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「MACKIE. DL32S / DL16S」製品レビュー:専用アプリでリモート操作可能なWi-Fiルーター内蔵小型ミキサー

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心地良いリッチ感のある低域 解像度が高く癖のないサウンド

まずはハード面から。DL32Sの本体サイズは447(W)×185(H)×147(D)mmで、DL32Rが3Uラック相当だったのに対し、DL32Sは4Uラック相当とサイズ・アップこそしていますが、その本体重量は4.0kgとDL32Rの8.2kgから半分以下まで軽くなっています。他社の同等チャンネル数を備えた製品と比べても飛び抜けた軽さです。インプットはXLR×16ch+XLR/フォーン・コンボ×16chの計32chあり、すべてのインプットにOnyx+プリアンプを搭載。もちろん任意のチャンネルに48Vファンタム電源を供給可能です。DL32Rと比べて、XLR/フォーン・コンボの数が増えました。16chもあれば変換プラグ不足に悩むこともまず無いでしょう。 アウトプットはXLR×10chとボリューム・ノブ付きヘッドフォン端子を装備。DL32RにあったAES/EBUアウト、モニター・アウトは無くなりました。Danteも非対応ですが、待望のWi-Fiルーターが内蔵されたことは大きなトピックです。もちろん必要に応じて外部ルーターの接続でのWi-Fiコントロールは可能になっています。 DL16Sは本体サイズ358(W)×142(H)×147(D)mmと3Uサイズ相当で、重量は2.8kg。インプットはXLR×8ch+XLR/フォーン・コンボ×8chで、アウトプットがXLR×8chと、サイズとI/O数の違い以外はDL32Sと同様です。 DL32S/DL16SともにUSB 2.0(Type B)端子も装備しており、コンピューターと接続すればマルチトラック・レコーダーとしてDAWに録音/プレイバックが可能。32イン/10アウト、16イン/8アウトのオーディオ・インターフェースとして活用することができます。 肝心の音質に関してですが、低域に心地良いリッチ感があり、それでいて高域がマスクされることもなく、なにより非常に解像度が高いと思います。プリアンプ・ゲインの上げ下げにも素直に追従し、癖のような段付きはありません。ヘッドフォン端子の音も非常に解像度が高く、あらゆる場面でのモニタリングも良好です。  

専用アプリのMaster Fader 5 同時使用での操作制限を細かく設定可能

次はDLシリーズ用コントロール・アプリ“Master Fader 5”についてです。 [caption id="attachment_77382" align="alignnone" width="626"]▲iOS/Androidデバイスで利用できる専用アプリ、Master Fader。DL32S/DL16Sのミキサーやエフェクトのコントロールが行える。最大20台のデバイスで同時に操作が可能。誤操作を防ぐため、デバイスごとに操作可能項目の制限をかけることもできる ▲iOS/Androidデバイスで利用できる専用アプリ、Master Fader。DL32S/DL16Sのミキサーやエフェクトのコントロールが行える。最大20台のデバイスで同時に操作が可能。誤操作を防ぐため、デバイスごとに操作可能項目の制限をかけることもできる[/caption] DLシリーズの魅力を語る上でMACKIE.謹製のこのアプリは外せないと思います。非常に頻繁なブラッシュ・アップを重ねてバージョン5となった同アプリは、全インプットにゲイン・コントロール、4バンド・パラメトリックEQ+HPF、ゲート、コンプレッサー、RTAを搭載。出力バスでは4バンド・パラメトリックEQ+HPF/LPF、コンプレッサー、リミッター、RTAに加え、31バンド・グラフィックEQとディレイ・タイムも設定可能と、現代のデジタル・ミキサーのスペックを網羅しています。同時に4つ使用できる内蔵エフェクトも、定番の空間系に加えてロータリー・スピーカーのシミュレーターやフィルター系など種類が大幅に増えました。現在は最大20台のiOS/Androidデバイスで同時に操作できますが、まもなくリリースされるバージョン5.1からはMac/Windowsにも対応するとアナウンスされています。 Master Faderには、任意のパラメーター領域を操作禁止にするAccess Limitingという機能があります。例えばアーティストを含めた複数人で同時に操作する際に、“モニター・バランスを操作するつもりが誤ってメインL/Rのフェーダーを動かしてしまった”のような事故を未然に防ぐことができる機能です。かなり細かく制限領域を設定できるので、より気軽にセルフ・オペレートを任せることができるようになるかもしれません。簡易イベント・スペースなどで専門知識の無いスタッフに操作を預けるケースがあったとしても、安心して任せることができるでしょう。 個人的なお気に入り機能もご紹介します。時にオペレーターは非常に几帳面になってしまう瞬間があると思うのですが、Master Faderはほとんどのパラメーター数値をタブレットのソフトウェア・キーボードを使って0.1単位で直接入力することが可能です。“リバーブへのセンドは-5.0dB!”などビシッと設定することができます。 フェーダーに触るとそのフェーダーが少し大きく表示されるのもうれしいポイントです。やはり指に直接感触がある物理フェーダーには劣りますが、このような“触ってる感”の強調はタブレット卓でオペレートする上で助けになります。また、Master Faderはタブレットの縦置きにも対応していて、縦に置くと見たこともないような超ロング・フェーダーが出現します(タブレットのサイズに依存します)。ここぞという繊細なオペレートに威力を発揮するのではないでしょうか。 このMaster Fader 5は無償でダウンロードできます。DL32S/DL16Sと接続せずにオフライン状態でも十分に操作感は体験できますので、気になる方はぜひお試しください。 DL32S/DL16Sのリリースを受けて、スペック上ではDL32Rの廉価版なのかなと最初は感じました。しかし、Danteの拡張性/冗長性を存分に生かしたシステムを構築したい人向けのDL32Rと、小回りの効く使いやすさを強調したDL32S/DL16Sというバランスの取れたラインナップになっていると思います。 最後になりますが、ユーモアのある日本語マニュアルは読んでいてとても面白かったです。ぜひご一読ください。   link-bnr3サウンド&レコーディング・マガジン 2019年1月号より)  

