SDHC/SDXCカード対応のスロット、−20dBのマイク・アッテネーター・スイッチ、L/Rのマイク入力レベル調整ダイアル、プラグイン・パワー対応のマイク/ライン入力(ステレオ・ミニ)と入力切り替えスイッチを装備している[/caption] 本体左側には、ライン出力(ステレオ・ミニ)やステレオ・ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン出力切り替えボタン、ディスプレイのバックライト・オン/オフ・ボタン、そのほか音量や電源スイッチなどが並んでいます。PCM-D10にはモニター・ソースをステレオ/L/Rと別々に切り替えられる機能があるので、あとで聴いたときに“Lchの設定だけおかしかった”というようなトラブルも防ぐことができるでしょう。 [caption id="attachment_78067" align="alignnone" width="650"]▲本体左側には、左からライン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン出力切り替えボタン、ディスプレイのバックライト・オン/オフ・ボタン、音量ボタン、電源スイッチ、ホールド・スイッチを搭載 ▲本体左側には、左からライン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン出力切り替えボタン、ディスプレイのバックライト・オン/オフ・ボタン、音量ボタン、電源スイッチ、ホールド・スイッチを搭載[/caption]  

SN比が良く解像度の高いサウンド Bluetooth接続でリモート操作が可能

本体の可動式マイクを使用し、バンドのライブを24ビット/192kHzでエア録音してみたのですが、そのサウンドはデュアルADコンバーターを搭載しているためかSN比が良く、非常にクリアで“素晴らしい”の一言。ドラム/ベース/ギター/ボーカルというバンド編成でしたが、低域から高域まで広いレンジ感で、ライブの空気をまさにそのまま収音できていたように思います。耳障りな高域のジャキジャキ感も全く無く、細かい音量の変化なども忠実に再現されていました。 3段階に調節可能な可動式マイクについては、XYポジションではセンター感が強くなるため、単体楽器を近距離で録音すると存在感のある音をキャプチャーできます。ステレオ・ポジションでは空間や空気感も収音できるので、ライブのエア録音など、オフマイクでの使用が向いているでしょう。ワイド・ステレオ・ボジションでは、マイクを外側に傾けることが可能なため、近距離での録音においてステージ上にある左右の楽器をL/Rに収めたい場合などに有効だと思います。 またPCM-D10にコンデンサー・マイクを接続してアコギを録ってみたところ、タイトで解像度の高いサウンドを得ることができました。低域の量感も十分あり、高域もナチュラルなサウンドです。またPCM-D10はBluetooth接続が可能なので、録音した音源をすぐにBluetooth対応のスピーカーなどで再生/確認することができます。ほかにもiOS/Android対応の無償アプリSONY REC Remoteと連携すれば、スマートフォンからPCM-D10を操作可能。個人的には、モノラル・レコーディングにも対応しているところがうれしかったです。 PCM-D10だけで、ライブやコンサート、ポッドキャストなどのさまざまな録音が手軽に、そして高音質で行えるでしょう。非常にコスト・パフォーマンスが優秀なので、プロ・ミュージシャンやPAエンジニアの方はもとより、一般の方にも使ってみてほしい製品です。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

【音響設備ファイルVol.43】専門学校ESPエンタテインメント福岡 Live Hall EMY

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学生の習得のため入門から最新までを用意

 学校法人イーエスピー学園が運営する専門学校ESPエンタテインメント福岡(以下、ESP福岡)は、音楽アーティスト科、声優芸能科、そして音楽芸能スタッフ科の3学科20コースを設けた、エンタメの総合学校だ。2018年に開校したばかりだが、東京・大阪の姉妹校では数多くのプロ・ミュージシャンやエンターテインメント従事者を輩出。そのノウハウを注ぎ込み、福岡から舞台上とバック・ステージの両方に人材を送り出そうとしている。  福岡市の市街地に新築された8階建校舎の2階には、キャパ300(スタンディング)ほどのホール、Live Hall EMYが設けられていた。村本英之校長はこう語る。  「東京・大阪も、ホールとレコーディング・スタジオを学校の核とするというコンセプトがありますので、ホールの設置は大前提。ステージに立つ側、それを支える側、両方の学生が在籍していますから、不可欠なんです」  天井高のあるEMYの常設機材は、コンソールのDIGICO SD7を核に、JBL PROFESSIONAL VXT V Seriesをメイン・スピーカーに据えた仕様。言うなれば、千人クラスの会場に匹敵する各社のフラッグシップ機材を、このサイズに凝縮したようなものだ。村本氏はこう続ける。  「コンソールは東京・大阪と同じものを導入しました。各校で情報共有ができるので、都合が良いという理由もありますね。そのほかはヒビノプロオーディオセールス Div. 福岡ブランチの西田さんにご相談しました」  機材のプランニングを担当したその西田将二氏が心掛けたのは、PAを学ぶ学生が卒業するまでに必要な技術と知識を習得できるようなシステムだという。西田氏はこう説明する。  「まず大阪校まで出向いて求められていることをリサーチし、村本先生と意見のすり合わせをしました。先生にご提案いただいたのは、最新のデジタル機材はもちろん、アナログのコンソールやケーブル、マルチボックスも用意して、初歩から習得できるようにしたい、という点でした」  聞けば初年度ということもあり、2019年に入った時点でちょうどPAコースのカリキュラムはアナログからデジタルに移行したところだという。アナログ・コンソールとしてはSOUNDCRAFT GB8、仮設PA用スピーカーにJBL PROFESSIONAL SRX Seriesを用意。SD7へ至るまでの段階としてスモール・フォーマットのデジタル・コンソールも、授業用として備えているそうだ。PAコース講師のエンジニア、矢野弥氏はこう語る。  「基本から最新まで、初歩からベテラン・エンジニアまでが使用できるホールと設備だと感じています。メインのSD7+VTX-V20の音は、良過ぎるくらいですね(笑)。学生が外でライブを見てきてどんな音だったかを報告してくれるのですが、このホールについては逆に言葉が出てこない。仮設の現場などと比べて、ストレスが無いからだと思います。学生が今後外に出て行っても、このホールの音が基準になってくれたらと思っています」  教務担当の松本章吾氏も、このホールの出音をこのように絶賛する。  「学校ができる前にオープンキャンパスを近くのライブ・ハウスで開催していました。それはそれで、“ライブ・ハウスらしい温かい音”というイメージがありましたが、このホールは洗練された音だと感じますね」   [caption id="attachment_78161" align="alignnone" width="650"]メイン・スピーカーはJBL PROFESSIONALのフラッグシップ・ラインアレイ・システムVTX V Seriesを採用。VTX-V20を片側に6基、サブウーファーのVTX-S25を片側に2基用意している。取材時は音楽アーティスト科ダンスパフォーマンスコースの授業が行われていたが、クリアな音質と引き締まった低域が印象的だった。照明はROBEのムービング・スポット・ライトをはじめMATSUMURAのLEDライトなどを導入 メイン・スピーカーはJBL PROFESSIONALのフラッグシップ・ラインアレイ・システムVTX V Seriesを採用。VTX-V20を片側に6基、サブウーファーのVTX-S25を片側に2基用意している。取材時は音楽アーティスト科ダンスパフォーマンスコースの授業が行われていたが、クリアな音質と引き締まった低域が印象的だった。照明はROBEのムービング・スポット・ライトをはじめMATSUMURAのLEDライトなどを導入[/caption]   [caption id="attachment_78159" align="alignnone" width="650"]フロア・モニターはメイン・スピーカーとの統一を図り、JBL PROFESSIONAL VTX-M20を導入。そのほか仮設PA用やサイド・モニターとしてSRX835 Passive+SRX818S Passive、STX812Mといった多くのJBL PROFESSIONALスピーカーが用意されている フロア・モニターはメイン・スピーカーとの統一を図り、JBL PROFESSIONAL VTX-M20を導入。そのほか仮設PA用やサイド・モニターとしてSRX835 Passive+SRX818S Passive、STX812Mといった多くのJBL PROFESSIONALスピーカーが用意されている[/caption]   [caption id="attachment_78157" align="alignnone" width="650"]メイン・コンソールはDIGICO SD7。最大253chプロセッシング、128chバスという大規模PAにも対応可能なフラッグシップ・モデルだ メイン・コンソールはDIGICO SD7。最大253chプロセッシング、128chバスという大規模PAにも対応可能なフラッグシップ・モデルだ[/caption]   [caption id="attachment_78160" align="alignnone" width="650"]左から、ESPエンタテインメント福岡 村本英之校長、教務部音楽芸能スタッフ科の松本章吾氏、同科PAコース講師の矢野弥氏、ヒビノプロオーディオセールスDiv. 福岡ブランチ所長の西田将二氏 左から、ESPエンタテインメント福岡 村本英之校長、教務部音楽芸能スタッフ科の松本章吾氏、同科PAコース講師の矢野弥氏、ヒビノプロオーディオセールスDiv. 福岡ブランチ所長の西田将二氏[/caption]    

