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【ドロップ選手権】コンテスト結果発表!!!

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最優秀賞 〜アッパー系ドロップに必要な要素をうまく構成 phritzさん   banvox賞 〜最低限の音数で彼だけの世界観を表現できている texpherさん   Masayoshi Iimori賞 〜リズム・ワークの妙に思わず耳を奪われた TODAY IS THE DAYさん   MONJOE賞 〜逆転の発想により強度の高いアンサンブルに artpaixさん   Nor賞 〜予想だにしなかったチルでキャッチーな音像 Raysiaさん   浅倉大介賞 〜分かりやすさとギミックのバランス感が絶妙 吉澤智さん   たくさんのご応募、ありがとうございました。なおサンレコのSoundCloudプレイリストから、応募作品すべてをご試聴いただけますので、ぜひチェックしてみてください!     [amazonjs asin="B07JVF7M1F" locale="JP" title="Sound & Recording Magazine (サウンド アンド レコーディング マガジン) 2018年 12月号 (小冊子『Tokyo Recording Studio Guide 2018』付) 雑誌"]

Device 31 Maxで音楽理論を構築する生成的作曲法 by 松本昭彦

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Device 31 Maxで音楽理論を構築する生成的作曲法 by 松本昭彦

  ▲TotalRandom   RandomComposition▲RandomComposition   DrunkMelody ▲DrunkMelody   sub_DiatonicSet ▲sub_DiatonicSet   TonalHarmony ▲TonalHarmony   ファイルをダウンロードする→1905_Max   https://youtu.be/_74L9XaBPhg    

生成と作曲

“作曲”という言葉は誰もが聞いたことがあると思いますが、“生成”という言葉についてはあまりなじみが無いかもしれません。今回は音楽の生成にフォーカスして、作曲における固定観念を解きほぐします。パッチを通じてどのようにして機械に作曲させるのかを体験し、人間と機械の特性の違いについて考えていきましょう。 “生成”とは、実存しなかったものをプログラミングなどの力を借りて生じさせることです。コンピューターの誕生以降、生成技術を用いることで音楽の様式をデザインしやすくなりました。様式とは、作曲/作品群に共通する音使いの特徴を後から分析し、体系的にまとめたものです。アルゴリズムという形で作曲するための設計図、すなわち音楽の様式そのものをメタレベルで作曲家が記述できるということは、作者独自の作曲理論を構築する上で大きな役割を果たします。 Maxでは、収録されているオブジェクトの簡単な組み合わせで、さまざまな音楽の自動生成を試みることができます。他者とは違う音楽を生み出すための規則をデザインするという意識は、現代の作曲家が独創性を生み出す上で重要になってくるでしょう。 Maxにおける生成の基本は乱数です。オブジェクトの[random]が最も基本的な種となり、それを加工する規則を作っていくことで少しずつ音楽が姿を現していきます。乱数というとコンピューター特有の概念のように思えますが、揺らがせても問題が無いパラメーターに対して無作為な選択をすることも“乱数的”と言えるでしょう。打ち込みと人間の演奏を比較しても、人間の演奏は楽譜に対して毎回不規則に音の強さや長さ、タイミングが揺らぐため、そのことが音楽的にメリットにもデメリットにもなります。その適材適所の選択をするのも作曲家の仕事です。 それでは、さまざまなパラメーターの出現確率をランダムに選択するパッチ「TotalRandom」で生成される音を聴いてみましょう。新ウィーン楽派の時代に作曲家が目指した、特定の音に中心性が無く、すべてが等価の究極の無重力な音楽はこのような響きになるのではないでしょうか? 人間よりも機械が得意な作曲表現の一つであり、ある意味では究極の到達点とも出発点とも言えるでしょう。  

偶然性を制御し理論を構築する

乱数は、そのままではランダムな数字をただ吐き出すだけですが、確率の考え方を使うことでこれを制御して、乱数に重みを付けることができます。2つ目のパッチ「RandomComposition」のように[itable]を使うと、そのテーブルの分布での乱数生成を行うことが可能です。高い値の出現頻度を上げたり、中央付近の出現頻度を下げたりすることで、さまざまな作曲や音響合成のアイディアにも応用できます。 ある値を別の特定の値にマッピングする方法も乱数を制御するには有効です。3つ目のパッチ「DrunkMelody」内のサブパッチ「sub_DiatonicSet」のように、乱数が吐き出す値をダイアトニック音階のMIDIノート・ナンバーに強制的にマッピングすることで、ダイアトニック音階から外れないメロディの生成が可能になります。このパッチでは[drunk]を使い、過度な音の跳躍が生じないよう制御しました。 確率を使ったアプローチに、前後の数値の関係性から出現頻度をコントロールする“マルコフ連鎖”と呼ばれるものがあります。連続する事象を確率過程で説明できる音楽理論も多く存在しており、例えば和声法や対位法などもその代表です。4つ目のパッチ「TonalHarmony」では、古典的な藝大和声の様式に基づくコード進行のルールを[prob]を使って記述しました。和音構成を変えるだけでも、古典派和声とは全く違った進行の様式を作り出すことができます。メッセージ・ボックスの数字を差し替えるだけで音楽は変わっていきますが、これも立派な作曲。五線譜とペンを使っているだけでは到達できない様式のデザインを考えることが重要です。理論的な仮説を立てて音を聴きながらプログラミングを進めていけることは、Maxを使って作曲をする大きな利点の一つだと思います。 絶対に禁則を犯さないのが機械の作曲です。メリット/デメリットはありますが、作曲のプロセスにおいては人間の頭を使った計算だけでなく、機械計算のほうが得意な場面があります。これはプロセスの話で、最終的にアプトプットされる音楽が人間的なのか、機械的なのかという話とはまた別の次元の話です。人間らしい音楽を生み出したい場合でも、機械的な計算が有効な場面は多々あります。 § 生成的作曲のアプローチはレジャレン・ヒラーのイリアック組曲に始まり、1950年代からさまざまな実験が試みられています。しかし、その学術資産を応用し、音符レベルだけでなく波形レベルからどのようにアルゴリズミックに音楽を生成していくのか……。そこにはまだまだ未知の領域が広がっているのです。読者の皆さんから独創的な発想が生まれることを期待しています。  

松本昭彦

AkihikoMatsumoto 【Profile】音楽家/プログラマー。東京藝術大学大学院修了。自身の作品だけでなく、さまざまなアーティストの作品展示や企業の研究開発にCYCLING'74 Maxプログラマーとしてかかわる。2016年には、アルゴリズム作曲や電子音響処理技術を駆使した1stアルバム『Preludes for Piano Book1』をリリースした。 http://akihikomatsumoto.com     max_logo CYCLING '74 MaxはMI7 STOREでオーダー可能 問合せ:エムアイセブンジャパン http://www.mi7.co.jp/  

モンスターストライク リミックスで目指す次世代クリエイター 【第4回】選ばれし9組のサウンド・クリエイター

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スマートフォン向けアプリ“モンスターストライク”(以下、モンスト)のメインテーマをリミックスする“【XFLAG公式】リミックスコンテスト”が開催された。今回はクリエイターやアーティスト、本誌をはじめとするメディアや企業から成る12組のREMIX JUDGES(審査員)による審査結果を発表する。さらに、3月25日より募集を開始した“【XFLAG公式】リミックスコンテスト vol.2”についても掲載しているので要チェック!    

モンスターストライクとは?

tsuioku_ashura_02 世界累計利用者数4,900万人を突破したスマートフォン向けアプリ。ゲームの内容はシンプルで、自分のモンスターを指で引っ張り、敵のモンスターに当てて倒していくというもの。最大4人までの協力プレイが可能となっており、強い敵や難しいクエストも協力してプレイすることにより突破することができたり、1人で遊ぶよりも多く報酬が得られたりするのも魅力の一つだ。【XFLAG公式】リミックスコンテストvol.1の課題曲「モンスターストライクメインテーマ」をはじめ、多くの楽曲を作曲家の桑原理一郎が手掛けている。    

vol.1結果発表

武田真治賞

IRIEWEBさん

Judge's Comment 「せっかくの素敵なアレンジでもサックスがトラックから浮いてしまっていると感じた作品も多かった中、サックスそのもののイコライジングやエフェクト処理が一番凝っていると感じました。僕が聴かせていただいた中で唯一のレゲエ調なのも強く印象に残った理由かもしれません。僕のサックス素材を常に念頭において作品を作り上げてくださったと感じました」 [次点] ミヤジマユースケさん、千石伊織さん  

五十嵐公太賞

pixieさん

Judge's Comment 「ミュージカル・タッチで変化に富んでおり、場面ごとにいろいろなイメージが広がります。聴いていてとても楽しい。ドラム素材も自然に使われていてうれしいです」 [次点] blowfishman350さん、Daizo Moriさん  

DÉ DÉ MOUSE賞 

KUVIZM & uyuniさん

Judge's Comment 「ムーディなジャズ調と思いきや驚きのシティ・ポップ調ラップ・ボーカル。リリックもモンストを連想するキーワードが散りばめてあり、シンプルだけど1分半という長さでベストです」 [次点] PinotFGさん、Blacklolita & Avansさん  

近谷直之賞 

Blacklolita & Avansさん

Judge's Comment 「攻撃的かつしなやかで作り手の音楽との向き合い方がとても分かる作品。音は多いが無駄無く整理されているように感じた。コード感やサックスのフレーズのエディット、出てくる具合も絶妙。最初のSEとラストのサックスの終わらせ方も映像が浮かぶような流れでとても洗練されている」 [次点] たにぐちじゅりあんさん、Flag Flagさん  