モンスターストライク リミックスで目指す次世代クリエイター 【第1回】XFLAGが音楽に求めるもの

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スマートフォン向けゲーム・アプリ“モンスターストライク”(以下、モンスト)のメイン・テーマをリミックスする“【XFLAG公式】リミックスコンテスト”が開催される。本誌ではその模様をお伝えしていく。初回はコンテストの概要や、プロデューサー陣の対談をお届けしよう。  

モンスターストライクとは?

tsuioku_ashura_02 世界累計利用者数4,500万人を突破したスマートフォン向けゲーム・アプリ。ゲームの内容はシンプルで、自分のモンスターを指で引っ張り、敵のモンスターに当てて倒していくというもの。最大4人までの協力プレイが可能となっており、強い敵や難しいクエストも協力してプレイすることにより突破することができたり、1人で遊ぶよりも多く報酬が得られたりするのも魅力の一つだ。今回リミックスする「モンスターストライクメインテーマ」をはじめ、多くの楽曲を作曲家の桑原理一郎が手掛けている。  

【XFLAG公式】リミックスコンテスト概要

XFLAGとは「友達や家族とワイワイ楽しめる“アドレナリン全開”のバトルエンターテインメントを創出し続ける。」をミッションに掲げ、モンストをはじめとしたサービスを手掛けるミクシィ内のスタジオである。そのXFLAGより、“サウンドクリエイターが集まり相互に交流し刺激し合う場を作りたい”という想いのもと、“【XFLAG公式】リミックスコンテスト”が開催される。

モンストのメインテーマをリミックス

武田真治がサックスで演奏するメイン・メロディと、五十嵐公太がたたくドラムのパラデータを必ず使って、リミックスを行うことが条件となる。ピッチ変更やタイム・ストレッチ、カットアップなど素材のエディットは自由だ。さらにリミックスした音源の長さやBPMにも特別な制限は無い。思う存分アレンジをしよう。

優秀作品は日本コロムビアより配信リリース

REMIX JUDGES(審査員)12名それぞれが選んだ優秀作品12曲は、日本コロムビアよりコンピレーション・アルバムとしてデジタル配信される。さらに、REMIX JUDGESと受賞者でのミーティング・イベントも開催予定だ。

リミックス音源を特設サイトにアップロード

応募作品は44.1kHz/24ビット以上のWAV形式で、下記URLからアップロードする。素材のダウンロードや詳細な情報もこちらに掲載されているので参照してほしい。 応募締め切りは2019年2月4日11:59まで  

Artists ' Comments

武田信治

[caption id="attachment_77554" align="alignnone" width="650"][Profile] 映画やドラマ、舞台で見せる独特な雰囲気で役者として活躍する一方、ミュージシャンとしても精力的に活動する。 [Profile] 映画やドラマ、舞台で見せる独特な雰囲気で役者として活躍する一方、ミュージシャンとしても精力的に活動する。[/caption]

思いもよらないようなアレンジを期待しています!