配線や電源にもこだわった設備

 西田氏は、プランニングにあたって機材選定だけをしたわけではない。ハイエンドな機材が最良の音で鳴るよう、実に細かいところまで気を配ったそうだ。  「ESP福岡の母体となっているのは、ハイクオリティなギター・メーカーとして知られるESPですから、そのイメージに匹敵するような設備にしたいと考えました。サブウーファーのアンプだけパワーの大きなモデルにしたり、スピーカー・ケーブルも太めの高級なものを使っています。また、ケーブルにフェライト・コアを巻いてノイズを消すようにもしました。ハイエンドなESPギターのように、私も見えないところにこだわってみたいと。アンプのラッキングも、電源をグラウンドから浮かせてほかの部屋からのノイズも拾わないようにしています。ESP福岡はビルの設計からスタートしているので、毎月の定例会議には私も参加して、建築会社から意見を求められた際には提案をしたりしてきました。その甲斐もあって、このホールに来たオペレーターに“自分の知っているVTX V Seriesの音より良い”と言ってもらえました」  良い野菜を作るために、良い土壌を用意する……それと似たアプローチだろう。しかし、すべてに最上のものを導入したわけではない。西田氏はこう続ける。  「ホール常設機材はハイクラスのものを入れていても、一般の授業で使うケーブルは標準的ななものを選びました。学生の皆さんが世に出たときに、“最上のものでないと仕事ができない”と勘違いしてしまうといけませんから。次の世代につなげていくという意味でも、とてもやりがいのある仕事でしたね」  昨年末にはZepp Fukuokaが再オープンするなど、九州のエンタテインメント・シーンは福岡を中心に一層の盛り上がりを見せている。そんな中で、ESP福岡が人材を育成していくことは、非常に意義深いことだ。その中枢として、このホールが位置付けられている。西田氏は最後にこう付け加えた。  「ヒビノとしては、ここでセミナーを開いて、ESP福岡とプロPAの業界のパイプを築けたらと考えています。この業界に入ろうとしている学生の夢を形にできたらいいですね。具体的な話はこれから相談していきますが、学生の皆さんがPAの世界で羽ばたいていただいた方が、ESP福岡だけでなく私たちにとっても良いことだと思います。遠回りなことですが、それを避けていったら発展も無いでしょうから」 [caption id="attachment_78158" align="alignnone" width="650"]SD7の横にはラックも用意。アナログ・コンソールでの実習もあるため、LEXICON PCM96やTC ELECTRONIC D・Twoといったアウトボードも用意されている。その下のCDプレーヤーTASCAM SS-CDR250N×2台の下には、SD7のI/Oが収められている SD7の横にはラックも用意。アナログ・コンソールでの実習もあるため、LEXICON PCM96やTC ELECTRONIC D・Twoといったアウトボードも用意されている。その下のCDプレーヤーTASCAM SS-CDR250N×2台の下には、SD7のI/Oが収められている[/caption]   [caption id="attachment_78153" align="alignnone" width="650"]ステージ袖に置かれたSOUNDCRAFTのアナログ・コンソールGB8 32chモデル。8グループ、11×4マトリクス、8AUX、4ミュート・グループという仕様で、モニター卓としてはもちろんメインにも使える ステージ袖に置かれたSOUNDCRAFTのアナログ・コンソールGB8 32chモデル。8グループ、11×4マトリクス、8AUX、4ミュート・グループという仕様で、モニター卓としてはもちろんメインにも使える[/caption]   [caption id="attachment_78154" align="alignnone" width="650"]GB8の下にはAMCRON(現CROWN)のパワー・アンプ、IT4×3500HD(VTX-M20用)×2台とXTI6002×7台がスタンバイ。その右には配電盤を備え、「市民会館などに匹敵する仕様」と西田氏 GB8の下にはAMCRON(現CROWN)のパワー・アンプ、IT4×3500HD(VTX-M20用)×2台とXTI6002×7台がスタンバイ。その右には配電盤を備え、「市民会館などに匹敵する仕様」と西田氏[/caption]   [caption id="attachment_78152" align="alignnone" width="650"]メインのアンプ・ラック。AMCRON(現CROWN) IT4×3500HD×6台をメイン・モジュールに、IT12000HD×2台をサブウーファーに使用している。そのほかプロセッサーのLAKE LM44、AES/EBUディストリビューターのMUTEC MC-2×2台のほか、イーサーネット・スイッチが用意されているのがいかにも現代のPAシステムらしい メインのアンプ・ラック。AMCRON(現CROWN) IT4×3500HD×6台をメイン・モジュールに、IT12000HD×2台をサブウーファーに使用している。そのほかプロセッサーのLAKE LM44、AES/EBUディストリビューターのMUTEC MC-2×2台のほか、イーサーネット・スイッチが用意されているのがいかにも現代のPAシステムらしい[/caption]   [caption id="attachment_78155" align="alignnone" width="650"]ESP福岡では照明専門のコースも設置。メインの照明コンソールとして直感的な操作性で定評があるというAVOLITES Arenaを採用している ESP福岡では照明専門のコースも設置。メインの照明コンソールとして直感的な操作性で定評があるというAVOLITES Arenaを採用している[/caption]   [caption id="attachment_78156" align="alignnone" width="650"]照明卓としては、MA LIGHTING GrandMA3も導入している 照明卓としては、MA LIGHTING GrandMA3も導入している[/caption]     ■関連リンク 専門学校ESPエンタテインメント福岡 https://www.esp.ac.jp/fukuoka/ ■導入製品情報JBL PROFESSIONAL VTX V SeriesJBL PROFESSIONAL VTX M SeriesJBL PROFESSIONAL SRX800 Passive SeriesCROWN I-Tech 4x3500HDCROWN I-Tech HD SeriesCROWN XTi2 SeriesSOUNDCRAFT GB8LEXICON PRO PCM96DIGICO SD7MUTEC MC-2AVOLITES Arena   ■関連記事 【音響設備ファイルVol.29】ビルボードライブ東京 http://rittor-music.jp/sound/billboardlivetokyo_jblvtx 【音響設備ファイル Vol.19】Zepp大阪ベイサイド http://rittor-music.jp/sound/zepp_osaka_bayside 「JBL PROFESSIONAL SRX835P Powered & SRX828SP Powered」製品レビュー:AMCRON製のパワー・アンプを内蔵したアクティブ・スピーカー http://rittor-music.jp/sound/productreview/2016/10/59188   ※サウンド&レコーディング・マガジン2019年4月号より転載  

「TC ELECTRONIC/DVR250-DT」製品レビュー:EMT 250を再現したデジタル・リバーブ・プラグイン&コントローラー

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実機のデザインを踏襲したコントローラー プラグイン単体での使用も可能

今回紹介するDVR250-DTは、名機と呼ばれたデジタル・リバーブEMT 250を現代によみがえらせようと作られました。DVR250-DTはプラグインと、そのプラグインを操作するハードウェア・コントローラーという構成で、コントローラーの方は、見た目もまさにEMT 250を意識しています。昔使っていたこともあり、懐かしいと思わせるルックスです。接続はUSBで本体はmicroBタイプ。1mのUSBケーブルも付属しています。電源はUSBバス・パワーに対応。プラグイン・フォーマットはAAX/AU/VSTで、標準的なDAWには問題無く対応します。 プラグインを立ち上げると、限られた機能のみ操作できるようになっています。リバーブ・タイムなど細かい部分はコントローラーを使用するということです。左下の鎖マークが緑のときはコントローラーが接続されている状態。では外で使う場合もコントローラーを持ち運ばなければならないのかという疑問が出てきます。コントローラーがある種のプラグインのキーになっていますが、接続していなくても、最後に操作していた状態で60日間設定を保持し、コントローラーが無くても使えるようです。また、コントローラー無しでもプリセットの変更などはできます。 プラグイン側では、入出力レベル、エフェクト音にかかるフィルターのHi Cut、クラシック・リバーブ・ユニットのEQをエミュレートするQScale、入力にトランス・エミュレーションをかけるInput Trans、低域をすっきりさせるTrim Lo Frq、少しだけエフェクトが荒くなるLo Resなどの操作ができます。Lever Statusは、コントローラーのレバーがそれぞれどの機能に対応しているかを表示。Mixは原音とエフェクトのバランスを調整できます。DVR250-DTは、リバーブ以外にもディレイ、フェイザー、コーラス、エコー、スペースなどのエフェクトとしても使え、それぞれのタイプ別にバランス調整が可能です。また、セッティングは100個保存でき、著名なプロデューサーのシグネチャー・プリセットも備えています。実際にプロがどう使っているか分かるのもうれしいですね。 肝心のコントローラーですが、数値を気にせず音を聴きながら操作できるというハードならではの感覚は久しぶりでした。“これで良し!”と決めた値が後から見るといつもの感じとは違ったりして、新たな発見にもなります。 レバーは、EMT 250のようにスロット上をスライドしていくのではなく、位置が固定されており、上下にカチカチと動かして操作します。レバーの役割はエフェクトによって変わるのですが、リバーブの場合は左からディケイ/ローディケイ/ハイディケイ/プリディレイの操作が可能。SETボタンを押すと、Mix、モジュレーション、アウトプット・セレクト(EMT 250の実機は4ch仕様で、このスイッチでフロントL/RとリアL/Rを切り替える)として機能します。エフェクトの切り替えも、コントローラーのボタン一つで行えます。 [caption id="attachment_78076" align="alignnone" width="300"]▲EMT 250を模した、コントローラーのレバー ▲EMT 250を模した、コントローラーのレバー[/caption]  

滑らかでクリアなサウンド コーラスなどのエフェクトも搭載

では、肝心の音を聴いてみましょう。まず、ボーカルで立ち上げてBallad Vocalプリセットを試してみました。非常に滑らかな音で、TC ELECTRONICらしいクリアなリバーブ音を聴かせてくれます。TC ELECTRONICの最高峰ハードウェアSystem 6000のリバーブを聴いたときと同じ印象を持ちました。ほかのプリセットも試しましたが、決してもっさりボワボワしない印象です。 Trim Lo Frqを入れると、主張せずさりげないリバーブも簡単に作れます。EMT 250よりクリアな感じですが、トランス入力の切り替えだったり、よりアナログ感も味わえるのはうれしいところ。TC ELECTRONICのリバーブは、2ミックスになった音を入力してもあまり破たんさせずに奇麗で明りょうなリバーブ音を聴かせてくれる特徴があると筆者は思っています。DVR250-DTでもその印象は受け継がれており、いろいろな用途で使えるリバーブだと感じます。 普通のリバーブでよくあるホールやルームなどタイプ別での選択がDVR250-DTにはありません。ルームっぽくしたければリバーブ・タイムを短く、ホールっぽくしたければ長くするといった使い方になります。デジタル・リバーブではありますが、妙にデジタルっぽくもなく、クリアながら温かみもあるので、ロング・リバーブや短いリバーブ・タイムでも、エフェクト音が粒っぽくって破たんしてしまうことが無いところも印象が良かったです。どちらかといえばなじむ系統のリバーブだと思います。DVR250-DTはリバーブとして注目されていますが、十分に使えるコーラスをかけることも可能です。リバーブだけでないところもお得感がありますね。 DAWの画面上でコツコツやることが当たり前のご時世ですが、このようなハードでパチパチやるのも、若い方に味わってほしいです。滑らかでなじむリバーブが欲しい人は特に試してみるとよいでしょう。バラード系の曲で使えるリバーブは意外と少ないですからね。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

ACCUSONUS「数学ではなく“人間の脳でどう感じるか”で解析」~創業者インタビュー

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ギリシャとアメリカに拠点を置くプラグイン/ソフトウェア・メーカー、ACCUSONUS。2ミックスのドラムを各パーツへと分離するRegroover、ドラムのマルチトラック同士の“カブり”を抑制するDrumatom、そして各種ノイズの除去に便利なEraシリーズといったオーディオ・リペア・ツールを意欲的にリリースしている。InterBEE 2018で来日したAlex Tsilfidisにインタビューする機会を得た。