桑原理一郎賞

PinotFGさん

Judge's Comment 「さまざまなアプローチがある中で、この素材からこの曲想に至る発想がとても新鮮でした。軽やかな曲調と洒脱なコード・ワーク、何より始まりから終わりに至る丁度良い尺感で、飽きず、だれず、物足りなくもなく、変化に富んでいる構成の巧みさがとても印象的でした。詰め込み過ぎず、必要最小限に印象的にまとめたバランス感覚の良さで決めました」 [次点] pixieさん、z-oneさん  

XFLAG SOUND CREATORS賞

PinotFGさん

Judge's Comment 「仕事柄これまでたくさんのモンストのBGMやアレンジを耳にしてきましたが、今まで無かったファンタジーの世界にモンストを取り込み壮大に作り込まれ、しかも巧みに拍子を変えてきており、感動しきりでした! まさにユーザー・サプライズです! やられました!(XFLAG SOUND統括リーダー/高津戸勇紀)」 [次点] Takuya Wadaさん、echo ghost noiseさん  

フェイス賞

新井貫玄さん

Judge's Comment 「ビート素材のR&B要素を汲み取って格好良く仕上げています。最初はストレートなジェームス・ブラウン風かと思わせつつ原曲の実は難解なメロディを破綻無く組み立てるコード・センスも相まって、最後まで聴き入ってしまいました。(サウンド・プロデューサー/吉村祐)」 [次点] Blacklolita & Avansさん、安芸章太郎さん  

BARKS賞

Burn in the edgesさん

Judge's Comment 「明らかにギタリストによる作品。現在格好良いと思っていることを自分のセンスで徹底的に詰め込むんだという、その精神性に惚れました。音楽の基本ってそれだと思います。アニメ映画主題歌みたいでワクワクします。(編集長/烏丸哲也)」 [次点] Blacklolita & Avansさん、pixieさん  

日本コロムビア賞

Kiyoxさん

Judge's Comment 「静と動。哀愁を帯びたストリングスとEDMサウンドのコントラストが良い。夕暮れ時の野外フェスで爆音で聴きたい。(プロデューサー/向山豊)」 [次点] KUVIZM & uyuniさん、Tokiさん  

sleepfreaks賞

Blacklolita & Avansさん

Judge's Comment 「今風のサウンドにノリが良く気持ちの良いビートが印象的な作品です。リズムのすき間の使い方や、SEの取り入れ方が絶妙なだけではなく、構成もしっかりと組まれているため、何度も聴けてしまう魅力があります。ミキシングを含めたトラック・バランスのセンスも良いです。(代表取締役/金谷樹)」 [次点] Taiyo Kyさん、Youslessさん  

ヤマハミュージックジャパン賞

Tokiさん

Judge's Comment 「イントロやアウトロで使われる印象的なシンセ・リフ、リード・シンセとサックスの掛け合い、さりげないギターのカッティングや、間奏のエレピ・ソロからサックス・ソロで盛り上げるところなど飽きさせない構成で、サウンドやミックス・バランスも良く何度でも聴くことができました。(スタインバーグマーケティングチーム)」 [次点] たにぐちじゅりあんさん、Youslessさん  

サウンド&レコーデイング・マガジン賞

 Blacklolita & Avansさん

Judge's Comment 「武田真治さんの吹くメロディをうまくカットアップして、そのすき間にシンセをはめ込み、“強い音色の掛け算”に成功。リズムとメロディのユニゾンの縦線がそろっていることがビートの押し出し感につながっています。(副編集長/松本伊織)」 [次点] 池尻喜子さん、Tokiさん    

『B.B.Q. with SOUND CREATORS vol.1』

XFLAG_CD_RemixContest vol.1 各Remix Judges賞に輝いた9組のリミックス音源を収録したコンピレーション・アルバム『B.B.Q. with SOUND CREATORS vol.1』が日本コロムビアより配信リリース。主要音楽配信サイトにて試聴可能だ。    

【XFLAG公式】リミックスコンテスト vol.2応募受付開始!!

XFLAG_FIX

「超絶 咎 ボスBGM XFLAG SYMPHONY 2018 ver.」をリミックス

XFLAGが幕張メッセで行ったリアル・イベント“XFLAG PARK2018”。その中のステージ“XFLAG SYMPHONY”で演奏された楽曲「超絶 咎 ボスBGM XFLAG SYMPHONY 2018 ver.」が今回の課題曲だ。矢内景子(SHADOW OF LAFFANDOR)のボーカル・メロディを必ず使って、リミックスを行うことが条件。  

リミックス音源を特設サイトにアップロード

応募作品は24ビット/44.1kHz以上のWAV形式で、下記URLからアップロードする。素材のダウンロードやお手本リミックス音源、そのほか詳細な情報、もこちらに掲載されているので参照してほしい。  

優秀作品は日本コロムビアよりデジタル配信

REMIX JUDGES(審査員)それぞれが選んだ優秀作品は、日本コロムビアよりコンピレーション・アルバムとしてデジタル配信される。さらに、REMIX JUDGESと受賞者でのミーティング・イベントも開催予定。  

vol.2のゲスト・リミキサーはこの2組

HΛL

[caption id="attachment_78637" align="alignnone" width="351"][Profile] 作曲/編曲/サウンド・プロデュース/アーティスト・コーディネート/ライブ・コーディネートなどを行う梅崎俊春のソロ・プロジェクト。これまで手掛けたアーティストに浜崎あゆみ、近藤真彦、Kinki Kids、タッキー&翼、Janne Da Arc、鈴木亜美、上戸彩、伊藤由奈など多数。 [Profile] 作曲/編曲/サウンド・プロデュース/アーティスト・コーディネート/ライブ・コーディネートなどを行う梅崎俊春のソロ・プロジェクト。これまで手掛けたアーティストに浜崎あゆみ、近藤真彦、Kinki Kids、タッキー&翼、Janne Da Arc、鈴木亜美、上戸彩、伊藤由奈など多数。[/caption]

予想を上回る奇抜なアレンジを待っています!

「2017年春に“MONSTER STRIKE SYMPHONY 〜Prelude〜”を観せていただいたことをきっかけに、XFLAGと出会いました。今回リミックスコンテストvol.2ということで、僕たちの予想を遥かに上回る奇抜なアレンジを待っています!」  

SHADOW OF LAFFANDOR

[caption id="attachment_78638" align="alignnone" width="650"][Profile] “音で紡ぐファンタジー作品”と題した、音楽とストーリーが融合する新しい形のエンターテイメント・ファンタジー作品。原作/作詞/作曲を矢内景子(写真左)、サウンド・プロデュースを近谷直之(同右)が務める。音楽でロールプレイング・ゲームを感じることのできる新感覚アーティストとして話題を集めている。 [Profile] “音で紡ぐファンタジー作品”と題した、音楽とストーリーが融合する新しい形のエンターテイメント・ファンタジー作品。原作/作詞/作曲を矢内景子(写真左)、サウンド・プロデュースを近谷直之(同右)が務める。音楽でロールプレイング・ゲームを感じることのできる新感覚アーティストとして話題を集めている。[/caption]

枠にとらわれない自由な音楽を楽しみにしています

「2017年のモンスト4周年記念“MONSTER STRIKE SYMPHONY”のサウンド・プロデュースから始まり、“モンスターストライク ウインド・オーケストラコンサート”やXFLAG PARK2018の“XFLAG SYMPHONY 〜PARK SELECTION〜”まで、XFLAGと共にたくさんの音楽を作ってきました。常に挑戦を続けるXFLAGの新しい取り組みに、こうしてかかわることができてうれしく思います。枠にとらわれない、自分自身が格好良いと思える自由な音楽を楽しみにしています」  

応募締め切りは5月13日(月)11:59まで

 

特設サイトhttps://xflag.com/sound-creators/remix-contest-vol2/

  サウンド&レコーディング・マガジン 2019年5月号より転載 [amazonjs asin="B07P9MR83T" locale="JP" title="Sound & Recording Magazine (サウンド アンド レコーディング マガジン) 2019年 5月号 雑誌"]  

Gonnoが使う Studio One 第3回

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第3回 デフォルトの機能からアドオンまで 奥深き“S1ミックス”の世界

サンレコ読者の皆様、こんにちは! 僕は年末にインドでのツアーを無事に終え、帰国してからは矢継ぎ早にイベントでのDJをこなしておりました。毎年ではありますが、さすがに疲れたな……。さて今回は、その疲れからも復帰したところで、PRESONUS Studio One(以下S1)でのミックス・ダウンについて、前回の続きを解説したいと思います。