「僕のXFLAGとの出会いは、モンスト5周年イベント“ MONSTER STRIKE 5th Anniversary Party”にサックス・プレイヤーとして参加したときでした。その際、XFLAGの皆さんが音楽と真摯に向き合う姿勢を見て、さらに今回のコンテストの“若い才能に活躍の場を”というコンセプトに賛同して、サックスの音源を提供しました。思いもよらないアレンジで驚かせてもらえることを期待しています!」 ★素材 武田は、ノーマルとハードなメイン・フレーズに加え、ソロ2パターンを提供。それぞれ110/140/160BPMのものが用意されている。    

五十嵐公太

[caption id="attachment_77581" align="alignnone" width="650"]igarashienso2 [Profile] JUDY AND MARYのドラマーとして活動。バンド解散後は、GACKT、ORANGE RANGE、デーモン閣下、大槻ケンヂ、KinkiKidsほか、数多くのレコーディングやツアーに参加している。[/caption]

XFLAGを皆さんの手で驚かせてください

「たくさんの才能ある方々に、自分のドラムの音がどのように料理されるのか今から本当に楽しみです。XFLAGとの出会いは2018年の“XFLAG PARK”でのXFLAG SYMPHONYへの参加からでした。大勢の素晴らしいプレイヤーたちが、ジャンルにとらわれない壮大なアレンジのモンスターストライクの楽曲を心から楽しんで演奏した、大興奮の2日間でした。いつもさまざまな方法で僕らを楽しませてくれるXFLAGを今度は皆さんの手で驚かせてください。素晴らしい作品を期待しています!」 ★素材  五十嵐は、ポップやロック、メタル、ブルース、ジャズなどさまざまなジャンルのパターンをそれぞれ110/140/160BPMで演奏。そのほか、スネアやタム、シンバルなどの1ショット・サンプルも提供しており、パターンと合わせると素材の数は50にものぼる。 [caption id="attachment_77548" align="alignnone" width="313"]▲五十嵐が今回の素材録音で使用したドラム・セット、PEARL Masterworks。見る角度で色が変わるマジョーラ塗装が施されている ▲五十嵐が今回の素材録音で使用したドラム・セット、PEARL Masterworks。見る角度で色が変わるマジョーラ塗装が施されている[/caption]  

Producers' Cross Talk 

高津戸勇紀(XFLAG SOUND)×島津真太郎(グラウンディングラボ)

“今回のリミックスコンテストでは何をやってもいいです!”

  モンストをはじめとしたXFLAGが手掛けるコンテンツのサウンドを統括する高津戸勇紀氏と、XFLAGが行うイベントの音響/映像などをプロデュースしてきたグラウンディングラボの島津真太郎氏による対談をお送りする。今回のリミックスコンテストの仕掛け人とも言える2人の対談を通して、XFLAGが音楽に求めるものやコンテストの意義をより具体的に感じてほしい。   高津戸勇紀 [caption id="attachment_77583" align="alignnone" width="313"][Profile] XFLAGサウンドチームの統括リーダー。モンストや『Fight League』などXFLAGのサウンド・コンテンツを担当するチームを牽引している。自身もクリエイター/プレイヤーであり、XFLAG作品の楽曲をロック・アレンジで披露するバンド、BURNER BROTHERSのギターも務める。 [Profile] XFLAGサウンドチームの統括リーダー。モンストや『Fight League』などXFLAGのサウンド・コンテンツを担当するチームを牽引している。自身もクリエイター/プレイヤーであり、XFLAG作品の楽曲をロック・アレンジで披露するバンド、BURNER BRO
THERSのギターも務める。[/caption] 島津真太郎 [caption id="attachment_77584" align="alignnone" width="455"][Profile] 株式会社グラウンディングラボ代表取締役社長。370万再生されたモンスト5周年記念イベントの音響/映像の監修など、XFLAG主催イベントなどに多数携わっている。『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語』のプロデュースも担当 [Profile] 株式会社グラウンディングラボ代表取締役社長。370万再生されたモンスト5周年記念イベントの音響/映像の監修など、XFLAG主催イベントなどに多数携わっている。『SHADOW OF LAFFANDOR ラファンドール国物語』のプロデュースも担当。[/caption]     参加者同士がコミュニケーションしたり 相互理解できる場を提供したい  

なぜ今回リミックスコンテストを行うことになったのでしょうか?