複雑なアルゴリズムをプラグインに落とし込む その作業に1年費やしました

●ACCUSONUSはいつから始めたのですか? Alex 2014年に立ち上げて、最初の2年間は土台作りとして共同創業者のElias Kokkinisと2人で開発作業をしていました。現在は25名まで増えました。 ●Alexさんは技術者としてどこかで働いていたのですか? Alex ACCUSONUSを始める前は大学でPhD(博士号)を取得するために、音に関する研究を続けていました。その間、ヨーロピアン・リサーチャー・プロジェクトにかかわって、その後、デンマークにある補聴器の会社で少し働いていました。私は若いころは作曲者としても仕事をしていましたよ。 ●個人的にどんな音楽が好きなのですか? Alex エキスペリメンタル・エレクトロニカですね。エイフェックス・ツインや池田亮司が好きです。 ●ご自身でも音楽は作っているのですか? Alex 今はもう作っていませんが、作曲をしていたころはピアノを弾いていました。 ●大学では具体的にどんな音の研究をしていたのですか? Alex 音響心理学です。研究の中でさまざまなアルゴリズムを生み出し、それらがACCUSONUS製品のベースになっています。もちろんアルゴリズムは非常に複雑なので、それらをユーザー・レベルのシンプルなツールに落とし込むことに時間をかけ、プラグイン/ソフトを開発しています。 ●RegrooverとDrumatonはドラム向けのソフト/プラグインですが、あなた自身がドラム・サウンドを扱う際に困った体験が出発点になっているのでしょうか? Alex 実は共同創立者のEliasがドラマーなんです。彼は世界で初めて“ドラムのカブり”に関する論文を書いた人物なんですよ。重要なのは、オーディオ信号を解析する際、数学的に処理するのではなく、人間の脳でどう検知しているかということです。私のアルゴリズムは人間の脳がどう音をとらえているかをシミュレートしているのです。オーディオ・ファイルの中に入っている無数の情報を、音楽的に意味のあるリズムなのかどうかを検知して解析しないと意味が無いのです。音を聴くのは人間なので、単に数学的な計算をしただけでは良い結果は得られないのです。それを感知するAIが動いていると考えてもらって差し支えありません。 ●そうなるとCPU負荷も高くなっていきそうですね。 Alex そうなります。RegrooverはDAW上であまり重くならないようにするために、プラグインの中身をオプティマイズしてCPU負荷を抑えるように設計しています。その作業に1年間費やしましたね。一方、Drumatonはマルチチャンネルに対応しなければならないのでアルゴリズムが重く、CPU負荷が高いためプラグインではなくスタンドアローンのソフトにしました。 ●RegrooverとDrumatonに入っているアルゴリズムは同じなのでしょうか? Alex 異なるものです。すべて特許は取得済みです。 [caption id="attachment_78285" align="alignnone" width="650"]▲2ミックスのドラムを各パーツへと分離するRegroover。Pro版とEssential版がラインナップされている ▲2ミックスのドラムを各パーツへと分離するRegroover。Pro版とEssential版がラインナップされている[/caption] [caption id="attachment_78286" align="alignnone" width="650"]▲ドラムのマルチトラック同士の“カブり”を抑制するDrumatom ▲ドラムのマルチトラック同士の“カブり”を抑制するDrumatom[/caption]  

残響成分だけを取り除くのは難しい作業です しかし音響心理学を応用してそれを可能にしました

●一方、Eraシリーズはユーザー・フレンドリーでポップなUIですね。 Alex Eraシリーズはオーディオ・リペアの仕事を素早く仕上げることにフォーカスしています。最初はライト・ユーザー向けに作ったのですが、いざリリースしてみると映画やテレビなどに関係するプロフェッショナルなユーザーたちが支持してくれるようになりました。彼らは常に締め切りに追われているので、素早く処理ができるというのはメリットだったようです。 ●リバーブ成分をコントロールするEra Reverb Removerなど興味深いツールがラインナップされています。 Alex Reverb RemoverはまさにPhDを取得する際のテーマだったんです。なので最も得意とする分野でした(笑)。部屋に響いている声の成分は、大本となる声と非常に似ているので、その残響だけ取り除くのは非常に難しいことです。ですが、私は音響心理学を通じて“人間が脳で感じている残響成分”だけを解析して抜き出すことに成功したのです。 ●ACCUSONUSで最も売れている製品は? Alex Regrooverが一番有名ですが、セールス的に現在伸びているのがEraシリーズです。ユーザーの多くはバンドル・セットですべてのプラグインを併用しているようですが、Eraシリーズの中でも強いていうならばEra Noise removerが人気があります。また、新たにEra De-Cliperという製品も作りました。 ●最後に、ACCUSONUSとして今後目指していることは? Alex 私たちの製品はすべて数学や物理学とは異なり、“人間の脳でどう感じるか”が元になっているのが特徴です。今までできなかったことをテクノロジーで可能にするということにフォーカスすることで、“サウンド・メイキング・ライフを変えたい”と思っています。プロフェッショナル/アマチュアを問わず音作りをサポートしたい、つまり音楽の民主化を目指しているのです。 [caption id="attachment_78287" align="alignnone" width="650"]▲オーディオ・リペアのEraシリーズ。左から残響成分をコントロールするEra Reverb Remover、ハムやヒスなどのバックグラウンド・ノイズを低減/除去するEra Noise remover、クリップしてしまった音声を補修するEra De-Cliper。Era De-Cliperはユーザー・フィードバックで改良されるベータ版のため特別価格でのリリースとなっている(2019年2月現在) ▲オーディオ・リペアのEraシリーズ。左から残響成分をコントロールするEra Reverb Remover、ハムやヒスなどのバックグラウンド・ノイズを低減/除去するEra Noise remover、クリップしてしまった音声を補修するEra De-Cliper。Era De-Cliperはユーザー・フィードバックで改良されるベータ版のため特別価格でのリリースとなっている(2019年2月現在)[/caption] https://youtu.be/fObdLxxLLdU https://youtu.be/epd4BHRGido https://youtu.be/rsrZhrqeorU

FOCAL Shapeシリーズが打ち出す 新感覚のニアフィールド・モニター

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20以上の特許技術を保有するフランスのスピーカー・ブランド=FOCALが、2017年に発表したニアフィールド・モニターのShapeシリーズ。バスレフの代わりにパッシブ・ラジエーターを両サイドに搭載し、独自のツィーターや亜麻繊維を採用したコーン・ウーファーを装備するなど、その斬新なアイディアは一部のスピーカー・ファンの関心を集めた。2018年には同シリーズのフラッグシップ・モデルとなる2.5ウェイ・パワード・モニター、Shape Twinが登場。ウーファーを2つ搭載することで、従来から定評あるサウンドにさらなる磨きをかけている。ここではさまざまな角度から、その実力を明らかにしていきたい。   Developer Interview

開発者に聞くShapeシリーズの魅力

開発者Benjamin PARES-DSC_4596 フランスで設計/製造されているというニアフィールド・モニターのFOCAL Shapeシリーズ。ここではまず、Shapeシリーズの開発責任者=ベンジャミン・ペアーズ氏(写真)にメール・インタビューを行い、話を伺った。 —————————————————————————————————————   幅広い周波数特性と一切妥協の無い音質Shapeシリーズを開発するきっかけは何だったのですか? ペアーズ Shapeシリーズ・プロジェクトを立ち上げた理由は大きく分けて2つあります。1つ目は、ひずみを軽減するチューンド・マス・ダンパー・サラウンドやMシェイプ・インバーテッド・ドーム・ツィーターなどの独自技術と、亜麻繊維であるフラックス素材を活用できるモデルの開発が可能になったこと。2つ目は、ホーム・スタジオ向け2ウェイ・アクティブ・モニター=Alphaシリーズの上に位置するラインナップをFOCALは必要としていたことが挙げられます。

Shapeシリーズのコンセプトは?

ペアーズ 小規模ルーム用のニアフィールド・モニターとして、幅広い周波数特性と一切妥協の無い音質を持ち併せたスピーカーです。さまざまな技術を組み込んだことによって、開発には約4年もの歳月を費やしました。

独自のMシェイプ・インバーテッド・ドーム・ツィーターについて教えてください。

ペアーズ このツィーターの開発が、今回最も困難だったのではないでしょうか。素材はアルミニウムとマグネシウムの合金で、M型のドーム形状と相まって高域の繊細な表現力や広いスイート・スポットの実現、ひずみの軽減に役立っています。また長時間のリスニングでも耳が疲れないように気を配りました。

ウーファー部分には、フラックス・サンドイッチ・コーンが採用されていますね。

ペアーズ 亜麻繊維をグラスファイバーで挟んだこの複合素材は、優れた内部ダンピング特性と素早いレスポンス、わん曲剛性に優れており、ウーファーに求められる重要なファクターを完ぺきに近い形で実現してくれました。また、亜麻繊維はフランス国内で生産された高品質のものを使用しています。

 

設置環境に関係無く高解像度の低域を再現

Shapeシリーズにおいて最も特徴的な、側面のパッシブ・ラジエーターについて教えてください。

ペアーズ パッシブ・ラジエーターは時として芯がなく、“柔らか過ぎるサウンド”と評されることもあります。またダイナミクスに欠ける低周波を生み出し、場合によっては揺らぎを引き起こす原因となることもありますが、FOCALは15年にわたって研究を重ねてきました。結果として、私たちはダブル・サスペンションを用いたピストン運動による、柔軟で軽量なパッシブ・ラジエーターをShapeシリーズで実現することができたのです。これはスピーカーの背後や左右にスペースを確保できない設置環境でも、高い解像度を保った低域を再現可能にし、キャビネットの振動を抑制することにもつながりました。    

FOCAL Shapeシリーズ・ラインナップ

Shapeシリーズは全4種類。ペアーズ氏いわく、「10〜12㎡程度のスタジオにはShape 40/50が最適。ローエンドが重要なダンス・ミュージックなどにはShape 65、またはShape Twinがよいでしょう。Shape Twinはシリーズの中でもローミッドの表現力に優れています」とアドバイスしてくれた   [caption id="attachment_78371" align="alignnone" width="332"]▲Shape 4045,370円(1台) ▲Shape 40 45,370円(1台)[/caption]     [caption id="attachment_78370" align="alignnone" width="383"]Shape 5055,370円(1台) ▲Shape 50 55,370円(1台)[/caption]     [caption id="attachment_78368" align="alignnone" width="399"]Shape 6573,889円(1台) ▲Shape 65 73,889円(1台)[/caption]     [caption id="attachment_78372" align="alignnone" width="394"]Shape Twin92,407円(1台) ▲Shape Twin 92,407円(1台)[/caption]     [caption id="attachment_78369" align="alignnone" width="422"]▲Shape Twinのリア・パネル。XLRとRCAピンの入力端子やハイパス・フィルター、3バンドEQを備えている ▲Shape Twinのリア・パネル。XLRとRCAピンの入力端子やハイパス・フィルター、3バンドEQを備えている[/caption]   User Report①

松隈ケンタ

ラージ・モニターでないと鳴らないような超低域が そこまでボリュームを上げなくても聴こえるんです

IMG_6391 撮影:松山隆佳 【Profile】バンドBuzz72+を経て、音楽制作集団SCRAMBLESの代表に。Jポップにエモーショナルなロック・サウンドを取り入れる手腕に定評があり、BiSHやBiSなどのサウンド・プロデュースを行う —————————————————————————————————————