アドオンのミックスFX=CTC-1で より多彩なコンソール感をゲット

前回と同様に、実際にS1でミックスしてリリースした楽曲GONNO × MASUMURA「In Circles」を題材に話を進めましょう。この曲では、連載初回“レコードのデジタイズ術”で紹介したS1標準装備のコンソール・シミュレーター・プラグインConsole Shaperを使用しています。Console Shaperは“Mix Engine FX”(ミックスFX)と定義されるエフェクトで、バスに立ち上げる仕様です。「In Circles」ではドラムやシンセのミックス・バスに使い、個々にパラメーターを設定した方が良い結果を得られたため、マスターには用いませんでした。そしてこのミックスFX、デフォルトではConsole Shaperしか装備されていないのですが、ほかのものがアドオンとして発売されています。その一つ、CTC-1ではチューブ系など3種類のコンソール・モデルを選べるのだとか……欲しい。 [caption id="attachment_78451" align="alignnone" width="600"]▲Professionalグレードに標準装備のミックスFX、Console Shaper。マスターとその他のバスにミックスFXの表示(赤枠)があり、そこから呼び出せます ▲Professionalグレードに標準装備のミックスFX、Console Shaper。マスターとその他のバスにミックスFXの表示(赤枠)があり、そこから呼び出せます[/caption]   というわけで、この原稿を書く名目で買っちゃいました、CTC-1。これは素晴らしい! 有料アドオンなので当たり前ですが、Console Shaperをアップ・グレードしたような感じで最高です。こんなに便利なものなら、アルバムのミックス前に買っておけばよかったと、今さらながら後悔しています。 [caption id="attachment_78452" align="alignnone" width="650"]▲エムアイセブンジャパンのWebストアなどで発売されているProfessionalグレード用のアドオン、CTC-1(ダウンロード版:8,056円)。3種類のコンソール・シミュレーターを切り替えて使う仕様で、画面はブリティッシュなサウンドを意識したClassicです ▲エムアイセブンジャパンのWebストアなどで発売されているProfessionalグレード用のアドオン、CTC-1(ダウンロード版:8,056円)。3種類のコンソール・シミュレーターを切り替えて使う仕様で、画面はブリティッシュなサウンドを意識したClassicです[/caption] CTC-1は、先述の通り3種類のコンソール・モデルを装備しています。NEVE的なルックスのClassic、TELEFUNKENのチューブ・プリアンプを思わせるTube、現代的な印象のCustomがそろっていて、まさに三者三様、音のキャラクターも全く違います。選んでいてとても面白いので、Console Shaperを挿していたバスで差し替えて使ってみましょう。 [caption id="attachment_78454" align="alignnone" width="650"]▲CTC-1のTube。TELEFUNKENのチューブ・プリアンプをほうふつさせるグラフィックで、ビンテージ・テイストのチューブ・サチュレーションなどを付加することができます ▲CTC-1のTube。TELEFUNKENのチューブ・プリアンプをほうふつさせるグラフィックで、ビンテージ・テイストのチューブ・サチュレーションなどを付加することができます[/caption] まずドラム・バスは、サード・パーティ製のテープ・シミュレーターを使用しているため、Console ShaperではDriveのスイッチをオンにしただけでした。ノブの数値は0です。これでも低域の量感がグンと上がりましたが、CTC-1に差し替えてみましょう。いろいろ試した結果、このドラムにはTubeが合いそうです。ただこちらも、Driveのスイッチをオンにするだけでノブの数値は0。NoiseやCrosstalkのスイッチもオフにします。 他方、シンセ類などの上モノをまとめたバスではClassicをチョイス。メインのシーケンスがソフト・シンセによるものだったので、ほかのハードウェア・シンセのパート(もちろんライン録り)と整合性を取る目的です。Driveを少し上げて+3dBくらい、Crosstalkもオンにして25%くらいにしてみました。これにより、ドラムやハード・シンセと大分なじむ感じに。シンセにDriveをかけると、ひずんで音量が上がるというより、波形を変調するような変化が得られます。場合よってはDriveをマックスにしても、音作りとしては面白いかもしれません。

ミックスFXのかかる先を変えられる “パススルー”という機能

ミックスFXを夢中でいじっていると、プラグイン画面上部の“パススルー”というボタンが気になり出すかと思います。このパススルー、地味に見えて実は効果の大きい機能なのです。例えばマルチトラックを扱うとき、ドラムの各パーツやキーボード類などを属性ごとにまとめたサブバスを作り、それをマスター・バスに送ることが多いと思います。そのマスター・バスにミックスFXを立ち上げパススルーをオフにすると、ミックスFXはマスターに接続された全信号のサミング結果に対してかかります。ドラム・パーツのサミングやキーボード類のサミングにかかるわけですね。 [caption id="attachment_78455" align="alignnone" width="500"]▲パススルーのボタンをオンにすると(赤枠)、そのミックスFXが立ち上がったバスに接続されているほかのバスの内容(=個々のトラック)に直接効果がかかります。クロストークなどをアクティブにしている場合、個々のトラックが発音していないタイミングでもわずかにレベル・メーターが振れるのは、そのせいです(黄枠) ▲パススルーのボタンをオンにすると(赤枠)、そのミックスFXが立ち上がったバスに接続されているほかのバスの内容(=個々のトラック)に直接効果がかかります。クロストークなどをアクティブにしている場合、個々のトラックが発音していないタイミングでもわずかにレベル・メーターが振れるのは、そのせいです(黄枠)[/caption] 一方パススルーをオンにすると、マスター・バスに来ている各サブバスの中身、つまり個々のトラックに直接かかるようになります。パススルーでは、ミックスFXがバスでサミングされたものにかかるか、バスの中身に対して個別にかかるかを設定できるため、オンとオフでの変化はさまざまで、音もかなり違ってきます。今回は、ドラムとシンセの両バスでパススルーをオンにしてみました(ボタンの表示が水色になればオンの状態です)。例えばCrosstalkを使っているときにパススルーがオフになっていると、クロストークの音がバッファー・サイズなどによっては遅延して出てくることがあるので、そうした場合はパススルーをオンにしておくとよいでしょう。

レイヤー時の位相合わせに便利な トラックのディレイ機能

ミックスFXよりも圧倒的に地味な存在ですが、各トラックの発音タイミングを微妙にズラせる“ディレイ機能”も、僕にとって非常に重要です。「In Circles」ではキックの超低域を増やしたかったため、キック・トラックをコピーしてローパス・フィルターをかけ、低域に寄った成分を作ってオリジナルに重ねています。キックに低域の素材を足す際は、音量はもちろんですが、タイミングを調整して位相を合わせることがとても重要。ですので、トラックごとタイミングを調整できるディレイがあるのは非常にありがたいです。 [caption id="attachment_78456" align="alignnone" width="340"]▲トラック・インスペクターに“ディレイ”という項目があり(赤枠)、ここでトラックの発音タイミングを微調整できます。筆者は複数のキック素材などをレイヤーする際、おいしい周波数帯域に位相を合わせるためにディレイの数値を調整しています ▲トラック・インスペクターに“ディレイ”という項目があり(赤枠)、ここでトラックの発音タイミングを微調整できます。筆者は複数のキック素材などをレイヤーする際、おいしい周波数帯域に位相を合わせるためにディレイの数値を調整しています[/caption]   また“トランジェントを検出”という機能ではオーディオのアタックを読み取ることができ、解析後に“ベンドマーカーで分割”機能を使うことにより、アタック位置での分割が可能に。MASUMURA君のドラムでトリガーしたROLAND TR-808ライクなキックに試したところ、うまく頭で分割できたので、生キックに対して厳密にタイミングを合わせてみました。 [caption id="attachment_78457" align="alignnone" width="800"]▲シンセで鳴らした超低域素材(画面上段のトラック)に“トランジェントを検出”機能を使用し、アタック位置を解析。アナライズ後は波形のアタック位置に縦線が入るので視覚的にもとらえやすくなります。それを指標に、生演奏から作ったキックの低域レイヤー(下段トラック)に重ねていきました ▲シンセで鳴らした超低域素材(画面上段のトラック)に“トランジェントを検出”機能を使用し、アタック位置を解析。アナライズ後は波形のアタック位置に縦線が入るので視覚的にもとらえやすくなります。それを指標に、生演奏から作ったキックの低域レイヤー(下段トラック)に重ねていきました[/caption] そのほか、初回でも紹介した通り純正のLimiterも優秀で、「In Circles」でもマスタリング前のプリマスターに使用しました。また目立たないところではMixtoolも万能ナイフ的なプラグインで重宝しますし、Open AirのようなIRリバーブもかなりサクサク動くのでサラッと取り入れてみました。とにかくこのS1、ミックスだけでも機能が豊富で、いじればいじるほどすごいです。次回は、ミックスというよりアレンジ寄りの内容でいけたらと考えておりますので、お楽しみに。 [caption id="attachment_78458" align="alignnone" width="660"]▲Open Airは、Professionalグレードに標準搭載されているコンボリューション・リバーブ。コンボリューション・リバーブは動作が重くなる傾向にありますが、Open Airは軽快に動くのが魅力 ▲Open Airは、Professionalグレードに標準搭載されているコンボリューション・リバーブ。コンボリューション・リバーブは動作が重くなる傾向にありますが、Open Airは軽快に動くのが魅力[/caption]     *Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

キーボード・ミキサーのRADIAL KL-8が登場

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ラック・マウント型のキーボード・ミキサー、KL-8(130,000円)が登場した。 入力はステレオ4系統で、ch4はアナログ入力に加えて、最高24ビット/192kHzのUSB入力(Mac/Windows)にも対応。USB端子は冗長性を考慮して2系統用意されており、本体のスイッチやフット・スイッチで切り替えられる。ステレオのAUXとインサート端子も装備する。 出力端子にはメイン・アウトとモニター・アウトをステレオで配備。そのほか複数のKL-8と接続するためのLINK用端子も備えている。なおUSB端子では、コンピューターにメイン・アウトまたはステレオAUXセンドの信号を送信可能。さらにMIDI IN、OUT端子も搭載しており、USB MIDIインターフェースとしても機能する。   製品情報 https://www.electori.co.jp/radial/KL-8.htm  

ラインアレイ・スピーカーのNEXO Geo M12が4月に発売

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ラインアレイ・スピーカーGeoシリーズのフラッグシップ・モデルとなる、Geo M12(680,000円)が4月からラインナップを開始。 幅70cmの筐体に1.4インチ径のツィーターと、12インチ径のウーファーを内蔵している。周波数特性は50Hz~20kHzで、最大音圧は140dB。特許技術の双曲面反射型ウェーブソースによって音響エネルギーを制御し、キャビネット間の不要な干渉を抑えているという。水平指向角はオプションのマグネット・フランジによって、標準の80°から120°へ簡単に変更が可能だ。 垂直指向角10°ツアリング仕様、垂直指向角20°ツアリング仕様、垂直指向角10°設備仕様、垂直指向角20°設備仕様モデルが用意されており、ツアリングと設備用では接続端子とグリルが異なる。また、それぞれホワイト・モデル(750,000円)もラインナップされている。 18インチ径のドライバーを装備した、サブウーファーのMSUB18(680,000円)も登場。周波数特性は32Hz〜120Hzで、最大音圧レベルは139dB。ツアリング仕様と設備仕様の2種類があり、こちらも共にホワイト・モデル(750,000円)が用意されている。   製品情報 https://www.yamaha.com/ja/news_release/2019/19031301/ https://nexo-sa.com/systems/geo-m12/?lang=ja  