高津戸 XFLAGのサウンドチームは、モンストをはじめとする自社コンテンツの価値をサウンドの側面から高める活動を行っています。しかし、それだけではそのコンテンツありきになってしまう。何か世の中に対してサウンドチーム独自で価値を届けられることをやりたいという想いがあったんです。そこで話を進めていき、リミックスコンテストをやってみようという結論にたどり着きました。 島津 話を詰めていく中で、若いクリエイターを応援し、彼らが集まる遊び場のようなものを作っていきたいということになったんです。コンテストと聞くと堅苦しいように感じるかもしれませんが、僕たちは全くそのようにはとらえていなくて。モンストのテーマ曲をアレンジするために、音楽好きな人たちが集まり、コンテストをきっかけに、これからの音楽シーンをリードしていく人材たちが仲良くなったり、切磋琢磨したりできる機会を提供できたらいいなと思っています。 高津戸 そもそも、XFLAGを運営しているミクシィは“コミュニケーションの場を作る”をキーワードに事業を展開しています。これをサウンドという側面でやっていくにはというところで、リミックスコンテストで優劣を付けるのではなく、参加者同士がコミュニケーションできたり、相互理解をできる場所を提供できたらいいんじゃないかと考えました。

なぜ数あるXFLAGのコンテンツの内、「モンスターストライクメインテーマ」を課題曲に選んだのでしょうか?

島津 分かりやすくモンストのテーマ曲を題材にしたというだけで、コンテストで重視するのは、武田真治さんと五十嵐公太さんの素材をどういう風にアレンジ/リミックスできるのかという部分です。なので、音楽をやっている人たち全員に興味を持ってもらえるとうれいしいですね。 高津戸 モンストが目立って見えますが、ゲームはあくまで我々が提供するコミュニケーション・サービスの一部です。イベントをはじめさまざまなコンテンツに挑戦しているので、業界の壁を越えて多くの方に応募いただければと思います。

武田さんと五十嵐さんが参加されたいきさつを教えてください。

高津戸 毎年“XFLAG PARK”というゲームや音楽、スポーツなどが融合したイベントを開催していて、2018年のオーケストラ・コンテンツのテーマがロックとの融合だったんです。そのときに、ドラマーとして五十嵐さんに出演していただきました。武田さんは2018年9月に行ったモンストの5周年記念イベント“MONSTER STRIKE 5th Anniversary Party”のときに、サプライズ・ゲストととして出演してくださいました。 島津 イベントに出演いただいた上で、今のXFLAGはこういうもので、なぜ音楽で表現したいのかを説明し、それならと共鳴してくれたのが武田さんや五十嵐さんでした。   参加者に求めるものは“感性” 枠に収まらずユニークなことをやってほしい  

さまざまなミュージシャンがかかわってきた中、なぜこのお二人が演奏するサックスとドラムになったでしょうか?

島津 リミックスコンテストというと、ボーカルのメロディだけを渡して、後は自由にアレンジしてくださいというパターンが多いですが、モンストのテーマ曲はボーカルが無い。そこで、メロディ・ラインを何で奏でたらいいのかを話し合った結果、サックスにしようということになり、サックスといったら武田さんが5周年イベントで演奏してくださったので、これは良いタイミングだということでお願いしました。ただ、サックスだけだとリミックスのイメージをしづらい部分もあるので、ドラムのパターンや単音も使いながらアレンジに挑戦してもらおうということで五十嵐さんにお願いしました。

最後に、応募作品に求めるものを教えてください。

高津戸 感性ですね。テーマや素材を深く解釈した上で、自分の感性で“こんなの作りました”というものを聴かせてほしいです。原曲はインストですが、歌が入ってきてもいいと思いますし、ユニークなことをやっていただいてぜんぜん構いません。何をやっても良いです! 音楽を純粋に作っていただきたいという気持ちが大きいですね。参加者同士で刺激を与えられるような作品作りをしてもらえたらなと思いますし、僕もそれを聴くことで刺激を受けたいですね。 島津 僕も音楽の枠にとらわれないというのがすごく重要だなと思っています。バンドやソロなど形態も自由にやってほしい。自由な感性で送ってきてほしいなと思います。  

RIMIX JUDGES(審査員)

今回のリミックスコンテストでは、モンスト音楽の生みの親、桑原理一郎などの著名なクリエイターやアーティスト、そして、本誌をはじめとするメディアや企業がREMIX JUDGES(審査員)として参加する。それぞれのREMIX JUDGESがそれぞれの一番を決めるという審査スタイルだ。なお、DÉ DÉ MOUSE、近谷直之、XFLAG SOUND CREATORS2名による4つのアレンジ楽曲を、こちらから聴くことができるので、参考にしてほしい。 [caption id="attachment_77551" align="alignnone" width="468"]▲DÉ DÉ MOUSE ▲DÉ DÉ MOUSE[/caption] [caption id="attachment_77552" align="alignnone" width="313"]▲近谷直之 ▲近谷直之[/caption] [caption id="attachment_77553" align="alignnone" width="313"]▲桑原理一郎 ▲桑原理一郎[/caption] [caption id="attachment_77549" align="alignnone" width="412"]▲武田真治 ▲武田真治[/caption] [caption id="attachment_77550" align="alignnone" width="373"]IMG_8775 ▲五十嵐公太[/caption] ■ XFLAG SOUND:統括リーダー 高津戸勇紀 ■ サウンド&レコーディング・マガジン:副編集長 松本伊織 ■ sleepfreaks:代表取締役 金谷樹 ■ 日本コロムビア:プロデューサー 向山豊 ■ BARKS:編集長 烏丸哲也 ■ フェイス:サウンド・プロデューサー 吉村祐 ■ ヤマハミュージックジャパン:スタインバーグマーケィングチーム    