アレンジやミックスにおいて 素早い判断を可能にする心強いスピーカー

もともと僕はFOCALのモニター・スピーカーが大好きで、自宅のスタジオにはコンパクトな2ウェイ・アクティブ・タイプのCMS50、東京のスタジオには3ウェイ・アクティブ・タイプのTwin6 Beを置いているんです。今回、福岡にスタジオを作るタイミングで新しいモニターを探していた矢先、ちょうどShape Twinが出たという情報が入ってきたんですよ。写真を見るとウーファーが縦に2つ搭載されたモデルで……実は、いつもお世話になっているマスタリング・スタジオでも同じようなデザインのスピーカーが設置してあり、こういったタイプのモニターが自分の耳には合っているのではないかと感じていました。そのような理由から、今回はShape Twinを導入してみようと思ったんです。 実際スタジオに届くとイメージより若干大きい印象でしたが、あらためてほかのブランドにはないスタイリッシュなデザインが格好良いなと思いました。現在は壁から20〜30cmの距離に設置し、底面に備えられた4つのスパイクを使って角度を調整しています。驚いたのは、こんなに壁の近くに置いているのにほとんど音に影響が出ていないこと。設置環境の影響を受けにくいスピーカーは、小規模スタジオでも気軽に配置できるのでありがたいです。そのためか、音が耳へダイレクトに飛んでくるような感じで聴こえるんですよ。特に生楽器のダイナミクスをとてもリアルに表現してくれます。中にはコンプがかかって聴こえるスピーカーも多いのですが、Shape Twinはナチュラルに聴こえ、音像が見えやすいのがいいですね。音が無駄にシャリシャリしないと言いますか、高域が強過ぎないところもすごく気に入ってます。 超低域に関しては、ラージ・モニターで鳴らさないと聴こえないような帯域が、そこまでボリュームを上げなくても出ているんです。側面にある2つのパッシブ・ラジエーターのおかげだと思うんですが、ミックスでローカットする際、超低域がよく見えるのでスムーズに処理ができます。 個人的には楽曲の芯でもあるローミッドの鳴りをすごく気にするタイプなのですが、Shape Twinはその帯域の解像度も高いんです。ミックスしているときにローミッドが薄くなったら、すぐに気が付くんですよ。そういった意味でも、アレンジではもちろんミックスにおいても素早い判断を可能にする心強いモニター・スピーカーだと言えますね! IMG_6358sub     User Report②

保本真吾(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)

これ以上にコストとサウンドの両方に優れたスピーカーは まだ自分の中では見つかっていない

190205_0008 撮影:北村勇祐 【Profile】香川県出身。サウンド・プロデューサーとして、SEKAI NO OWARIやゆず、新津由衣、三上ちさこ、SILENT SIREN、シナリオアート、家入レオなどのアーティストを手掛けている —————————————————————————————————————

高域は出るんだけどギラギラしておらず 中低域は明りょうでパンチがある

以前、サンレコ2018年6月号の特集「本気のハイグレード・スピーカー徹底試聴!」で、いろいろなスピーカーを聴き比べして、自宅スタジオのevergreenで使っている2ウェイ・パワード・モニターFOCAL Solo 6 Be Redがあらためて良いなと思ったんです。その後、ここフューチャー・ラボ SETAGAYAに導入するスピーカーを探していたとき、楽器店に行ったらShape Twinが置いてあったので聴いてみたところ、もうその瞬間に“これだ!”と思ったんです。FOCAL Trio6 Beも候補だったんですが、このスタジオには少し大きいサイズだったのでShape Twinに決めました。 このスタジオでは、普段、楽器や歌のレコーディングやミックスで使用していますが、Shape Twinが持つ独特のサウンド・カラーは僕の好みにぴったりで、とても気持ちよく作業を進められるんです。全体的に派手過ぎず、かといって全く味気無いわけでもない。高域は出るんだけどギラギラしてないし、中低域は明りょうでパンチがあるのでテンションも上がるんです。さらに周波数特性やステレオ・イメージが幅広いので非常に定位感も分かりやすい。明らかに楽器の一体感や奥行きがよく見えます。 低域に関して言えば、芯はあるけど硬くなく弾力のあるサウンド。海外の作品にあるような低域感なので僕好みでもあるし、音作りもしやすいです。ミックスするときは外部のエンジニアがここに来て作業して、チェックで人が集まることもあるんですが、とにかく皆さんの反応がすごく良くて。中にはここで聴いて購入したいと言った人もいますね。あと、パッシブ・ラジエーターが両側に付いているから超低域が結構出ますが、これは個人の好みによるところでしょう。リア・パネルにはハイパス・フィルターや3バンドEQを搭載しており、そこでコントロールすることも可能なのですが、僕はなるべくスピーカーそのままの音を大切にしたいのでフラットにしています。超低域の調整はインシュレーターを使うのが効果的でしたね。 そしてShape Twinはコスト・パフォーマンスにも優れていると思います。ほかのハイエンド・モデルもいろいろと聴き比べたんですが、それらと全く劣らないクオリティです。このサウンドでこの価格は本当に素晴らしい。正直、現時点でこれ以上にコストとサウンドのパフォーマンスが優れたスピーカーは、自分の中では見つかっていないです。 190205_0039sub   サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より転載 [amazonjs asin="B07CBHXHHG" locale="JP" title="サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号"]

「WAVES/Flow Motion FM Synth」製品レビュー:FM方式と減算方式のシンセシスを組み合わせたソフト・シンセ

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モジュレーションをPM/FMから選択 パンニングもオシレーター内で調整可能

Flow Motion FM Synthは、FMシンセシスの考え方を発展させた音作りを基本にしています。これはオシレーターをオシレーターでモジュレートすることによって新たに生まれる倍音を音作りに応用した方式です。Flow Motion FM Synthにはそれを減算させるフィルターと組み合わせることで、より音楽的な音作りができるようになっています。基本は4オシレーターにフィルターと4つのモジュレーターを自由自在に組み合わせるマトリクス構造になっており、それに16ステップのノート・シーケンサーとアルペジエーター、さらに16ステップのスナップ・ショット・シーケンサーを搭載しています。 Flow Motion FM Synthは大きく分けて、4つのオシレーターの設定とコントロールを行うFLOW画面(メイン画面)、そのオシレーターを加工するパラメーターが集まったMOTION画面の2ページ構成です。FLOW画面ですが、ご覧の通りオシレーターは丸いグラフィックで表示されており、“OSC●”と書かれている白い部分をクリックすることでオン/オフできるようになっています。FMシンセシスですのでほかのオシレーターの音を使ってモジュレーションをかけ合うことになるわけですが、その変調をデフォルトの位相変調(PM)か周波数変調(FM)にするかを選択可能です。PMはオリジナルのピッチを損なわずに倍音が変化しますが、FMではリング・モジュレーターのような変化になります。 内蔵の波形は、サイン/三角/ノコギリ/矩形/ホワイト・ノイズの5種類。鍵盤のアイコンが光っているときはMIDIノートに準じたピッチが出力されますが、消えているときはピッチがHz表示に変わり任意の周波数に固定されます。RATIOはほかのオシレーターに対するオクターブの係数で、1/4〜36の間で設定可能。モジュレーション時の倍音にかかわる数値だと思ってください。お互いのオシレーターは線でつながっており、その先にあるつまみを回すことでモジュレーション量が調整できます。 また線の途中にある小さな丸をクリックするとその量の変化にモジュレーション・ソースを割り当てることが可能です。さらにアウトプットは常にステレオになっていて、オシレーターのパンニングもオシレーター内で決められるようになっています。  

目まぐるしく音色が変わる SNAPSHOT SEQUENCERを搭載

MOTION画面に移ります。フィルターはローパス/ハイパス/バンドパス/ノッチの4タイプでカーブも−12 dB/octと−24dB/octが選べます。フィルター自体のキレがアナログな感じで非常に好印象。フィルターには専用のADSRタイプのエンベロープがあり、さらに4バンドのグラフィックEQが付いていて、これが音作りの幅を広げてくれます。 [caption id="attachment_78086" align="alignnone" width="601"]▲オシレーターを加工するパラメーターが集まったMOTION画面。FXセクションはひずみ系3種とモジュレーション系3種、それにテンポ同期可能なディレイとシンセにマッチしたリバーブも付いている ▲オシレーターを加工するパラメーターが集まったMOTION画面。FXセクションはひずみ系3種とモジュレーション系3種、それにテンポ同期可能なディレイとシンセにマッチしたリバーブも付いている[/caption] モジュレーション系は基本4ソースで、各ソースごとにADSRタイプのエンベロープかLFOのどちらかが選択できます。LFOにした場合はモジュレーションの立ち上がりを遅くする機能があるのでディレイ・ビブラートなども簡単に作ることができます。 再びFLOW画面に戻りますが、NOTE SEQUENCERはDAWのホスト側から送られてくるノートを無視するものではなく、演奏情報はあくまでMIDIで、このシーケンサーはそのノートに対して半音単位でノートの上げ下げを行うものです。シーケンスのテンポをホストと同期させない場合は当然ランダムにピッチを変更することになり、かなり予測不可能なフレーズが発生します。 Flow Motion FM Synthの最大の売りでもあるのがウィンドウ下部に見えるSNAPSHOT SEQUENCERでしょう。これはフレーズを作るためのシーケンサーではなく、ステップごとに音色を切り替えるためのシーケンサーです。音色のパラメーターを丸ごとスナップショットとして記憶させ、それを最大16種類まで保持できます。サイコロのマークを選ぶとランダムにスナップショットが選ばれ、シーケンスが走り始めると目まぐるしく音色が切り替わっていきます。全く新しい感覚を呼び起こし、未知のグルーブを生み出してくれます。 Flow Motion FM Synthの音はデジタルとアナログのハイブリッド的なニュアンスがあり、アナログ好きの筆者にもとても魅力的に感じました。プリセットだけでも1,000近く入っていますのでそれだけでも十分に楽しめると思います。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

「VIENNA SYMPHONIC LIBRARY/Steinway D」製品レビュー:多数のマイク・ポジションで収録したSTEINWAY D-274ピアノ音源

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ハンブルク製のD-274をサンプリング 1鍵盤あたり約4,000サンプルを収録

Steinway Dの元となっているのは、1853年にアメリカ・ニューヨークで設立された世界的ピアノ・メーカー、STEIN WAYのフラッグシップ・モデル“D-274”。STEINWAYはニューヨーク工場とハンブルク工場の2つの工場でD-274を製造しているが、Steinway Dはハンブルク製のD-274をサンプリングした音源となっている。 驚くべきはその膨大なライブラリー容量だ。1鍵盤あたり約4,000、1つのマイク・ポジションあたり約20,000ものサンプルを収録。その総容量は、5種類のマイク・ポジションが使用できるスタンダード・ライブラリーのみで117.9GB、さらに6種類のマイク・ポジションが使えるようになるエクステンデッド・ライブラリー(別売り)を含めると266.2GBにもなる。VSLの専用スタジオであるSynchron Stage Viennaで、同社が独自に開発したソレノイド(自動演奏機構)に基づいた精密な動作制御システム“ロボットの指”が演奏した音をレコーディングしたという。 Steinway Dは、同梱されている専用エンジンのSynchron Pianos(Mac/Windows対応、AAX/AU/VSTに準拠)で読み込んで使用する。画面上部中央に並ぶ“Play”“Mix”“Edit”で設定画面を切り替えることが可能。Play画面ではリバーブやマスター・ボリューム、ダイナミック・レンジの調整のほか、“Body”“Sympathetic”というパラメーターで共鳴音を調整できる。Mix画面は各マイク・ポジションの音量バランスを調整できるミキサーとなっており、選択したプリセットに必要なマイク・ポジションのサンプルがフェーダーに割り当てられる。Edit画面では、ダイナミック・レンジやMIDIの感度、余韻、そのほか演奏上の詳細な設定が可能だ。 [caption id="attachment_78099" align="alignnone" width="650"]▲Mix画面では複数のマイク・ポジションのミックス・バランスを調整できる。クローズやミッドのほか、サラウンド・マイク(エクステンデッド・ライブラリーに収録)も使用可能。あらかじめミックスされたRoom Mixを使えば、マシン・パワーを節約することもできる ▲Mix画面では複数のマイク・ポジションのミックス・バランスを調整できる。クローズやミッドのほか、サラウンド・マイク(エクステンデッド・ライブラリーに収録)も使用可能。あらかじめミックスされたRoom Mixを使えば、マシン・パワーを節約することもできる[/caption] 画面下部に並ぶConcert/Intimate/Player/Pop/Ambience/Mightyは音色のプリセット。狙う音楽ジャンルやリスニング・ポジションに応じて、サウンドの設定やミックス・バランスを手早く直感的に変えることができる。  