SE ELECTRONICSのSHURE製ワイアレス・マイク対応交換カプセル

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V7 MC1(13,800円)は、SHUREのハンドヘルド・トランスミッターの交換用カプセル。BLXおよびGLX-Dシリーズ以外のSHURE製ワイアレス・システムに対応している。 指向性はスーパー・カーディオイドで、周波数特性は40Hz〜19kHz。既発機のダイナミック・マイク、V7と同様のアルミニウム・ボイスコイルを搭載しており、ボーカルの自然な収音を実現しているという。 耐久製を考慮して、ボディは亜鉛合金を使用。ハンドリング・ノイズを抑えるために、特許取得済みのショック・マウントを内蔵している。 色違いのV7 MC1/Black(13,800円)も同時に発売されていて、どちらの機種も付属の交換用ウィンド・スクリーン(ブラック)でカスタマイズ可能だ   製品情報 https://hookup.co.jp/products/se-electronics/v7-mc1  

【第18話】つまみちゃん〜兄がこんなの買えるわけがない〜

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サウンド&レコーディング・マガジン2017年11月号より掲載がスタートし、本誌としては異色のマンガ連載として各所をザワつかせている「つまみちゃん〜兄がこんなの買えるわけがない〜」。買い物は妄想だけでも楽しいですよね。物欲から生まれる想像(創造)力をサンレコは応援します(?) つまみちゃん_001 つまみちゃん_002

「MACKIE. MC-150 / MC-250」製品レビュー:50mmの大型トランスデューサーを搭載したヘッドフォン・シリーズ

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制作やリスニングに使えるMC-150 よりプロ用途に向いた設計のMC-250

両モデル共に高精度50mmトランスデューサーを搭載し、スタジオ・モニタリングなどでの使用はもちろん、リスニング用ヘッドフォンとして移動中にも臨場感のある音を再生可能。また、人間工学に基づいてデザインされたイア・パッド、ヘッド・バンドが採用され、長時間のリスニングでもストレス無く装着できる設計です。 MC-150はDJやミュージシャンのモニタリングやポータブル・オーディオ用途向けとして、MC-250はより正確なリスニングが必要なプロフェッショナル用途としてレコーディング、ライブでのミキシング向きに設計されています。低価格ながらプロフェッショナルなサウンドを実現し、コスト・パフォーマンスに優れた製品です。 見た目は、同社のスピーカーなどに共通するいわゆるMACKIE.らしいデザインです。MC-150、MC-250共に一見したところ違いはなさそうなのですが、細かく見てみるとMC-250はヘッド・ピースのロゴの部分が四角にくぼんだデザインになっており、見分けがつくようになっています。ケーブルは着脱式で、ヘッドフォン側はバヨネット式コネクターなのでひねって簡単に着脱可能。3mのストレート・タイプのケーブルが付属し、キャリー・バックも付属しているのがありがたいですね。持ち運びに別途ケースを用意しなくて大丈夫です。 実際に着けてみたところ、装着感はとても良いです。イア・パッドが程良く耳を包み込んでいて、高い遮音性ながら、圧迫感はそれほどありません。イア・パッドのクッション性が優れていて、締め付けられて耳が痛いといったことも無いです。これなら長時間の作業でもストレスが少なく済みそうですね。また密閉性も高いので、大音量の中で正確なモニタリングの必要なライブPAでも十分使えるでしょう。装着感に関してはMC-150、MC-250共にほぼ同じでした。  

音の定位感や分離感が良く リバーブを含めた奥行きもしっかりと再現

では気になる音質をチェックしていきます。できるだけいろいろな種類のソースで聴き比べてみましょう。最初にダフト・パンクのアルバム『ランダム・アクセス・メモリーズ』をMC-150で試聴。音が出た瞬間、低域の存在感に驚きました。キックとベースがしっかり前に出ていて、重厚なサウンドです。高域成分もちゃんと出ていますが、何といっても低域の質感が良いと感じました。DJやエレクトロニック系のミュージシャンなど、低域重視の方にはお薦めです。 MC-250でも試聴しました。タイトで切れの良いサウンドで、低域から高域までフラットにバランス良く出ている印象です。高域の解像度が非常に高く、シンバルやハイハットの細かいニュアンスもしっかり再生されています。リファレンス・モニターとしても十分な音質だと感じました。 次にピアノ曲、ドビュッシーの「月の光」を試聴。MC-150はとても心地良く、良い意味で“聴き流せる”サウンドだと感じました。ピアノの高域のタッチもキツく感じず、移動中や少し落ち着きたい休憩中など、BGMとして音楽を聴くのにとても相性が良いと思います。このまま眠ってしまいたい衝動にかられました。それに対してMC-250のサウンドは演奏のタッチや強弱がち密に聴こえてきて、一つ一つの音が立ち上がり、演奏の間に意識が研ぎ澄まされ、集中と緊張が高まっていく……音楽に没頭していくような感覚になります。音源を正確に再生しているからこそ、こういう感覚になるのでしょう。繊細な音楽も非常に高いレベルで再現していると感じました。再生するヘッドフォンによって音楽の印象はこんなにも変わるんだということをあらためて認識させられます。 もう1曲、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバム『ダンス・トゥ・ザ・ミュージック』を試聴。古い作品なので、普通のリスニング環境で現代の曲と比べると、低域が少し物足りない感じがするはずですが、MC-150で聴くと全くそういった印象は無く、ちょうど良い低域の質感で再生されます。このアルバムは音像定位も特殊で、ホーン・セクションとドラムが左に、ギターやシンセなどのメロディが右に、ボーカルとベースがセンターに位置しているのですが、その音の定位感や分離感がとても良い印象でした。MC-250は、より左右の音像の広がりが増し、リバーブを含めた奥行きまでしっかりと再現。全帯域においてバランスが良く、やはり再現性が高いと感じます。曲の編集ポイントまで気になってしまいますね。 かれこれ3時間ほどMCシリーズのヘッドフォンを着けながら原稿を書いていましたが、耳が痛くなるなどのストレスは感じませんでした。サウンドのクオリティが非常に高く、装着性に優れたコスト・パフォーマンスの素晴らしいヘッドフォン・シリーズだと思います。   [caption id="attachment_78507" align="alignnone" width="300"]▲付属のキャリー・バッグ。MC-250、MC-150ともに折りたたみ可能なデザインになっているので、コンパクトに持ち運びが可能だ ▲付属のキャリー・バッグ。MC-250、MC-150ともに折りたたみ可能なデザインになっているので、コンパクトに持ち運びが可能だ[/caption] [caption id="attachment_78508" align="alignnone" width="246"]▲3mストレート・ケーブルとフォーン変換アダプターも同梱されている ▲3mストレート・ケーブルとフォーン変換アダプターも同梱されている[/caption]   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より)  

「GRACE DESIGN M801MK2」製品レビュー:リボン・マイク・モードを備えパラレル出力に対応する8chマイクプリ

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2dBのステップ・ゲインを採用 入力インピーダンスの切り替えが可能

M801MK2は、基本的に非常にシンプルなモデルです。入出力端子はマイク・インプット(XLR)とライン・アウトプット(XLR)、パラレル・ライン・アウトプット(XLR)がそれぞれ8系統。パラレル出力によってさまざまな状況に対応できるのは、非常にありがたいです。 操作子はゲインのつまみ、48Vファンタム電源、フェイズ、PAD(−20dB)、リボン・マイク・モードのRBNスイッチを装備。これらが8ch分用意されていて、ピーク・インジケーターも備わっています。 [caption id="attachment_78519" align="alignnone" width="650"]▲2dBステップ仕様のゲインのつまみがフロント・パネルにスタンバイ。下のスイッチ群は、左から48Vファンタム電源、フェイズ、PAD(−20dB)、リボンマイク・モードのRBN。リボン・マイク・モードは、ゲインが10dB上がり⼊⼒インピーダンスが20kΩになるほか、マイク保護のために48Vファンタム電源を無効にする ▲2dBステップ仕様のゲインのつまみがフロント・パネルにスタンバイ。下のスイッチ群は、左から48Vファンタム電源、フェイズ、PAD(−20dB)、リボンマイク・モードのRBN。リボン・マイク・モードは、ゲインが10dB上がり⼊⼒インピーダンスが20kΩになるほか、マイク保護のために48Vファンタム電源を無効にする[/caption] 18〜64dBのゲインは、2dBごとのステップ仕様。連続可変仕様とは異なりリコールが効くので、これだけでかなりプロ用機器であることがうかがえます。 ピーク・インジケーターは緑色が−14dBで点灯し、+16dBで赤色に点灯します。これは出荷時の値で、機器の内部でチャンネルごとのスレッショルド・レベルが調整可能です。これもプロ用機器ならではの配慮と言えるでしょう。  そして気になるリボン・マイク・モード。ゲインが10dB増幅され、マイクの破損を防ぐために48Vファンタム電源が供給できないようになります。さらに、入力インピーダンスが8.1kΩ(PAD使用時は1.3kΩ)から、20kΩという非常に高い値に変化。これによりリボン・マイクやダイナミック・マイクが、本来のポテンシャルを最大限に発揮できるわけです。リボン・マイク・モードによってインピーダンスを変更する機能は、近年のGRACE DESIGN製品に搭載されてきましたが、先代M801のリボン・マイク・モードにはこのインピーダンスの切り替え機能は無かったので、ここが大きなリニューアル・ポイントだと言えるでしょう。 今まで筆者は古いリボン・マイクは低めのインピーダンスで受けた方が良いと思っていたのですが、M801MK2のリボン・マイク・モードの入力インピーダンスは20kΩ。いろいろと調べた結果、コンデンサー・マイクとは違いリボン・マイクやダイナミック・マイクは、マイク・プリアンプの入力インピーダンスとのマッチングが、顕著にサウンドの違いとして表れるということが分かりました。 さらに、リボン・マイクは音源が低音域になるほどインピーダンスが増幅し、最大で1kΩにも及ぶらしいのです。マイクのインピーダンスは200〜300Ωが一般的で、NEUMANN U67やRCA 44BXなどの古いマイクは内部の配線で40Ωや60Ωという低い値に変更できるようになっているというのが筆者の知識だったので、これには非常に驚きました。筆者は最近NHK『チコちゃんに叱られる!』という、身近な疑問を専門家が解説するテレビ番組を非常に気に入っているのですが、まさにその番組のように身近なことなのに知らない真実でしたね。  