特設サイトhttps://xflag.com/sound-creators/remix-contest-vol1/

  サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より転載 [amazonjs asin="B07BYWGZS6" locale="JP" title="サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号"]

ギターに特化したオーディオ・インターフェースIK MULTIMEDIA Axe I/Oが登場

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Axe I/O(オープン・プライス:市場予想価格45,000円前後)はギターの録音時に便利な機能を多く備えた、2イン/5アウトのUSBオーディオI/O。Mac/Windowsに対応し、最大24ビット/196kHzをサポートする。 入力端子は2系統のインスト・イン(フォーン)と、2系統のマイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)を装備。インスト・インのch1に搭載されているZ-Tone機能は、2.2k〜1MΩの範囲で入力インピーダンスを変更できるほか、ピックアップのアクティブ/パッシブに対して適切な音響特性にしたり、プリアンプのキャラクターをPUREとJFETで切り替えられる。 出力端子は4系統のライン・アウト(TRSフォーン、フォーン)、1系統のヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)に加え、グラウンド・ループを回避する1系統のリアンプ用アンプ・アウト(フォーン)も完備。2系統のフット・コントローラー端子と、MIDI IN、OUTも備わっている。 ほかにはチューナーや48Vファンタム電源供給、ダイレクト音とDAW上の音のブレンド、ギター/ベース用アンプ・シミュレーターIK MULTIMEDIA Amplitubeのプリセット切り替えといった機能を実装している。 IK MULTIMEDIA Amplitube 4 Deluxe、T-Racksプラグイン10種、DAWソフトのABLETON Live 10 Liteをバンドル。コンソール用ソフトウェアとしてControl Panelが用意されている。 製品情報 https://www.ikmultimedia.com/products/axeio/  

測定用マイク付きのIK MULTIMEDIA ILoud MTM発表

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付属のARC測定マイクを接続し、測定した音場に合わせた特性の補正が自動で行えるモニター・スピーカー、ILoud MTM(オープン・プライス:市場予想価格43,000円前後/1台)が発表された。発売時期は2019年4月末ころを予定している。 3.5インチ径ウーファーを2基、1インチ径ツィーターを1基装備したMTM構造(ミッド・ウーファー+ツィーター+ミッド・ウーファー)で、計100WのクラスDバイアンプを採用。周波数特性は40Hz〜24kHz、最大音圧は103dB SPL(1m)を有する。 DSPを内蔵しており、自動補正のほかにも、リア・パネルにあるハイパス/ローパス・フィルターを用いてチューニングを施こすことが可能だ。 付属のスタンドは0〜20°の角度調節に対応しており、横置き用のゴム製設置台も用意されている。 製品情報 https://www.ikmultimedia.com/products/iloudmtm/  

「IN SESSION AUDIO/Taiko Creator」製品レビュー:24種の和太鼓と12種の金物などをサンプリングしたソフト音源

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一つのキーに複数サンプルをアサイン ヨレの無いアンサンブル

まずスペック面ですが、24種におよぶ和太鼓と12種の掛け声やリム・ヒットなどをサンプリング。それらがうまくマッピングされ、10個のプリセットとしてまとまっています。太鼓だけではなく、和太鼓アンサンブルに付随するさまざまな金物や掛け声などが入っているのもありがたいです。それらもプリセットを選ぶと太鼓と一緒にアサインされます。ベロシティ・レイヤーは7段階、ラウンド・ロビン7種と申し分ありません。 鳴らしてみて分かったのですが、太鼓のアンサンブルをレコーディングする方式ではなく、一つのキーに太鼓のサンプルを複数アサインしてアンサンブルとして鳴らしています。アンサンブルをそのまま録音したサンプルはそのまま打ち込むとタイミングがヨレてしまったりすることがあるのですが、Taiko Creatorは1つの太鼓のサンプルごとにタイミングのズレを出しているため、そういったことはありませんし、リアルタイムでの打ち込みが非常にやりやすいです。弾いていてすぐにそれっぽさが出せるため、ずっと弾いていられます。  