柔らかなルーム・アンビエンスを含み キラキラした倍音をしっかりと再現

マイク・ポジションを“Room Mix”、音色プリセットは“Concert”を選択して試奏してみた。近年のヨーロッパのソロ・ピアノ作品で聴けるようなサウンドで、どちらかといえば少し明るめでドライな音色。木造のステージを思わせる柔らかなルーム・アンビエンスがミックスされており、ステージ上でピアノの音を聴いているような距離感がある。また、弾いた瞬間から減衰音に至るまで、キラキラした倍音を含んだSTEINWAY特有の音がしっかり再現されている。ロング・トーンやスタッカートなど、奏法に応じて違う減衰音のサンプルが割り当てられているほか、ハーフ・ペダリングやリペダリングなど、ペダリングに応じたサウンドの違いも忠実に再生された。ぜひリバーブを切り、ドライな音で確かめてほしいポイントだ。Mix画面のミキサーを見てみると、CondenserとMid 1がクローズ・マイクとして、Room Mixがルーム・アンビエンス・マイクとしての役割を果たしているのが分かる。このRoom Mixは、さまざまなマイク・ポジションがあらかじめミックスされており、マシン・パワーを節約することも可能だ。 次はマイク・ポジションを“Decca Tree Multi Mic”にして、音色プリセットは“Concert”を読み込んでみた。デッカ・ツリーのMain L/R、センターのMain Cがアンビエンス・マイクとしてフェーダーに割り当てられ、バランスを調整すると残響感や距離感が変化。ピアノ・ソロのほか、オーケストラや室内楽とのアンサンブルなど、さまざまな音像を想定して音を作り出すことができそうだ。エクステンデッド・ライブラリーに含まれるサラウンド・マイクを駆使すれば、5.1chでホール空間の臨場感を再現することも可能。映画のサウンドトラックなど、サラウンド音響で客席を包むという音楽的な演出も試してみたくなる。 Steinway Dのサンプリング元となったD-274は、クラシックのみならず、ロックやジャズなど、さまざまなジャンルのミュージシャンに愛され、“良い楽器の音色は、ジャンルを問わず万能に響く”ということを証明してきた。Steinway Dを使えば、その名器の表現力を限りなく忠実に再現でき、実際のスタジオ・レコーディングのようにマイク・ポジションなどの調整で狙ったサウンドに仕上げていくことができる。映画やドラマなどのサウンドトラックから、バンド・サウンド、ボーカル曲のピアノ・パートなど、さまざまなシーンで幅広く活躍させてみたい音源だ。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

「PRESONUS Atom」製品レビュー:Studio Oneとの高度な連携を実現するUSBパッド・コントローラー

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16個の堅牢なパッドを装備 ノブやボタンでDAWやプラグインを操作

Atomは16個のパッドと多数のボタンやノブを備えたUSBパッド・コントローラーです。本体の大きさは202(W)×20.75(H)×195(D)mm、重量は450g。大き過ぎず小さ過ぎず、ちょうどいいサイズ感になっています。机の上でたたいていて動いてしまうこともなく、安定感も高いですね。 パッドの感触は、僕が今まで触ってきたパッド・コントローラーと比べると若干硬め。しかし、余裕もあって長時間たたいていても手が痛くなるようなことはありません。打ち込みではかなりの回数をたたくことになるので、パッド部分のタフさはとても重要ですが、Atomのパッドは堅牢そうです。 早速、Studio Oneを立ち上げてAtomを接続してみます。USBケーブルでつないでみると、トップ・パネル中央上部のインジケーターが青く光って、早くもセットアップが完了しました。煩わしい設定が一切無くすぐに使えるのは、面倒くさがりな僕にとって非常にうれしいポイントです。また、Atomは電源ケーブルが必要無く、USBバス・パワーで動作します。余計なケーブルを少なくできるというのは、どんなクリエイターにとっても重要でしょう。 接続時に光るインジケーターは、使用するDAWがStudio Oneのときは青色、そのほかのDAWのときは緑色に光ります。Studio Oneとは完全統合し、ブラウザーの表示/非表示、インストゥルメントやプリセットの選択のほか、ソングの再生や停止などのトランスポート操作はもちろん、ループの設定などもAtomから行うことが可能です。実際に作業してみたところ、ループ範囲へのズーム・イン/アウトまで操作できるのは非常に便利でした。 本体上部にある4つのノブには、立ち上げたプラグインなどに合わせて特定のパラメーターが自動でマッピングされますが、操作したいパラメーターをアサインすることも可能です。もちろん、ノブを動かしてオートメーションを描くこともできます。マウスだと動かしづらいパラメーターがある場合、このノブはとても便利ですね。   [caption id="attachment_78109" align="alignnone" width="650"]▲リア・パネルはUSB(Type B)接続端子のみととてもシンプル ▲リア・パネルはUSB(Type B)接続端子のみととてもシンプル[/caption]

パッドは精密にベロシティを検知可能 音階を演奏できるキーボード・モードも用意

では、Studio One上で実際に使ってみましょう。Studio One付属インストゥルメント、Impact XTを立ち上げてみます。Impact XTのパッドに割り振られているカラーとリンクし、Atomのパッドが同じ色に光りました。実際にたたいて録音してみると、精密なベロシティ検知に驚かされます。パッドのベロシティ・カーブは3種類用意されており、細かく設定ができるので、好みに合わせてカスタマイズも可能です。 次に、僕がよく使用している生ドラム系の音源を立ち上げてみました。僕の使っているMIDIキーボードよりもベロシティの感度が良いので、かなりリアルに演奏&録音できます。繊細に録音されている音源のサンプルをしっかりトリガーしてくれて、“あれ、この音源はこんなに音が良かったっけ?”と感じてしまうほどでした。ノート・リピートという機能では、パッドを長押しするだけでロールを簡単に打ち込むことが可能。ビート・メイクには必要不可欠ですね。音価は1/4〜1/32まで選択できます。 ドラム音源に適したドラム・モードだけでなく、音階を演奏できるキーボード・モードも備わっています。1オクターブ分の演奏ができ、オクターブの移動も可能なので、簡単なフレーズの打ち込みならAtomでもできるでしょう。 そのほか、パッドはMIDIの打ち込みだけでなく、さまざまな機能の操作にも使います。例えば、本体左上の“SONG”という枠内の“Setup”ボタンを押して“ソング設定モード”をアクティブにすると、14番のパッドをたたいてテンポの検出が可能です。 最近では、自分のサンプル・フォルダーやSpliceのブラウザーから、サンプルを直接トラックにペタペタと張ってリズムを作ったり、ループを組んだりするクリエイターが多いでしょう。しかし、こうしてサンプラーやソフト音源を実際にたたいて鳴らすだけで、グルーブに大きな差が出てきます。ループ素材と違って無駄な音が省けるので、使用するサウンドもしっかり精査できる感じがしました。 Atomは見た目がかっこいいので、スタジオ内だけでなく人前でパフォーマンスするときにも重宝する、とても素敵なアイテムです。僕も、アーティストや作家たちが集まるコライティング・キャンプなどにAtomを持っていきたいと思っています。ぜひ、みなさんも試してみてください。 [caption id="attachment_78112" align="alignnone" width="650"]▲AtomにはStudio One 4 Artist(Mac/Windows対応)が付属している。ワンショット・サンプルやループも多く収録されているので、すぐに楽曲制作をスタートすることが可能だ ▲AtomにはStudio One 4 Artist(Mac/Windows対応)が付属している。ワンショット・サンプルやループも多く収録されているので、すぐに楽曲制作をスタートすることが可能だ[/caption]   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

「QSC CP12」製品レビュー:12インチ径ウーファーを搭載するDSP内蔵のパワード・スピーカー

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3系統の入力端子を装備 プリセットを6種類備える

“使える”と思った最大のポイントは、コニカル・ホーンの角度が75°であること。未知の音場では水平と垂直の角度の違いにとらわれずに、狙いたい方向にスピーカーを向けるだけで済ませたいときがあるのだ。筆者の私感だが、定指向性ではないため周波数帯域が上がるにつれて角度は狭くなるが、物理の法則通り(!?)で良いのではと感じるときが多々ある。 ではスペックを見ていこう。1.4インチ径のツィーターと12インチ径のウーファーを装備。パワー・アンプ部は高域200W、低域800WのクラスD設計だ。最大音圧レベルが126dBとなっているため、実際に運用する際は110dBくらいまでだと思われるが、この大きさならそれだけあれば十分だ。過入力になった際にかかるリミッターは、作動しているのがバレにくいかかり具合になっていて、LEDの点滅がリミッターのリリースにしっかり追従してくれる。 6種類のプリセットを切り替えられる、ボイス・コントロール機能を実装。デフォルト、ダンス、フロア・モニター、スピーチの4種類に加え、デフォルトとダンスには、サブウーファー使用時のためのプリセットが用意されている。これらを切り替えるつまみの背が低いのは好感が持てる。なぜなら、つまみは一番外傷を受けやすい部分だからだ。 入力端子はライン(XLR/フォーン・コンボ)、マイク/ライン(XLR/フォーン・コンボ)に加え、ステレオAUX(ステレオ・ミニ)を装備。マイク/ラインにはブースト・スイッチ(+25dB)が備えられており、こちらをオンにしていると、ボイス・コントロールをダンスにしていてもマイクはスピーチ・モードになるという実用的な仕様になっている。ダンスのレッスンでの使用を想像してもらえると分かりやすいだろうか。出力端子にはミックス・アウト(XLR)がスタンバイ。個人的にファンタム電源やBluetooth接続が無いのは好ましい。リアには斜傾がありフロア・モニターとしても使えるほか、別売りの専用ヨークを用いることでウォール・マウントにも対応している。 [caption id="attachment_78124" align="alignnone" width="300"]▲リア・パネル。入力端子にライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)とマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)に加え、ステレオ AUX(ミニ・ジャック)を備える。マイク/ライン・インには、ゲインを上げるMIC BOOSTボタン(+25dB)がスタンバイ。出力端子はミックス・アウト(XLR)を搭載する ▲リア・パネル。入力端子にライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)とマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)に加え、ステレオ AUX(ミニ・ジャック)を備える。マイク/ライン・インには、ゲインを上げるMIC BOOSTボタン(+25dB)がスタンバイ。出力端子はミックス・アウト(XLR)を搭載する[/caption]  