全帯域にわたって素直なサウンド スピード感のあるリボン・マイク・モード

さて、実際に現場で使用してみましょう。第一印象はビジュアルも含め、価格以上にしっかりした作りだと言うこと。操作性の良いつまみとスイッチ、そして分かりやすいパネルの表示が好印象です。 まずコンデンサー・マイクのNEUMANN U87Iでボーカルの収音を試みます。NEVE 1073と比較しても、そん色の無いしっかりとしたサウンドです。サウンドは1073のような色付けが無く、既発モデルのように素直で原音忠実なイメージ。楽器でもチェックしたところ、全帯域にわたって癖のない素直なサウンドになっています。 次は弊社スタジオ・サウンド・ダリにあるリボン・マイクのRCA 77DXでテスト。こちらもボーカルに使用して、通常モードとリボン・マイク・モードの違いを検証していきます。これは驚きで、誰もが聴いても分かるくらいはっきりとした違いがありました。リボン・マイク・モードは周波数レンジが広く、透明感やスピード感が断然優れています。楽器による違いなどの細かい話ではなく、素晴らしいの一言です。 ほかにも44BXやROYER LABS R-121、SAMAR AUDIO DESIGN VL37などのリボン・マイクでもチェックしたところ、同様の結果でした。そしてビンテージのリボン・マイクの方が違いが顕著に表れるようで、リボン・マイクならではのブーミーな低域が減り、低域自体の実像がはっきり伝わってきます。高域はハイエンドが伸びて透明感が増す印象です。 アコギでもチェックしましょう。弾く瞬間のピックが弦に当たる音の存在感とスピード感が、非常にナチュラルに感じます。ダイナミック・マイクでもリボン・マイク・モードを試してみました。リボン・マイクほどではありませんが、スピード感とエネルギー量が増すように感じられました。 1950年代のマイクが今になって本領発揮できるとは、うれしいやら情けないやら……。リボン・マイクに目を向けて製品を開発しているGRACE DESIGNに感謝します。 [caption id="attachment_78518" align="alignnone" width="650"]▲リア・パネル。入力端子は8系統のマイク・インプット(XLR)を装備する。出力端子は8系統のライン・アウトプット(XLR)に加え、パラレル・ライン・アウトプット(XLR)がスタンバイ ▲リア・パネル。入力端子は8系統のマイク・インプット(XLR)を装備する。出力端子は8系統のライン・アウトプット(XLR)に加え、パラレル・ライン・アウトプット(XLR)がスタンバイ[/caption]   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より)  

「JTS CM-8085」製品レビュー:快適な装着感を追求したヘッドセット無指向性コンデンサー・マイク

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最良の収音位置を探れるグース・ネック ヘッド・バンドに柔らかいワイアーを採用

まずはスペックから見ていこう。周波数特性は50Hz〜18kHz。インピーダンスは1.8kΩで、最大音圧レベルは130dB SPLとなっている。マイクとヘッド・バンドは別になっていて、ヘッド・バンドの左右どちらかにマイクを装着できる。XLRミニ(4ピン)端子のケーブルが付属しており、こちらもマイクから取り外し可能。別売りの変換アダプター同社MA-500を使用すれば、XLRミニ(4ピン)端子から通常のXLR端子に変換できるため、ワイアレスでの使用だけではなくワイアードでの使用にも対応している。ちなみに既発モデルのケーブルとは互換性が無いため注意しよう。 [caption id="attachment_78530" align="alignnone" width="300"]▲XLRミニ(4ピン)端子のケーブルが付属。長さは約1.5m ▲XLRミニ(4ピン)端子のケーブルが付属。長さは約1.5m[/caption] まずは音を出さずに装着。マイクはヘッド・バンドの溝に挟み込む仕様になっている。装着時には少し固く感じるが、マイクを固定してしまえば動かない安心感がある。 [caption id="attachment_78531" align="alignnone" width="300"]▲マイクを装着するヘッド・バンドの溝。マイクの装着位置を選択できるように、左右のどちらにも溝を設けている ▲マイクを装着するヘッド・バンドの溝。マイクの装着位置を選択できるように、左右のどちらにも溝を設けている[/caption] イクの先端部分は、湾曲させた状態で固定できるグース・ネック仕様となっている。息のかからない位置や声をよく拾うポイントを選ぶには非常に便利で、思ったところにぴったりと調節が効く。 耳を掛けるイア・フック部は可変型ではないため長さの調節はできないが、筆者にはちょうど良かった。かなり快適な装着感だ。かつてはワイアーの締め付けがきつい製品もあったが、CM-8085には柔軟性の高いワイアーが使われているので、大半の人はサイズで苦労することは無いだろう。ちなみに小さいサイズのヘッド・バンドも用意されている。 [caption id="attachment_78532" align="alignnone" width="650"]▲サイズ違いのヘッド・バンドが2つ用意されている ▲サイズ違いのヘッド・バンドが2つ用意されている[/caption] 付属のケースは、ワイアーに負荷をかけずに収納できるすっぽりと包みこんでくれる袋タイプのもので、これも良い。  

カラッとしたクリアな音色 ハウリング・マージンを稼ぎやすい

実際にナレーターに装着してもらったところ、ちょうど良いサイズ感だった。マイクとケーブルが分かれているのはとても便利で、衣服の中にケーブルを通す作業をスムーズに行える。ケーブル・ホルダーがワイアーに付いているおかげで、ケーブルを後頭部中央からまっすぐ下に垂らせた。マイクはあごくらいの位置まで調節できるので、それほど目立たない。 装着後にマイク・スタンドに立てたSHURE SM58とサウンドを比較。音量感はまるでそん色が無かった。SM58の方が音の太さはあるが、一方CM-8085はカラッとした音色で、クリアさで言えばこちらに軍配が上がる。 次に歩き回りながら、原稿を読んでもらった。500Hzと8kHz辺りにピークがあるように感じたが、無指向性にもかかわらずハウリング・マージンがかなり稼げることが判明。環境にもよると思うが、ピン・マイクと比べたら圧倒的な差である。 ピン・マイクはどうしても口元との距離が生まれてしまうので、高い音圧の中での使用は難しいところがある。それがヘッドセット・マイクだと口元にマイクをセットできるためハウリング・マージンが稼げる、というわけだ。この後何人かに装着してもらったのだが、全員が口元までマイクが届き、かつ圧迫感が無かったのは特筆すべきポイントであろう。 CM-8085は装着感が良く着脱が楽なので、ピン・マイクの代わりに使えるかもしれない。衣服を選ばないことも利点の一つだ。両手を使う必要がある場面でハンド・マイクから急にピン・マイクになると音圧が変わるのでPAは難しくなるが、ヘッドセット・マイクにすることでだいぶ解消される。今回はテストしていないが、単一指向性タイプのCM-808ULもある。こちらでさらにハウリング・マージンが稼げるとしたら、バンドなどでの使用も十分に可能だと思った。 プレゼンテーションなどでは両手をフリーにして話したいシーンやマイクを持ち歩きたいシーンなど、さまざまな状況がある。ヘッドセット・マイクだけだとマイクから離れられないので、例えば水を飲むときなどは不便だ。なのでスタンドに立てた有線のマイクと併用して、歩き回るときだけ生かすと使いやすくなる。話し手が手元でマイクを切り替えられるシステムを導入すれば、さらに話しやすくなるだろう。一方、話すことに夢中になってマイクから離れてしまう人も中にはいる。ヘッドセット・マイクがあればそのような場合でもPA側でのフォローが楽になる。 付け心地が良くコスト・パフォーマンスに優れているので、ミュージカルなど多数必要になる場合の選択肢にも入るだろう。また、エアロビクスのインストラクターなどには必須のヘッド・セット・マイクだが、圧迫感の無い大きなイア・フックを採用したCM-8085はストレスが減るように思う。   (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より)  

LYNX STUDIO TECHNOLOGY Aurora(n)のAVID Pro Tools|HD用拡張ボードがリニューアル

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同社AD/DAコンバーターAurora(n)専用の、AVID Pro Tools|HDシステム用拡張ボードLT-HDが、LT-HD2(オープン・プライス:市場予想価格40,000円前後)にリニューアル。 LT-HD2を装着したAurora(n)をDigilink Miniケーブル(別売り)でPro Tools|HDX、HD Nativeに接続する。前バージョンからの変更点は最新のサンプル・クロック技術SynchroLock 2の実装で、Pro Tools 2018以降で使用した際のクロック精度が向上しているという。   製品情報 https://hookup.co.jp/products/lynx-studio-technology/aurora-n/lslot  

1列6口の電源タップFURMAN SS-6が復活

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以前販売されていた1列6口の電源タップ、SS-6(7,980円)が、このたび復活。2列6口の既発モデル、SS-6Bと同様のスペックとなっている。 対応電圧は100Vで、電源コードは4.5m。耐久性を考慮して、金属性の筐体を採用している。落雷などによる高電圧から機器を保護するサージ・フィルターや、過電流発生時にブレーカーが落ちるサーキット・ブレーカーを内蔵。さらに、電磁波や電波に起因するノイズを削減するためにEMI/RFIフィルターも搭載している。   製品情報 http://www.electroharmonix.co.jp/furman/ss6.html  