オリジナル・セットの作成が可能 便利なMIDIライブラリーも用意

早速仕事で使ってみたのですが、バトルもののBGMなどでリズム・パターンが素早く構築できました。ワンフィンガーでループが鳴るタイプよりも柔軟性があるため、とても使いやすいです。 サウンドは最初からしっかり作り込まれているため、何も音作りせず、そのままオーケストラ音源の中で使えます。さらに、制作するさまざまな楽曲に合わせてライブラリー内でサウンドを調整することも可能です。 マイクは、CLOSE/MID/FAR/ROOMの4種類があります。MIDでも距離感が結構近めな印象です。HEAVYOCITY Damageなどと組み合わせても相性が良さそうだなと思いました。DRIVEをいじればひずみで太鼓の量感も調節できますし、WIDTHでプリセット全体のステレオ・イメージを調節できます。 GROUPSタブでは自分のオリジナル・セットを作ることが可能です。ここでグループを組んだサウンドを1つのキーにアサイン。1つのグループに対して9つのインストゥルメントを割り当てることができ、それぞれパンやピッチを調整することも可能です。最大で9つのドラム・グループ、6つのパーカッション・グループ(リム・ヒットなど)、2つのAUXグループ(シンバル、掛け声など)をキーボード上に展開することができます。面白いのがCREATE GROUPボタン。これを押すことによってランダムで太鼓を選んでグループ・アサインしてくれます。 [caption id="attachment_77772" align="alignnone" width="650"]▲GROUPSで、オリジナルのプリセットを作ることができる。9つのドラム・グループ、6つのパーカッション・グループ、2つのAUXグループをキーボード上に展開し、それぞれパンニングやピッチの調整が可能 ▲GROUPSで、オリジナルのプリセットを作ることができる。9つのドラム・グループ、6つのパーカッション・グループ、2つのAUXグループをキーボード上に展開し、それぞれパンニングやピッチの調整が可能[/caption] また、打楽器に詳しくない方が迷うのがリズム・パターンではないでしょうか。その楽器らしいフレーズやニュアンスというものは、なかなか一朝一夕ではできません。しかも太鼓のアンサンブルのように何人もの奏者が違うリズムをたたくパターンを打ち込もうとすると、なかなか難しいと思います。Taiko Creatorにはプリセットごとに多くのフレーズがMIDIで用意されています。同じタイプのフレーズの中にIntro/Core/Endと3パターンあるため、組み合わせて一曲持たせるのも簡単です。なかなか自分では思いつかないようなとても複雑なフレーズが入っており、聴いているだけでその上に乗るメロディやオーケストレーションが浮かんできます。和太鼓だけのMIDIのフレーズ・サンプルはいままであまり無かったのでとてもありがたいです。 [caption id="attachment_77773" align="alignnone" width="650"]▲MIDIライブラリーには20カテゴリーを収録。パターンはIntro/Core/Endがそれぞれ用意されている ▲MIDIライブラリーには20カテゴリーを収録。パターンはIntro/Core/Endがそれぞれ用意されている[/caption] これまで和太鼓の音源はいろいろなメーカーの音源をたくさん立ち上げて、その中で楽曲に合うものを別々に選んで、と手が止まることが多くありました。Taiko Creatorはそれ一つで太鼓から金物まで網羅している上、その中で音作りもできてしまうので、素早く楽曲イメージを構築するのに役立ってくれます。和太鼓のリズムを練るときには、とりあえず立ち上げることになりそうです。   link-bnr3サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より)  

「TURBOSOUND/IP300」製品レビュー:Bluetooth接続に対応するDSP内蔵2ウェイ・パワード・スピーカー

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3chのデジタル・ミキサーを内蔵 iOSデバイスでリモート操作が可能