小規模の会場で有効な音響特性 モニターとしても使いやすい作り

結論から言うと、比較的低価格ながらも使い方をしっかり考えればプロの現場でも使用できる製品で気に入った。QSCのスピーカーらしいメリハリのある質感が受け継がれているのは好印象だ。今回の会場は美しい響きの教会だったため、PA音と会場の響きが自然に混ざるように工夫。本機を客席の1/4を占める壁ぎわをフォローするのに使用したのだが、本機のそばにいる人から遠くにいる人までをカバーできた。 サウンドは50Hz周辺が豊かに出ていて、高域は16kHz辺りまでしっかりと伸びている印象。ボイス・コントロールをデフォルト・モードで使用したのだが、150Hzと500Hz辺りに4dBほどのディップを持っていた。これは小さいスペースでは有効な音響特性であろう。 ほかのボイス・コントロールもテスト。ダンスは昨今の楽曲向きのいわゆるドンシャリ・サウンドなのだが、小音量時のラウドネス・スイッチとしても使用できると思った。スピーチは低域がロール・オフされていて、中高域をややブースト。アメリカのメーカーだけあって、アメリカ英語にマッチする質感だ。フロア・モニターは低域にロール・オフし、中高域が少し抑えられている。 筐体の背が低いため、フロア・モニターとしても使用しやすい。転がしたときの角度が魔法の55°になっていて、扱いやすということも評価ポイントとして挙げられる。メッシュ・ガードには踏まれてもダメージが目立ちにくい凹状が採用されていて、現場で使用することに対しての気遣いを感じる。ステレオで聴いたときに感じたのは、非常に定位が分かりやすく、はっきりとしたサウンドだということだ。 ただパワード・タイプは電源の引き回しが必要なため、配置を変えることが多い現場では不便かもしれない。現在は電気用品安全法によって禁止されているため不可能だが、昔あった電源線を内蔵したライン・ケーブルがあれば合わせて使いたいと思った。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「USBケーブル」

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第1回「USBケーブルR-AU1-PL」

ACOUSTIC REVIVE代表 石黒謙、氏の技術解説

USBケーブルは利便性を追求するが故に、1本のケーブルの中に電源ラインと信号ラインが混在しています。このため、電源ラインと信号ラインそれぞれから発生する輻射(ふくしゃ)ノイズによって干渉が起こり、デジタル伝送自体が著しく劣化してしまっています。 ACOUSTIC REVIVEのUSBケーブル、R-AU1は電源ラインと信号ライン完全に分けた特許構造のUSBケーブルで、電源ラインと信号ラインの干渉を防ぎ、デジタル・データの劣化が起こりません。また鍛造(たんぞう)製法で作られるPC-Triple C単線導体、比誘電率に優れ伝送スピードを向上させるテフロン絶縁、静電気の発生を防ぐ天然シルク緩衝材、音色的な癖を発生させることなく外来ノイズを強力に遮断する銅箔シールドなど、贅を尽くした素材とケーブル構造で滑らかかつエネルギッシュな音色を実現します。 <Price> R-AU1-PL(通常仕様):18,000円(全長1m) R-AU1-SP(シリーズ製品/A端子2個仕様):22,000円(全長1m) ※長さの特注可能。R-AU1-PL/ R-AU1-SP共に0.5mあたり5,000円  

Cross Review

Artist 砂原良徳 1 <Profile>電気グルーヴのメンバーを経て、ソロとして電子音楽を追求しつつ、METAFIVEでも活動。近年はマスタリング・エンジニアとして多数の作品を手掛ける。

音の圧が上がるとともに “本来の音色”が見えてくる

僕はデジタル・ミキサーのYAMAHA 01V96IをコンピューターにUSB接続し、オーディオI/Oとして使っているため、普段使用している一般的なUSBケーブルをR-AU1-PLに替えてチェックしました。使ったソースは、自らの楽曲のプロジェクト・ファイルやオーディオ・ファイル。後者については、iTunesや波形編集ソフトなど、いろいろなプレイヤーで再生してみました。 試す前は“差し替えたところでそんなに変わらないだろう”と思っていたのですが、いざチェックしてみると全然違った。スピーカーを揺らす音の力が強くなった感じで、音の“圧”が上がったような印象を受けたんです。またこういうハイエンドなケーブルを使うと、大抵は2ミックス全体の周波数レンジが広がるように感じるのですが、R-AU1-PLの場合は一つ一つの音のレンジが広がるような印象。それに伴い、分離も良くなったと思います。本当に、普段使っているケーブルとは全然違いますね。ブラインド・テストをやっても、全然違うことが分かるはずです。 あと、かなり印象的だったのが、自分ではツルツルした質感だと思っていた音色が、R-AU1-PLに替えた途端、実はザラついていたのだと分かったこと! 恐らく解像度が劇的に向上したので、本来の音が見えてきたのだと思います。普段のケーブルに、いかにあいまいな部分が多かったのかを実感しました。そのほかエコーの減衰の仕方などもよく分かるようになったので、音色作りなど細部を詰める作業に向いていると感じます。   PA Engineer 小松“K.M.D”久明 2 <Profile>Oasis所属のPAエンジニア。大黒摩季やLUNA SEA、河村隆一、INORAN、石野真子、DIAURAなどさまざまなアーティストの音響を手掛けてきた。

音量が大きくなる印象で 輪郭や定位が明確に

APPLE MacBook AirにオーディオI/OをUSB接続し、音楽ファイルを再生しつつヘッドフォンでサウンド・チェックしました。比較対象はオーディオI/Oの付属USBケーブルです。ファースト・インプレッションとしては、音量が上がった感じがしました。バス・ドラムの輪郭がはっきりとし、ベースとのグルーブ感が気持ち良くなったのです。各楽器の定位もはっきりとしていて、ストリングスの奥行き感までうまく表現されています。とにかく聴いていて疲れませんし、楽しい気持ちになりますね。とても良いケーブルだと思います。 これまでデジタル・ケーブルの音質比較はあまり行ってきませんでしたが、今回、可能性を感じました。例えばアイドルのコンサートにおいて音源出しが多くなった昨今、いかに“良い音”で音出しするかは重要ですし、スピーカー・チューニングにおいても正確な再生ができるUSBケーブルは必要だと思います。そうした点で、R-AU1-PLは現場でも有用なのではないでしょうか。   Producing Engineer SUI 3 <Profile>トラック・メイクからボーカルのディレクション、ミックスまでを手掛ける作家/プロデューシング・エンジニア。近年は劇伴やCM音楽などにも携わる。

中高域の粒が奇麗に出て 解像度が上がる印象

今回は、オーディオI/OとコンピューターをつなぐUSBケーブルとしてR-AU1-PLをチェック。これまで使用していたオーディオI/Oの付属ケーブルから差し替えてみて、まずは音像全体が少しだけ中高域寄りにシフトする印象を受けました。しかしその代償として、中低域を犠牲にしているというわけではないので、落ち着いた明確な出音と言えます。中高域は、聴覚が音の定位や奥行きを把握する帯域です。そこの粒が奇麗に出そろったことで、解像度が上がったように感じます。 音楽制作においてR-AU1-PLを使用するメリットは、ボーカルやギターなどの録音の際、録り音が明りょうになるという点。楽曲は複数の音が重なったものなので、一つ一つの音の変化は微細でも、最終的な音像の印象は大きく変わってくるでしょう。ミキシングやマスタリングのときは、明りょうかつ落ち着いたモニター音を聴くことになるため、仕上がるファイルは、元気で腰のすわった(中低域の充実した)音像になりやすいかと思います。   <製品概要> R-AU1-PL    

ACOUSTIC REVIVE クロス・レビュー「ヘッドフォン・ケーブル」

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第2回「ヘッドフォン・ケーブル」

ACOUSTIC REVIVE代表 石黒謙、氏の技術解説

ACOUSTIC REVIVEのヘッドフォン・ケーブルは、世界初のノイズ除去機能付きヘッドフォン・ケーブルになります。日立金属が開発したノイズ除去素材“ファインメットビーズ”の搭載により、ヘッドフォンへ混入するノイズをほぼ100%除去することが可能です。 鍛造(たんぞう)製法によって信号が流れる方向へ連続した結晶構造の単線導体“PC-TripleC”や、比誘電率に優れたテフロン絶縁、各社のヘッドフォン用に特化させた完全非磁性体構造のロジウム・メッキ・プラグなどで圧倒的な導通特性を実現し、ヘッドフォンに付属するケーブルやほかの単体製品のヘッドフォン・ケーブルでは到達できない次元へとご愛用のヘッドフォンのクオリティを昇華させます。 <Price> RHC-2.5AK-TripleC-FM(AKG Studioシリーズなどに対応):24,800円 RHC-2.5UL-TripleC-FM(ULTRASONE Prolineシリーズなどに対応):28,000円 RHC-2.5SH-TripleC-FM(SHURE SRH940などに対応):28,000円 RHC-2.5SH-S-TripleC-FM(SHURE SRH1840に対応):55,000円 RHC-2.5SH-B-TripleC-FM(SHURE SRH1840に対応):88,000円 RHC-2.5HS-S-TripleC-FM(SENNHEISER HD650などに対応/フォーン仕様):55,000円 RHC-2.5HS-B-TripleC-FM(SENNHEISER HD650などに対応/XLRバランス仕様):88,000円 RHC-2.5HE-S-TripleC-FM(SENNHEISER HD800に対応/フォーン仕様):68,000円 RHC-2.5HE-B-TripleC-FM(SENNHEISER HD800に対応/XLRバランス仕様):98,000円 ※長さはいずれも2.5m。長さの特注も可能で、延長は50cmあたり15,000円、1mあたり20,000円。2.5m以下の特注は上記の標準品と同価格  

Cross Review

Engineer/Sound Producer 寺田康彦 4 <Profile>アルファレコードなどを経てシンクシンクインテグラルを設立。エンジニアとしてはYMOやPINK、スピッツ、矢野顕子、DECO*27など多くを手掛けてきた。