UVIの鍵盤楽器ライブラリーKey Suite Acousticが発売

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Key Suite Acoustic(22,000円)は、UVI Workstation(無償)/Falcon用のアコースティック鍵盤楽器ライブラリー。グランド/アップライト・ピアノ11種類をはじめ、チェンバロなどの打弦楽器を4種類、メタロフォンを5種類収録する。 音色を選択するMAIN画面のほか、エンベロープやフィルターといった項目を備えるEDIT画面、EQや空間系エフェクト、ステレオ・モジュレーターなどを操作するFX画面を切り替えて使用。プリセットは各楽器につき8種類を用意している。 UVI Workstation/FalconはMac/Windowsで動作し、AAX/AU/VSTに準拠。スタンドアローンでも使用できる。   製品情報 https://www.uvi.net/jp/www.uvi.net/key-suite-acoustic  

「OVERLOUD Comp670」製品レビュー:往年の名機を再現し独自機能を追加したコンプレッサー・プラグイン

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コンプレッション・カーブを調整可能 ひずみ成分を加える独自のHARMノブ

Comp670はMac/Windowsに対応し、AAX Native/AU/VSTとして動作するエフェクト・プラグインで、スタンドアローンでも使用可能です。実機の670は発売以来、今日まで長年使用されている真空管コンプレッサーで、それぞれサウンドに個体差があります。今回OVERLOUDは、Comp670を開発するにあたってロンドン、ロサンゼルス、ミラノのスタジオにある3つの670をセレクトし、第4世代DSPテクノロジーを使ってリアルにエミュレーションしているとのこと。これら3つのサウンド・キャラクターは、画面上段の左端に位置するSTUDIOノブで簡単に切り替えることが可能です。 [caption id="attachment_78543" align="alignnone" width="404"]▲STUDIOノブは、ロンドン、ロサンゼルス、ミラノのスタジオにある3モデルのサウンド・キャラクターを切り替えることができる ▲STUDIOノブは、ロンドン、ロサンゼルス、ミラノのスタジオにある3モデルのサウンド・キャラクターを切り替えることができる[/caption] その右隣には、入力レベルを調整するINPUT GAINノブとコンプレッション量をコントロールするTHRESHOLDノブ、アタック/リリース・タイムを6段階で設定できるTIME CONSTANTノブ、メーター、メーター表示をゲイン・リダクション量/インプット・レベル/アウトプット・レベル/後述するHARMの量から選択できるMETERINGノブが、それぞれL/Rのチャンネル分並んでいます。 INPUT GAINノブとTHRESHOLDノブ、TIME CONSTANTノブの間には、L/RをリンクさせるLINKボタンを装備。また、L/RとLAT/VERT(M/S)の動作モードを切り替えできるAGCノブも確認できます。また、実機ではパネルに隠れているDCスレッショルドですが、Comp670では画面下段の左端にDC THRESノブとして備えられていて便利。DC THRESノブはコンプレッション・カーブをソフト・ニーからハード・ニー間で滑らかに調整することができ、THRESHOLDノブと組み合わせれば、さまざまなかかり具合をコントロールすることができます。特筆すべきはDC THRESノブの下に搭載された、実機にはないHARMノブ。ノブを回すと、なんと信号にサチュレーション効果を与えることができるのです! [caption id="attachment_78546" align="alignnone" width="345"]▲DC THRESノブ(上)は、コンプレッション・カーブをソフト・ニーからハード・ニー間で調整可能。HARMノブ(下)は、サウンドにひずみを加えるためのものだ ▲DC THRESノブ(上)は、コンプレッション・カーブをソフト・ニーからハード・ニー間で調整可能。HARMノブ(下)は、サウンドにひずみを加えるためのものだ[/caption] この2つのノブの右側には、コンプレッション後のレベルをコントロールするL/RのOUTPUTノブや、サイド・チェイン用ハイパス・フィルターの周波数を設定するL/RのSIDECHAIN FILTERノブ、コンプレッションした音と原音のミックス量を調節するPARALLELノブ、全体の出力レベルを±15dBで可変させるOUTPUT LEVELノブを装備。2つのOUTPUTノブとSIDECHAIN FILTERノブの間にも、それぞれL/RをリンクさせるLINKボタンが備えられています。  

ナロー・レンジなロンドンや張りのあるLA サチュレーション豊かなミラノ

670をモデリングしたプラグインは数多くのメーカーから発売されていますが、Comp670の音はどうでしょうか。まずはマスターに挿し、フラットなセッティングで音を聴いてみましょう。STUDIOノブでロンドン、ロサンゼルス、ミラノとサウンド・キャラクターを切り替えていきます。恐らくモデルにした実機を忠実に再現しているのでしょうか、ロンドンでは入出力のレベルに差はありませんが、ロサンゼルスでは+1.5dB、ミラノでは+1dBレベルに違いがありました。ですので、それぞれのレベルを調整して3つのモデルを聴き比べてみました。 ロンドンはナロー・レンジに聴こえ、いかにもUKという印象。ロサンゼルスは低域と高域に張りがあり、ワイド・レンジで前に来るサウンドです。最後のミラノは、説明書によると3つの中で最も修理回数が多く、オリジナルではないパーツを使用した670がモデリングされているとのこと。そのため3モデルの中で一番サチュレーションを含んだサウンドとなっています。それぞれキャラクターが豊かなため、音色を使い分けるのがかなり楽しいと感じました! 信号をコンプレッションすると、その特徴はさらに強調されていくのですが、忘れてはいけないのがHARMノブの存在。ノブが0の位置でも、かなりひずみ成分が足されていることが、メーターでも確認できました。ここがほかの670系モデリング・プラグインと違う、最大の特徴だと言えるでしょう。 プリセットも試してみました。全体的にComp670の特徴をよく引き出している非常にいいプリセットが並んでいると思います。特に気に入ったのは、パラレル・コンプレッションをうまく使ったセッティングです。信号入力を最大にし、内部回路とトランスに過大入力することによってドライブ感を生み出しているのですが、ドライブ感は信号入力の突っ込み具合とPARALLELノブを使ったドライ/ウェットの混ぜ具合で調整するというもの。これを実機で再現しようとすると複雑なルーティングを組まなければなりませんが、Comp670なら一瞬で実現可能なのです。 先述したように、Comp670の最大の特徴はひずみを加えるHARMノブ。私は670のモデリング・プラグインを何種類か持っていますが、どのプラグインも“最高の状態の670を再現”といううたい文句が多かったと思います。しかしこのComp670は、3つのモデルを1つのプラグインに搭載するという新しいアイディア。それにより幅広い音作りが可能となっています。非常に気に入ったので、あるプロジェクトで使用していた670系のプラグインを、すべてComp670に置き換えてしまいました。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より)  

高橋健太郎〜音のプロが使い始めたECLIPSE TDシリーズ

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TD510MK2はどんな音源もフラットに再生する

タイムドメイン理論に基づき設計されたECLIPSEのスピーカー、TDシリーズ。2001年に最初のモデルがリリースされるやいなや、ミックスやマスタリングなど正確な音の再現が要求される現場で高い評価を獲得。その後ラインナップが拡充され、現在は12cmのユニットを使用したハイエンド・モデルのTD712Z MK2から、10cmのTD510MK2、8cmの508MK3、6.5cmのTD307MK2A、さらにはアンプや24ビット/192kHz対応のDAコンバーターを内蔵したほか、USB接続やAirPlayにも対応した小型モデルTD-M1まで多種多様。そんなECLIPSE TDシリーズの魅力をトップ・プロに語っていただくこのコーナー、今回登場していただくのは高橋健太郎氏だ。本誌人気連載「History of Sound & Recording~音楽と録音の歴史ものがたり~」の筆者であり、豊富な知識をベースとした音楽評論を展開する傍ら、ミュージシャン、エンジニア、プロデューサーとしても活躍している。そんな氏が自宅でTD510MK2を愛用しているとの情報をキャッチしたので、早速訪ねてみることにした

この記事はサウンド&レコーディング・マガジン2019年5月号から編集・転載したものです。  

バスレフなのに密閉型のような音がする

高橋氏は自宅近くにプライベート・スタジオを構え、そこではモニターにATC SCM10を使用している。一方、執筆作業は自宅の一室で行っており、そこに置かれるスピーカーは、実にさまざまな変遷があったそうだ。

「ROGERS LS3/5AやATC SCM10だったこともあるし、KRKやALR JORDAN、さらにはFOCALのユニットを使った自作スピーカーなど、いろいろなものを使ってきました。ECLIPSEのスピーカーについては、佐久間正英さんのdoghouse studioやオノセイゲンさんのsaidera masteringで聴く機会があって、それでTD307MK2Aを買ってみたんです。最初に自宅のリビングに置いてみたら、マスタリングのチェックができるというか、音源に何かいけないところがあるとすぐに分かった。ローは出ないスピーカーのはずなんだけど、ちょっと重苦しいなと感覚的につかめたりもする。あと、奥が見えるのも気に入りました。BECK『モーニング・フェイズ』のリバーブが奥まで見えたスピーカーは、僕のところではTD307MK2Aだけでしたね」

このように高橋氏のお気に召したTD307MK2Aは、執筆部屋用スピーカーへと格上げされることになる。ただ、低域の不足は否めなかったため、FOSTEXのサブウーファーPM Subminiを加えていたそうだ。

「本当に薄く足すくらいでしたけどね。でも、やっぱりもっと低域が欲しいなと思っていたときにTD508MK3とTD510MK2を試聴する機会があって、TD510MK2がすごく気に入ったんです。ハイもローもあんなに出るとは思っていなくて、音色的にもナチュラルで申し分なかった。ということで仕事部屋用のスピーカー変遷は終わり。もう満足というか、TD510MK2以外の選択はないですね」

そのような結果となったのは高橋氏自身にとっても驚きだった。というのもこれまでは密閉型のスピーカーが好みで、バスレフはまったく眼中に無かったからだ。

「“バスレフなだけで駄目!”みたいな人間だったんです。遅れて来る付帯音が嫌いなんですね。でも、ECLIPSEのスピーカーってバスレフなのに密閉型的な音がするというか、ディケイが長くなることがない。かつ密閉型の欠点である最初のアタックが来ない感じがTD510MK2だとちゃんと来る。TD510MK2のバスレフは低音を出すためというより圧を抜いているだけで、なるべく音を出さないようにしている感じがしますね」

フルレンジだから空間や定位が見えやすい

執筆部屋での“最終形”となったTD510MK2だが、スタジオでは先述のATC SCM10を使い続けている。モニター用とリスニング用とでスピーカーに求められるものは違う、とはよく耳にする話だが、高橋氏はどう考えているのだろうか?