まずは製品スペックから見ていこう。ツィーターに2インチ径のネオジム・ドライバー×4基、ウーファーに6.5インチ径のハイエクスカーション・ドライバー×2基を装備している。最大音圧レベルは122dB SPLで、周波数特性は40Hz~20kHz。高域にクラスAB、低域にクラスDのパワー・アンプを採用し、最大出力は600Wを誇る。KLARK TEKNIKのテクノロジーが採用されたパワー・アンプで、3D音響用のSpatial Sound Technologyやリバーブ・エフェクトも同社技術によるもの。またAPPLE iOSデバイスでも操作可能な、3chのデジタル・ミキサーを内蔵している。リアには2系統の入力端子(XLR/フォーン・コンボ)が備えられており、それぞれにリンク出力(XLR)を装備。 [caption id="attachment_77784" align="alignnone" width="300"]▲リア・パネル。LCDスクリーンの横にジョグ・ダイアルを装備し、その下にPROCESS/SETUP/EXT/ENTERボタンを用意。入力端子(XLR/フォーン・コンボ)と出力端子(XLR)を2基ずつ装備する ▲リア・パネル。LCDスクリーンの横にジョグ・ダイアルを装備し、その下にPROCESS/SETUP/EXT/ENTERボタンを用意。入力端子(XLR/フォーン・コンボ)と出力端子(XLR)を2基ずつ装備する[/caption] 高さが71.3cmで重さはわずか11.9kgの筐体にはトップとリアに片手で持てるよう取手が付けられており、実際に1人で簡単にスタンドへ設置できた。 まずは説明書を見ないで操作してみた。電源を入れるとLCDスクリーンが点灯するので、音色を変更するPROCESSボタン、あるいはBluetooth接続などの設定を行うSETUPボタンから各セクションに入って操作する。音量調節はアナログのボリューム・ノブではなく、ジョグ・ダイアルを使用。こちらはDSP機能の操作時に押し込むことで、決定のアクションを行う役割も担っている。 PROCESSボタンを押すと、入力A/BとBluetoothの音量をコントロールするInput Level、3バンドEQ、加えてMusic/Live/Speech/Clubのプリセットを用意するModeと、スピーカーの設置位置をStand/Wall/Cornerのいずれかに設定するPositionが表示される。PROCESS内の項目はどれもシンプルで分かりやすい作りだ。 続いてAPPLE iPhoneに専用アプリケーションのTurbo Controlをインストールし、Bluetoothでペアリングをしてリモート・コントロールを行った。Turbo Controlは入力A/Bとマスターの3系統のボリューム調節、EQ調節、ModeとPositionのプリセット切り替え、LCDスクリーンのバック・ライトのオン/オフが制御できる。入力A/Bにはリバーブをかけることも可能だ。 [caption id="attachment_77786" align="alignnone" width="496"]▲BluetoothでIP300をリモート・コントロールできる、iOSアプリのTurbo Control ▲BluetoothでIP300をリモート・コントロールできる、iOSアプリのTurbo Control[/caption] またIP300同士をBluetoothでリンクすることで、ステレオ・コントロールに対応。iPhoneとスピーカー1本は簡単にペアリングできたが、ステレオ・リンクはブレットを介さずスピーカー同士でペアを組むことになっており多少手こずった。しかし、説明書を読めば容易であった。 Turbo Controlは項目の数値表記が無いため、値を動かしてから元の設定に正確に戻すには、LCDスクリーンを確認しなければいけない。またステレオ・リンクにした際に入力A/Bの音量調節がリンクできれば、ミキサー無しでセットアップができて便利だったように思う。しかし、ステレオという発想ではなくエリア・カバーの区分けで管理すると考えると、各スピーカーが独立している方がかえって良いかもしれない。  

中高域に特徴があり定位感が良い 中小規模なら十分なエリア・カバー

まずはスタジオ・ブースにてペアでサウンド・チェックを試みた。一言で言うならば、定位感が良い。縦に並んだ2インチ径のツィーター4基が、左右に向けて交互に装備されていることに起因するのかもしれない。120°のカバレージを有する本機は、部屋のすべてのスペースで死角が無かった。特筆すべきは裏側の音が非常にクリアなこと。ダクトが付いていたがブーミーな周波数帯域はほとんどなく、それは横側に関しても同様の印象であった。TURBOSOUND特有の中高域がギラっとした音色を有しながらも、全体としてクリアなサウンド。音量を少し抑えても中高域が聴こえやすかった。 次に約30人が入ったスタジオで、声とBGMを再生。ModeでMusic、PositionでStandを選択してコンソールで少し低域を処理したのだが、十分なエリア・カバーとパワーを発揮してくれた。音楽を大音量で鳴らすには少し低域が物足りないため、同シリーズのサブローを追加するのもいいだろう。 Modeはそれほど極端に音色変化が無い点が良い。それぞれのプリセットを比べると“少し変わったかな?”と思う程度だ。基本設定からそれほど音色を変えずとも、さまざまなシーンに対応できるようにという設計意図を感じる。配置位置を指定するPositionも試したが、原音を損なわない範囲にとどめているように思える。 IP300はスタンド使用のみならず壁に常設したりテーブルに乗せるなど、多くの用途で使用できそうだと感じた。カフェや中小規模のイベントなどのエリア・カバーには最適だ。定位感がしっかりしているので、トークを中心としたイベントなどでも活躍するだろう。簡易的ではあるがスマートフォンやタブレット端末によるリモート・コントロールは、テレビのリモコンを触るような感覚でボリューム調節ができて便利だと感じた。広いエリアで複数のIP300を設置するような場合でも歩きながら調節できるため、良い音響環境が作れそうだ。操作が簡単なので、死角のコントロールを音響専門のスタッフ以外にやってもらう、といった使い方も良いだろう。   link-bnr3サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より)  