あるものをそのまま再現し 忠実に伝達する印象

マイク・ケーブルは随分いろいろな製品を聴き比べましたが、ハイ上がりだったりロー感の変化するものが多く、個性を出そうとするあまりマイクやプリアンプの特性を見えづらくするものがあったかと思います。なので、結局はナチュラルなのがベストだと考えていました。今回はヘッドフォン・ケーブルということで、少し別の見地から考える必要がありますが、派手に聴こえたりしてもミックスの出来上がりに反映されないわけだし、デメリットの可能性もあるわけです。 私の密閉型ヘッドフォンSHURE SRH1540は少し中高域が出てくる印象ですが、普段は慣れてミックスをしています。ACOUSTIC REVIVE RHC-2.5SH-S-TripleC-FMに感じたことは、基本的に素直で、どこかの帯域が見えやすくなるとかではなく落ち着いた音場。“あるものをそのまま再現しているのかな”という印象です。しいて言えば、低域がほんの少し増したかなという感じ。バランスの悪いものは悪く、ダイナミクスも素直に表れます。とにかく信号を忠実に伝達するケーブルだろうと感じました。     DJ/Producer Masayoshi Iimori 5 <Profile>DJ/プロデューサー。TREKKIE TRAXよりデビューし、スクリレックス、ディプロ、メジャー・レイザー、DJスネイクら世界のプロデューサーからサポートを受ける。

40〜50Hz帯を扱う僕にとって ありがたい存在です

RHC-2.5AK-TripleC-FMをオープン型ヘッドフォンのAKG K702で使ってみました。付属ケーブルから替えてみて最初に感じたのは、音のバランスがより聴きやすくなっていること、そして低域が豊かになっていることです。AKGのヘッドフォンはエイジングの必要がないくらい耳に優しい音なのですが、付属ケーブルではいかにもモニター・ヘッドフォンという感じの音で、少し高域が強い気がしていました。 しかしRHC-2.5AK-TripleC-FMでより聴きやすく、きめ細かいバランスになるように感じられます。また低音や倍音が奇麗に見えることで、僕のような40〜50Hz帯の超低域を扱うプロデューサーにとっては自宅でのヘッドフォン作業がしやすく、ありがたいです。 また、このケーブルは“単線”を採用しているので、通常のヘッドフォン・ケーブルより太く、重量感のある作りです。それに合わせてプラグ部分のコーティングも分厚く、ヘッドフォン側には金属パーツがついており曲がり過ぎることが無く、断線に強いというところも高ポイントです。     Engineer 中村文俊 中村さん <Profile>レコーディング/ミックス・エンジニア。スガ シカオ、大黒摩季らの作品に携わる。ライブDVDのサウンド・ミックスやゲーム用サウンドのデザインなども行う。

ケーブルで味付けされる感じがせず 作った音をきちんと反映してくれる

ヘッドフォンのリケーブルは何度かやっていますが、味付けされる傾向で、エンジニアの感覚では正直使いづらいものが多かったように思います。 今回ACOUSTIC REVIVEのヘッドフォン・ケーブルを使い、その印象が払拭されました。音の傾向はモニター的で、ヘッドフォン本来のキャラクターを保ちつつ、周波数特性をなだらかにしてワンランク上の音にしてくれる感じ。高域は奇麗に伸びていつつも作られた感じがせず、低域も全体的に引き締まり、いずれの帯域でも定位がとらえやすくなりました。音場の広さ(左右感)や奥行き感、音一つ一つの近い(大きい)/遠い(小さい)という違いもはっきり分かるようになります。 そして、こちらが実際に作っている音をきちんと反映してくれるのがうれしい。例えば、サビの部分では曲全体が盛り上がることで、歌を前に出しているにもかかわらず埋もれて聴こえてしまうことがありましたが、このケーブルを使うとそれが無いのです。正直、もう元のケーブルには戻れないと感じました。またジャンル的にはオールラウンドで、どんなスタイルの楽曲でも演奏や歌の繊細さが分かり、今まで気付かなかったミスタッチにも耳が行くように。ロックのスネアの皮やギターのひずみの感じもよく再現され、ノイズ・チェックなども容易です。ケーブルはやや硬めで、取り回しには注意が必要ですが、“今のヘッドフォンは気に入っているけど、もうちょっとこうなればな……”という悩みを解決してくれるでしょう。高い機種への買い替えは、音の傾向が変わって使いづらくなったりしますからね 貸し出しサービスもあるので、実際に試してみるとよいと思います! <製品概要> ACOUSTIC REVIVEヘッドフォン・ケーブル     (本稿はサウンド&レコーディング・マガジン2019年4月号からの転載となります)

MIDOが使う「Pro Tools」第3回

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打ち込みからミックスまでをシームレスに行う制作術

 こんにちは、MIDOです。AVID Pro Toolsでのビート・メイク解説も第3回となりました。今回も、ちょっとしたテクニックを織り交ぜながら解説しますので使えるネタがあればぜひ、参考にしていただければうれしいです。前回、ドラムをオーディオ化するところまで取り上げましたので、今回は上ネタの入力〜ミックスについて解説します。  

レイヤーされたシンセ音色を 別トラックに分解しておく

 今回は、よく使っているソフト・シンセのSPECTRASONICS Omnisphere 2を使った方法で解説します。私の普段使用しているトラック・テンプレートのセッション・ファイルには、既にOmnisphere 2がインサートされたインストゥルメント・トラックが用意されていますので、それをレコーディング待機状態にします。ちなみにPro Toolsの再生とレコーディングのモードは、両方ともループにしています。  ドラムが入力された部分を4小節選択し、再生。必要に応じて再生/停止をして、鍵盤を押さえながら音色を選んでいきます。音色選びは、あまりこだわりすぎないようにしています。少しでも気に入ったサウンドが見つかったら、深追いせずにそれを使用します。ライブラリー量が膨大なので、悩んでしまって最終的に良い結果が得られないことが、経験上多かったためです。  今回は鍵盤を押さえているだけで気に入ったループが流れるアルペジオ系音色を見つけたので、それを使用します。入力やクオンタイズについては第1回で解説したので、ここでは省略します。  Omnisphereでは基本的にレイヤーAとレイヤーBの2つの音が同時に鳴っています。個別の音量を調整しやすくするため、MIDIのクオンタイズまでの作業が終わったらOmnisphereがインサートされたトラックを複製します。間違えないように、上のトラックをA、下のトラックをBとします。 [caption id="attachment_78681" align="alignnone" width="650"]SPECTRASONICS Omnisphere 2。トラックごと複製し、音色を構成するレイヤーA/B(画面中央)をそれぞれ単独のインストゥルメント・トラックに分けることで、音量の微調整などをPro Toolsのフェーダーで行えるようにする SPECTRASONICS Omnisphere 2。トラックごと複製し、音色を構成するレイヤーA/B(画面中央)をそれぞれ単独のインストゥルメント・トラックに分けることで、音量の微調整などをPro Toolsのフェーダーで行えるようにする[/caption]    上のトラックのOmnisphereを開いてレイヤーの画面を表示し、Bをミュート(クリック)します。逆に下のトラックのOmnisphereを開いて、Aをミュートし、Bの音色だけ使えるようにします。これで2つのレイヤーが別々のトラックになったので、Pro Toolsのフェーダー上でバランスを調整できるようになる、というわけです。  既に良いループができているのですが、オカズとして4小節に1回登場させる音を選びます。今回はNATIVE INSTRUMENTS Massive用に用意している自分のプリセットに良い音があったので、それを使用しました。  これで上ネタとして使っている音は3つだけですが、自分の中では完成に近付いています。というか、ほぼ完成です。前回解説した方法で、上ネタとして使用している音をオーディオ化します。こちらも、オーディオ化しやすいように、テンプレート・セッション・ファイルにステレオのオーディオ・トラックを用意しています。  この段階で、リバース・シンバルのような、盛り上がりを見せるような音を入れたくなりました。具体的な方法は省きますが、Batteryに戻ってリバース・シンバルの音を足します。もちろん、これもオーディオ化します。    

あらかじめ設定したエフェクトを トラックにインサートしておく

 これまでの解説におけるスクリーンショットで気付いた方もいらっしゃると思いますが、モノラルの再生用オーディオ・トラックにはすべてWAVES SSL G-Master Buss Compressorを、またステレオ再生用オーディオ・トラックにはすべて、インサートAにWAVES SSL E-Channel、インサートBにAVID D-Verbをインサートしています。よって、録音用のオーディオ・トラックから再生用のオーディオトラックにクリップをドラッグすることで、既に好みのエフェクト設定になった音が流れていたわけです。トラックの音量も、作業中にフェーダーを使用して調整していたので大体好みの音量感になっていました。トラック制作からミックスまで、こうした一連の流れで作業できるのが、私がPro Toolsを使用してトラックを作る最大の理由です。 [caption id="attachment_78679" align="alignnone" width="354"]ステレオ・オーディオ・トラックにインサートしているSSL E-Channel。取り込んだ音の音量補正用にフェーダーを少し上げた状態にしてある ステレオ・オーディオ・トラックにインサートしているSSL E-Channel。取り込んだ音の音量補正用にフェーダーを少し上げた状態にしてある[/caption]   [caption id="attachment_78680" align="alignnone" width="404"]モノラル・オーディオ・トラックにインサートしているWAVES SSL G-Buss Compressor。スレッショルドを浅めに、メイクアップもあまり増やさない設定 モノラル・オーディオ・トラックにインサートしているWAVES SSL G-Buss Compressor。スレッショルドを浅めに、メイクアップもあまり増やさない設定[/caption]   [caption id="attachment_78678" align="alignnone" width="650"]同じくステレオ・オーディオ・トラックにインサートしてあるAVID D-Verb。ラージ・ルーム系の設定で、DRY/WETバランスは22%という原音に響きを加える設定 同じくステレオ・オーディオ・トラックにインサートしてあるAVID D-Verb。ラージ・ルーム系の設定で、DRY/WETバランスは22%という原音に響きを加える設定[/caption]    ドラム用のモノラル・トラックにインサートしたSSL G-Master Buss Compressorは、ANALOGをオフにして、THRESHOLDとMAKE UPを1〜2時の方向に設定したものをインサートしてあります。上ネタ用ステレオ・トラックのSSL Channelは、デフォルトからANALOGをオフにしてOUTPUTのフェーダーを少し上げた設定です。OUTPUTのフェーダーを少し上げた設定にしているのは、マスター・キーボードとして使用しているYAMAHA Motif XS8の内蔵音源を録音する際、かなりレベルが小さいからです。  ミックスの話に戻ります。今回使ったOmnisphereの音色Aのハイの部分をもう少し強調したいと思いました。そのような場合は、WAVES Renaissance Equalizerを使用しています。 [caption id="attachment_78677" align="alignnone" width="650"]トラックEQとして使うことの多いWAVES Renaissance Equalizer トラックEQとして使うことの多いWAVES Renaissance Equalizer[/caption]    SSL G-ChannelにもEQはありますが、Renaissance Equalizerはグラフィカルに調整ができるので重宝しています。右から3番目くらいのバンド・マーカーをマウスでつかんで、optionキーを押しながら右に動かします。そうするとQ幅が狭くなります。Q幅を最大まで狭くして、いったん最大までゲインを持ち上げます。最大まで持ち上げることで、強調したい周波数を探しやすくなるのです。強調したい周波数を見つけたら、ゲインを+1〜+6dBの範囲で調整すると、思った音に近付きました。こちらも、あまり触り過ぎると着地点を失うのである程度にとどめておきますが、後で変更することはほとんどありません。 [caption id="attachment_78682" align="alignnone" width="650"]Renaissance Equalizerでは、バンド・マーカーをoption+ドラッグしてQを変更。急峻なブーストにした状態で周波数を動かし、EQでのブーストが有効なポイントを探る Renaissance Equalizerでは、バンド・マーカーをoption+ドラッグしてQを変更。急峻なブーストにした状態で周波数を動かし、EQでのブーストが有効なポイントを探る[/caption]    私のトラック制作は、ご紹介したような場合がすべてでありミックスはあまり追求せず、という考えで行っています。それで成り立っている理由は、選んだドラム音色一つ一つの素材と、選んだ上ネタの音色の両方が優れているからだと思います。簡単に例えると料理と同じで、素材の味を生かしたトラック・メイクと言えるでしょう。  全3回にわたるMIDOのトラック・メイク術、いかがでしょうか。少しでも、読んでくださった方の力となることができたら幸いです。   サウンドハウスでAVID Pro Tools関連製品をチェックする *AVID Pro Toolsの詳細は→http://www.avid.com/ja  