「SCM10はモニターとして使い倒すのには本当にいいスピーカーです。だけど、書き物の仕事部屋ではさまざまな音源を一日中聴き続けることもあるので、SCM10だとちょっと疲れるというか、自分の集中によって聴こえ方が違ってしまう。以前使っていたLS3/5Aはモニター的な音でありつつ疲れないからすごく好きだったんだけど、ソースによって鳴り方が違い過ぎる……特に現代の速い低音には向いていないから、クラブ・ミュージック以降の音楽には使えなくなったんです。その点、TD510MK2はどんな音源でもすごくフラットで、向き不向きも無い。常にニュートラルで、集中しても聴けるし、だらっとしても聴けるというか、自分にかかる負担が少ないのがいいですね」

TD510MK2がリスニングだけではなく、モニターとしての役割も果たしていることを高橋氏は最後に強調する。

「スタジオでSCM10で作業して、それをTD510MK2で聴き直すという工程は重要です。TD510MK2はフルレンジだから空間や定位が見えやすく、“あっ、余計な作業をやっているな”というのが分かるんですね。本当にいいスピーカーだと思います」

    【PROFILE】音楽評論家として1970年代から健筆を奮う。著書に『ポップ・ミュージックのゆくえ』、『スタジオの音が聴こえる』(DU BOOKS)、小説『ヘッドフォン・ガール』(アルテスパブリッシング)。音楽制作者としても活躍しており、インディー・レーベルMEMORY LABを主宰し、プロデュースやエンジニアリングを多数手掛ける。また音楽配信サイトOTOTOYの創設メンバー/プロデューサーという一面も。    

TD510MK2

TD510MK2

■スピーカー・ユニット:グラスファイバー製10cmコーン型フルレンジ ■方式:バスレフ・ボックス ■再生周波数:42Hz~22kHz(-10dB) ■能率:84dB/W・m ■許容入力(定格/最大):25W/50W ■インピーダンス:6Ω ■角度調整:ー10°~30°(通常時)、10°~ー75°(天井面取付時) ■カラー・バリエーション:ブラック、シルバー、ホワイト ■外形寸法:255(W)×391(H)×381(D)mm ■重量:約9.5kg ■価格:120,000円(1本)   問合せ:デンソーテン http://www.eclipse-td.com/ ECLIPSE LOGO(FIX)

「AUDIOSOURCERE Demix Pro」製品レビュー:定位ベースのアルゴリズムで2ミックスを分解できる音声分離ソフト

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クラウド経由で自動分離 残った成分は手動で摘出できる

Demix Proは、分離処理の解析作業をクラウド・サーバー上で行っている。高スペックのコンピューターを所有していなくても、最新の分離アルゴリズムを利用できるというわけだ。そのため、クラウド・サーバーとインターネットを介してのデータ送受信のために、光回線やブロードバンド回線への常時接続が必要とされる。 用意された分離タイプは“モジュール”と名付けられており、Vocals、Drums、Panの3種類に分けられる。 Vocalsモジュールではボーカルとコーラスのほか、リード楽器の抽出を行える。分離精度を向上させるために、定位や登場する頻度などを設定項目から指定する。歌のリバーブ成分だけを分離することも可能だ。 [caption id="attachment_78555" align="alignnone" width="650"]▲歌やリード・パートを自動分離するVocalsモジュールの設定画面。定位や登場する頻度を選択して分離精度を上げるほか、リバーブ成分の分離やスネアのリダクションの有無も指定できる ▲歌やリード・パートを自動分離するVocalsモジュールの設定画面。定位や登場する頻度を選択して分離精度を上げるほか、リバーブ成分の分離やスネアのリダクションの有無も指定できる[/caption] Drumsモジュールはドラムの分離はもちろん、パーカッションの分離にも対応している。 本製品最大のセールス・ポイントは、Panモジュールであろう。これがギター・トラックの分割までを可能にする、優れた機能となっている。トラック数を3~7のいずれかで指定することで、L/Rと中央、そしてその中間点の楽器をセパレート。定位がはっきりと分かれている素材にぴったりの方法と言える。ベースもこのPanモジュールによって分離できる。 自動で分離し切れなかった成分はスペクトラル・ビュー、もしくはメロディ・ビューを用いて手動で分離できる。スペクトラル・ビューはスペクトラル・アナライザー上にマウス・ポインターを当てると、倍音やトランジェント成分の強いエリアがハイライトで表示されるので、それをガイドに自分で分離していく。メイン・ボーカルと同じトラックで抽出されたコーラスなどの分離は、メロディ・ビューが得意とする。 [caption id="attachment_78558" align="alignnone" width="650"]▲自動で分離できなかったメロディ・パートに有効なメロディ・ビュー。分離したいパートの音程を選択し、再度Vocalsモジュールで自動分離する。分離と再統合を繰り返して、分離の精度を上げていける ▲自動で分離できなかったメロディ・パートに有効なメロディ・ビュー。分離したいパートの音程を選択し、再度Vocalsモジュールで自動分離する。分離と再統合を繰り返して、分離の精度を上げていける[/caption] 分離結果はプロジェクトごとに保存でき、もちろんトラックの個別書き出しに対応。フォーマットはWAV、AIFF、MP3、FLACで、24ビット/192kHzまでサポートしている。  

音数の少ないロック・サウンドや ライブ・ミックスのかぶりに有効

実際にギターが左右に定位するバンドの2ミックスを分離してみた。まずVocalsモジュールで歌と歌のリバーブを分離し、残ったトラックからDrumsモジュールでドラムを摘出。最後にPanモジュールで5分割を指定して、残ったトラックから左右のギターと中央のベースを自動で分離した。クラウドへのアップロードとダウンロードにそれなりの時間がかかるが、処理で待たされる感じは少なかったように思う。 もちろん100%正確に分離できるわけではないので、各トラックを単独で使用できるかは素材次第となるだろう。しかし、今回試したようなギターが左右に定位し中央の楽器が少ないロック・バンドでは、非常にうまく分離できた。分離した後でもフェーダーの位置を0dBに戻せば、分離前とほぼ同じ音質で再生されたのには驚いた。 自動分離では、Panモジュールの精度の高さが印象的であった。ボーカルとコーラスの分離はメロディ・ビューでも賄えるが、定位に30°程度の開きがあれば先にPanモジュールを試すべきだろう。 自動分離後にスペクトラル・ビューを用いて手動での分離を試みた。このときにCtrlキー(Macでは⌘)を押しながら選択ポイントをドラッグするとその部分が再生できるのは、非常に使いやすく感じた。取り除く成分も別のトラックとして残るので、必要になったら統合できる点も使い勝手が良い。 次は作業中のライブ・ミックス素材のケアにも使ってみた。用意したのは、モニター・スピーカーからの返しを多く拾っているコーラス・パート。処理してみた結果、見事に大半のかぶりをカットできた。そのおかげで、その後のピッチ補正の検出漏れが皆無であった。特筆すべきはオケに混ぜた段階の位相の良さ。通常のようにEQで大幅に低域をカットするより、Demix Proで処理する方がずっと良い結果が得られた。ただ少々欠けてしまう部分が出てくるのは避けられないので、そのまま使うのではなく部分的に適用していくとよいだろう。 なお、処理後に書き出したファイルにもタイム・スタンプが残る仕様になっているので、ライブ音源のような長尺でもいちいち波形で位置を確認する必要が無い。元のファイルと位相関係を比べてみたが、ジャストであった。 使用した音源では分離パラメーターがほぼデフォルトのままでも良い結果が得られたが、定位の指定は音源に応じて的確に行うべきだろう。Demix Proの自動分離機能だけを取り出したDemix Essentialsもラインナップされているが、Pro版にしかないPanモジュールと手動編集機能が大きな魅力なので、まずはPro版の試用をお薦めしたい。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より)  

「ZYLIA Zylia Standard」製品レビュー:球体マイクと録音/トラック分離ソフトがセットになったパッケージ

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マイク1本で360°レコーディング 後から楽器ごとにトラックの分離が可能