MIDO

1990年生まれ。ミキシング・エンジニアとしての活動と並行して、TENZANやL-VOKAL、Zeebraのプロデュースでも注目を集める。以降も掌幻、CHICO CARLITO&焚幕、PKCZ(R)、EGOなどに、シンセを多用した迫力満点のビートを数多く提供している。 2019年4月号サウンド&レコーディング・マガジン2019年4月号より転載

「REPRODUCER AUDIO Epic 5」製品レビュー:パッシブ・ラジエーターを装備したニアフィールド・パワード・モニター

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精密なレンズのピントが合ったように 音のディテールが分かる

まずはお借りした個体をピンク・ノイズやサイン・スウィープ信号で測定してみました。カタログ値通り、56Hzから20kHz(スペック上は40kHz)まで±3dB以内のほぼ平坦な振幅周波数特性と、±45°以内の位相特性であることが分かりました。これは素晴らしい伝送特性であると言えます。複数のスピーカー・ユニットに帯域を分担させるため、フィルターで音声信号を周波数分割する際に、時間軸の正確さが低下してしまうことがあります。そこで問われるのがモニター・スピーカーの位相特性です。2ウェイでは入力信号を低域と高域に分解します。多少のタイミングのズレ(位相差)があったとしても、脳はまとまった信号として知覚できるのですが、このズレが音質に大きな影響を与えてしまうのです。 では、Epic 5を試聴してみましょう。説明書には、本機はニアフィールド用に設計されており、0.8〜1.4mでの使用が望ましいと記載されています。実際試聴してみると確かにそういう感じで、今回は左右スピーカー間隔と耳との距離を1辺が1.3mの正三角形になるように配置したところ非常に良いバランスになりました。またEpic 5はユニット間の位相を物理的にそろえているので、設置する際は耳の高さと音響軸を合わせた上で、バッフルが後傾した状態にすることが重要です。最初は高域の目立つやや硬めの音質に感じるかもしれませんが、その場合はスピーカーとの距離を増やすとよいでしょう。 音楽ソースを試聴してみるとまず感じることは、非常に精密なレンズのピントが合ったときのようにディテールが分かり、正確な定位感と楽器ごとの質感を感じることができます。これによりレコーディング時にはマイクの位置の微妙な変化が分かりやすく、ミックスやマスタリングにおいてもひずみなどが起きていないか迅速な判断ができると思います。 独自開発の1インチ・ツィーターは2kHzで−24dB/Octのフィルターがかけられています。急峻な特性にもかかわらずウーファーとの位相が保たれた平坦な合成特性で、クロスオーバー周波数=2kHz付近の音楽に最も重要な帯域は、再生忠実度がかなり高いと言えるでしょう。またこのツィーターの能率は比較的高めのようですが、大出力のアンプと組み合わせにおいて無音時のSN比には不利なようです。高域のSN比と低ひずみの両立は難しい問題ですが、業務用機器としては限られた条件でこのような設定はありだと思います。  

ダブつきとは無縁の低域再生能力 すべての振動板にはアルミを採用

Epic 5の音の立ち上がりの速さは、特に生楽器の質感の表現に優れており、金管楽器の入ったオーケストラの生々しさが素晴らしく、スケールの大きい映画音楽などの作業の多い作曲家がモニターに使うと仕事がはかどるように感じました。このスケール感は底面のパッシブ・ラジエーターが大きく貢献。サイズから想像するより2オクターブ近く下の帯域まで感じることができます。長いダクトの共振でタイミングが遅れた上にディケイを伸ばしたようなバスレフでのダブつきとは無縁です。これはクラスDアンプと、すべての振動板素材に軽量なアルミ合金を採用している点も大きいでしょう。 [caption id="attachment_78494" align="alignnone" width="314"]▲底面には6.25インチ・パッシブ・ラジエーターを装備。電気的な接続はされていないが、キャビネット内の音圧を受けて振動し、低域を増強する仕組み ▲底面には6.25インチ・パッシブ・ラジエーターを装備。電気的な接続はされていないが、キャビネット内の音圧を受けて振動し、低域を増強する仕組み[/caption] 低域は設置環境によってかなり影響を受ける部分ですが、Epic 5にはピン・スパイクと柔らかいシリコン素材でできたスパイク受けが付属しています。このスパイク受けの効果は音質的にも絶大で、必ず使用した方がよいです。スパイク受けの有無の効果を確かめるための試聴中、目を離したすきにEpic 5が低域の振動でトコトコと歩き出してしまいました。スパイク受けを使用したとしても設置面の共振はある程度あったので、柔らかい素材のインシュレーターの併用もよいかもしれません。 Epic 5の印象を一言で表すと、マスタリング・スタジオにあるラージ・モニターのミニチュアという感じです。小さなエンクロージャーからは想像できない、大型スタジオで聴くようなスケール感があり、ダイナミック・レンジも十分。高域の音圧も、耳の限界が先に来るほどヘッドルームがあります。出音が好みに合えば、Epic 5は手放せない道具になるかと思います。   [caption id="attachment_78495" align="alignnone" width="601"]▲リア・パネル。右上から下へ、1dBステップのHF-TRIM(2.5kHz/±5dB)とLF-TRIM(250Hz/±5dB)、スタンバイ・スイッチ、インプット・セレクターと入力端子(RCAピン、XLR) ▲リア・パネル。右上から下へ、1dBステップのHF-TRIM(2.5kHz/±5dB)とLF-TRIM(250Hz/±5dB)、スタンバイ・スイッチ、インプット・セレクターと入力端子(RCAピン、XLR)[/caption]   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より)  

渡辺シュンスケ×8020A〜クリエイターが愛用するGENELECモニター

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GENELECは聴いていて楽しい音 もちろんモニターとしてもちゃんと使えます

 40年の歴史を誇る、フィンランドのモニター・スピーカー・メーカー、GENELEC。現在のスタジオ・モニターでは主流となったアクティブ式のパイオニアとして知られる同社は、コンパクトなデスクトップ機からスタジオ用ラージ機までを手掛け、世界中のエンジニアやクリエイターから厚い信頼を寄せられている。この連載では、そんなGENELECモニターを愛用するクリエイターに、制作のパートナーとしてのモニターを語ってもらっている。今回は多くのアーティストをサポートしながら、ソロ・プロジェクトSchroeder-Headzでも精力的に活動しているキーボーディスト、渡辺シュンスケのプライベート・スタジオにお邪魔した。  

省スペースなシステムが実現できるモニター

 渡辺の自宅スタジオを訪れると、まず驚かされるのは、そのシンプルな制作システム。窓際に置かれた電子ピアノの上にはAPPLE MacBook ProとオーディオI/O、そして左右にGENELEC 8020Aが置かれている。  「今はほとんどソフトウェアでも十分なクオリティですし、Schroeder-Headzはピアノがメインなので、ピアノ・タッチの鍵盤にすぐ触れて、音も聴けて、コンピューターも置けて、というのが自分のスタイルとしては理想で。スペースもあまり取らないので、この形になりました」  見た目からは電子ピアノの再生用に8020Aを使っているような印象を受けるが、8020AはMacBook Proからの音を再生。電子ピアノはUSBキーボードとして機能している。  「10年くらい前、小型のパワード・モニターが流行し始めた時期に、幾つか買ってみたんです。その中でGENELECは聴いていて楽しい音で、もちろんモニターとしても使える。自宅での作業はデモ作りがほとんどなので、精細なモニターというよりは聴いていて楽しめて、疲れない。そんなスピーカーとして8020Aは理想的でした。ちゃんと自宅で制作をしている人からすると怒られるかもしれないセッティングですが、僕の場合はミックスは外部のスタジオでエンジニアに依頼しているので、自分の仕事のしやすさを重視しています」  

音量を小さめに出してもちゃんと聴こえる

 専用スタンドIso-Podのおかげで上振りができる8020Aは、こうした電子ピアノ上の設置に最適だ。演奏するときは鍵盤やMacBook Proに手が届く距離だが、リスニングやチェックなどは少し離れて聴くこともあるという。  「8020Aは音量を小さめに出してもちゃんと聴こえますね。スタジオで聴くYAMAHA NS-10Mよりも低域がすごくある感じで、設置状況に合わせて内蔵フィルターでローカットしました。それでも十分低域がありますね」  そう言いながら、再生してもらうと、隣にいれば会話できるくらいの音量。一般的な住宅としてはやや大きめだ。  「実はこの部屋は外の騒音がうるさいので、そこそこの音量を出せるんですよ。ヘッドフォンで作業することは、生楽器の録音以外ではほとんど無いですね」  シンプルとはいえ、必要であればハードウェアのシンセを持ってきて横に置き、録音することもあるそう。フォームにとらわれず、自由な形で制作したい……そんな渡辺にとって、コンパクトで必要十分な音をもたらしてくれるからこそ、8020Aは長い間愛用されているのだろう。  「10年前に買って不満を抱くこともないまま、今まで8020Aをずっと使ってきました。でも最近、これにDSPを入れて低域のたまりなどを補正してくれるモデル(編注:8320A)があるということを聞いて、進化しているんだなと思いましたね」  

渡辺シュンスケ使用モデルの後継機

8020dpm-k05 8020D オープン・プライス (ダーク・グレー:市場予想価格55,000円前後/1基、ホワイト:市場予想価格62,000円前後/1基) 8000シリーズの4インチ・ウーファー・モデルとして長らく人気を得ていた8020。2017年に最大音圧レベルが4dB向上した8020Dにバージョン・アップを果たした。周波数特性は56Hz〜25kHz(−6dB)。ツィーターは0.75インチのメタル・ドームを採用している デジマートで探す  

Creator of This Month

Genelec_Watanabe_prof 渡辺シュンスケ Cocco、堂島孝平、PUFFY、佐野元春など多くの著名アーティストのレコーディングやライブ・ステージで活躍するキーボーディスト。自身のプロジェクトとしてSchroeder-Headz名義での活動も展開。ポストジャズ的サウンドを追求している ■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン  https://www.genelec.jp/ 2019年4月号サウンド&レコーディング・マガジン2019年4月号より転載
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