ZM-1は最高24ビット/48kHzでレコーディング可能なマルチチャンネル・レコーディング・マイクロフォン・アレイ。19個ものマイク・カプセルが、手の平に乗るほどコンパクトな筐体へ球面状に搭載されていて、マイク周囲360°のサウンドを録音することが可能です。自立できる足が付いているのでそのまま机の上に置くこともできますし、高さを調整したければカメラ用の三脚などに固定することもできます。録音準備はとてもシンプルで、USBでコンピューター(Mac/Windows/Linux)と接続するだけ。専用ソフトのZylia Studioを使用して、マルチチャンネル・レコーディングを行います。 Zylia Studioを使うことで、録音後のファイルを楽器ごとに分離できます。分離後のマルチトラックはZylia Studioでレベルやパンを調整できますし、DAWなどに読み込んで、さらに音を編集していくことも可能です。 まずは録音の下準備として、ZYLIAのWebサイトからZylia Studioと、ドライバーのZM-1 Driverをコンピューターヘダウンロード&インストール。ZM-1をUSBでコンピューターに接続すると、本体周囲のリング状インジケーターが青く点灯します。ZM-1はUSBバス・パワーで駆動するため、別途電源などは必要ありません。 次にZylia Studioを起動してレコーディング・セッションの準備をしましょう(インジケーターが赤く点灯します)。Zylia Studioの最初の画面には、これまで録音したセッション・データが並びます。新しいセッションを開始するには、左上にある“Start New Session”をクリック。キャリブレーション設定画面に移行します。“Automatic Calibration”をクリックすると、楽器のアイコンが並んだ画面が表示されるので、録音ソースとなる対象の楽器などを選択していきましょう。 [caption id="attachment_78579" align="alignnone" width="650"]▲ZM-1での録音、トラックの分離/調整を行うソフト、Zylia Studio。楽器演奏をレコーディングするときは、各楽器をそれぞれ8秒間録音する。録音が終わるとキャリブレーションが自動で行われ、マイクに対するそれぞれの楽器の位置が認識される。もし位置が正しくない場合は手動で調整も可能。各アイコンの名称は任意で変更できる ▲ZM-1での録音、トラックの分離/調整を行うソフト、Zylia Studio。楽器演奏をレコーディングするときは、各楽器をそれぞれ8秒間録音する。録音が終わるとキャリブレーションが自動で行われ、マイクに対するそれぞれの楽器の位置が認識される。もし位置が正しくない場合は手動で調整も可能。各アイコンの名称は任意で変更できる[/caption] 選択し終えたら、各ソースのサウンド・チェックを行います。それぞれ8秒間録音することでキャリブレーションは完了。このキャリブレーションを行うと、ZM-1の周囲のどの位置にそれぞれの楽器が配置されているか、ZM-1に対してどれくらいの高さに位置しているのかを自動的に認識してくれます。キャリブレーションは、セッションを準備した後やレコーディングを終えた後でも再度行えるので、随時環境に最適化していくことができます。また、キャリブレーションをせずにプリセットを使うことも可能です。演奏に向いたものから、サラウンド用のプリセットまで収録されています。  

ワンクリックでトラックを分離 自動でレベルとパンが調整される

今回は、筆者が普段行っているフィールド・レコーディングや舞台公演のレコーディングの現場などでZM-1を試してみました。 [caption id="attachment_78569" align="alignnone" width="225"]▲今回、フィールド・レコーディングと舞台公演でのレコーディングでZM-1を使用した。写真のように、ZM-1はカメラ用三脚などに取り付けて設置することもできる。USBバス・パワーで駆動するため、コンピューターとZM-1のみでレコーディングを開始できるのはうれしいポイント ▲今回、フィールド・レコーディングと舞台公演でのレコーディングでZM-1を使用した。写真のように、ZM-1はカメラ用三脚などに取り付けて設置することもできる。USBバス・パワーで駆動するため、コンピューターとZM-1のみでレコーディングを開始できるのはうれしいポイント[/caption] 野外や劇場内での使用なので、キャリブレーションは行わずにプリセットを使用します。キャリブレーション画面下にある“Select a preset”から、サラウンド・サウンド向けの“4.0 Quadraphonic Sound”と“5.0 Surround Sound”というプリセットを選びました。 ZM-1本体には赤い点があり、それを前面として周囲の音源の位置を微調整することができます。 [caption id="attachment_78570" align="alignnone" width="300"]▲ZM-1にある赤い点を前面として設置。このポイントを基準にして、周囲の音源位置を調整していった ▲ZM-1にある赤い点を前面として設置。このポイントを基準にして、周囲の音源位置を調整していった[/caption] マイクの入力感度設定は特に無く、録音開始ボタンをクリックするだけですぐに録音がスタート。一度のレコーディングで最大25分まで、収録時間が25分を超えた場合は別の録音データとして自動的に新規レコーディングされます。録音開始ボタンの右側に入力音声のレベル・インジケーターが表示されているので、画面を見ながら入力が適正値になるよう音源の位置を随時確認しましょう。入力感度の調整が無いことに最初は戸惑いましたが、後ほど述べるように結果的に全く問題なく録音することができました。 レコーディング終了後、オーディオ波形の右にある円形アイコンをクリックすると、セッション作成時に設定した音源の位置に基づいてマルチトラック用のオーディオ・データに変換されます。 [caption id="attachment_78580" align="alignnone" width="650"]▲録音したデータは、波形右側のマークをクリックすると、楽器ごとにトラックが分離される(サラウンドのプリセットの場合はチャンネルごと)。分離前に再度キャリブレーション設定を変えることもできる ▲録音したデータは、波形右側のマークをクリックすると、楽器ごとにトラックが分離される(サラウンドのプリセットの場合はチャンネルごと)。分離前に再度キャリブレーション設定を変えることもできる[/caption] セパレートされた各トラックは、自動でゲイン・レベルが調整され、ステレオ再生用にL/Rのパンニングが設定されていました。もちろん、それぞれのレベルやパンニングを自分で調整していくことも可能です。録音ファイルはステレオ・データ、もしくはマルチトラックのデータとしてZylia Studio内から書き出すことができます。 [caption id="attachment_78581" align="alignnone" width="650"]▲分離されたトラックは、自動的にレベルやパンが設定される。手動で調整することも可能だ ▲分離されたトラックは、自動的にレベルやパンが設定される。手動で調整することも可能だ[/caption]  

クリアでS/Nの良い録り音 演者の動きや気配もしっかりととらえる

プレイバックして最初に驚いたのが、聴こえていた周囲のサウンドスケープにとても近い音像で録音されていたこと。レコーディング中は入力値が小さかったのか、レベル・インジケーターがほとんど振れておらず心配でしたが、録り音はとてもクリアでS/Nも良い印象です。音像の定位や分離がとても良い状態でレコーディングされています。現時点では専用のウィンド・ジャマーやローカットの設定が無いので風対策は必要ですが、鳥の鳴き声や風でそよぐ葉の音もとてもクリアに聴こえます。舞台での録音では、開場からお客さんが入り、マイクの周囲を通り過ぎる様子も明りょうに録音されており、演者の動きや気配もしっかりととらえていました。 実際にZM-1を使ってさまざまな環境や現場でレコーディングを行ってみると、USBケーブル1本でコンピューターに接続してレコーディングが始められるのはとても便利だと感じます。野外の作業でも、必要な機材が少なくて済むので移動がかなり楽でした。 Zylia Pro(120,000円)という上位版もあり、ZM-1とZylia Studioに加え、Zylia Studio Pro、Ambisonics Converter、Ambisonics Converter Pluginが付属しています。Zylia Studio ProはAAX/AU/VSTのプラグインとしてDAWに立ち上げることが可能。DAWからオーディオ入力デバイスをZM-1に設定することで、指向性などをカスタマイズすることができますし、最大22.2chのサラウンド・フォーマットにも対応します。また、Ambisonics Converter、Ambisonics Converter Pluginを使うと、録音したマルチチャンネル・データをAmbisonicsフォーマットに変換することが可能。FacebookやYouTubeなどの360°音声が制作できます。 ZM-1を使えば、例えばパブリック・スペースのサウンド・デザインを行った際に現地データを保存するために使用して、サウンドスケープの雰囲気を余すことなくそのままの状態で録音。持ち帰ってから再編集し、アーカイブとして残しておく、というような活用法も考えられるでしょう。この原稿を書いている間にもソフトウェアのアップデートがアナウンスされたりと、今後がとても楽しみな製品です。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より)  

CROWNから小規模な商業空間向けパワー・アンプの160MAが登場

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4chミキサー内蔵のパワー・アンプ、160MA(57,000円)が発表された。 出力は60W(8Ω)で、70/100Vのハイインピーダンスにも対応。入力はch1がマイク/ライン(ユーロブロック)、ch2〜4がステレオ・ライン(RCAピンL/R)という仕様になっている。ch1は15Vファンタム電源の供給が可能で、ch1に信号を入力するとほかのチャンネルの音量が小さくなるダッキング機能も実装する。 出力はモノラルで、端子はねじ止め式。出力が35W(8Ω)の3chミキサー内蔵パワー・アンプ135MA(35,000 円)や、ラック・マウント用の器具(別売り)もラインナップしている。   製品情報 https://proaudiosales.hibino.co.jp/information/4282.html  

ギター・アンプ/エフェクト・プラグインのPOSITIVE GRID Bias FX 2.0が発売

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ギター・アンプ/エフェクトをシミュレートするプラグイン、Bias FX 2.0 Elite(36,000円)が登場した。 前バージョンからアンプ、ペダル・エフェクト、ラック・エフェクトのすべてを改良。ユーザー・インターフェースが刷新され、使いやすさが向上した。トピックとしては、自分のギターの音を元にさまざまなビンテージ・ギターの鳴りを再現するGuitar MatchとレコーダーLooperの実装、ラック・エフェクトの追加などが挙げられる。また、オンライン・コミュニティのToneCloudで、ほかのユーザーが作成したプリセットをダウンロード可能だ。 アンプやエフェクト、Guitar Matchの数を絞った廉価版、Bias FX 2.0 Professional(25,741円)とBias FX 2.0 Stan dard(12,778円)もラインナップ。なお、Eliteはペダル・エフェクトをカスタマイズできるプラグイン、Bias Pedal Disto rtion/Delay/Modulationが統合されている。いずれもMac/Windowsに対応し、AAX/AU/VSTに準拠。スタンドアローンでも使用可能だ。   製品情報 https://www.minet.jp/brand/positivegrid/bias-fx2/  
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