「ZOOM/Q2N-4K」製品レビュー:4K画質&24ビット/96kHz対応のハンディ・ビデオ・レコーダー

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画角150°の広角レンズと XYステレオ・マイクを装備

まず目を引くのは中心の大きなレンズ。明るさF2.8、画角150°の広角レンズは、5段階まで画角を調節できる。既発品Q2Nとの大きな違いは4K画質で撮影できるところだが、従来のようにHD画質での撮影にも対応。音声だけを録音するリニアPCMレコーダーとしても機能する。 次に注目したのは上部に装備するXYステレオ・マイク。最大音圧レベル120dB SPLを持つこのマイクが、“ミュージシャンのための4Kカメラ”である最大の特徴だろう。フォーマットは最高で24ビット/96kHz WAVをサポートする。 LCD画面が背面にスタンバイ。その周辺に6種類の設定ボタンを搭載する。こちらを押していくとプリセットが切り替わっていき、記録フォーマットをはじめオート・ゲイン、ローカット、撮影シーンなど多くの設定が行える。録音/再生や電源のオン/オフもこちら側でコントロールする。 [caption id="attachment_77797" align="alignnone" width="431"]▲本体背面にLCDを装備。その周辺には設定用のボタンが備えられており、手前左からPOWER/PLAY、REC、SETTING/EXITボタンが並ぶ ▲本体背面にLCDを装備。その周辺には設定用のボタンが備えられており、手前左からPOWER/PLAY、REC、SETTING/EXITボタンが並ぶ[/caption] 本体左側に出力ボリュームと外部入力用のEXTイン(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)を装備。反対の右側には入力ボリュームに加え、MicroHDMI端子とコンピューター接続用のUSB端子を用意する。コンピューターにつないでmicroSDカード・リーダーや、USBマイクとしても使用できる。底面には単三電池×2本とmicroSDカードを収納するスペースを設けている。記録メディアはクラス10以上のmicroSD/microSDHC/microSDXCカードに対応。4K画質で撮影する際はUHSスピード・クラス3以上が必要だ。 [caption id="attachment_77801" align="alignnone" width="403"]▲本体左側は出力ボリュームとヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、外部入力(ステレオ・ミニ)を装備 ▲本体左側は出力ボリュームとヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、外部入力(ステレオ・ミニ)を装備[/caption] [caption id="attachment_77802" align="alignnone" width="398"]▲本体右側には入力ボリュームに加えて、USB端子とMicroHDMI端子を搭載している ▲本体右側には入力ボリュームに加えて、USB端子とMicroHDMI端子を搭載している[/caption]  

映像に対して自然な定位感と音の広がり ベースの低域までしっかり収音

今回はリハーサル・スタジオでのバンド演奏と、スタジオのロビーでのオフショットを撮影することにした。まず驚いたのは、LCD画面に映された映像が思っていた以上に広いこと。最大150°の画角と分かってはいたが、これが予想以上に広い範囲を映す。スタジオという限られた空間でも、バンド・メンバー全員を映すのに十分な画角だった。 次に印象的だったのが設定が簡単なこと。LCD画面に表示されている設定項目と物理ボタンが隣り合っているため、感覚的に設定できる。細かい数値などを設定する必要はなく、瞬時にその場に適した設定にできる作りになっている。起動してから録画を始めるまで、3分もかからないだろう。 スタジオ内の照明が少し暗めだったので、シーン機能で映像の明るさを調整した。シーン機能は映像の明るさと色調を調整する機能で、プリセットにJazz ClubやDance Club、Concert Lightなど、ミュージシャンにはなじみ深い場所の設定が多くあって好印象だ。次に入力ゲインを調整した。本体右側に付いているダイアルでも調整できるが、自動で調節してくれるオート・ゲイン機能も備わっている。プリセットが3種類用意されており、今回はバンド演奏を収録するためCONCERTを選んだ。 実際に4K画質、24ビット/96kHzで1時間ほどリハーサルを録画したので、動画を確認してみる。カード・リーダー・モードにした本体をUSBケーブルでコンピューターに接続して、動画を転送した。 気になる動画のクオリティだが、まず音質に感動した。動画の感想として音質が最初に出てくるのは変に感じるかもしれないが、ほかの小型ビデオ・カメラに比べて圧倒的に音が良く、映像と違和感の無い定位感と音の広がりで収録されている。24ビット/96kHzの細やかさが感じられる自然なサウンドで、オート・ゲインで調整された音量もちょうどいい。ベースの低域をしっかり拾っており、ビデオ・カメラで撮った映像にありがちな音やせは感じられない。“さすがPCMレコーダー単体でも利用できるモデル”といったところだ。 映像も4K画質なだけあって、コンピューターのモニターで拡大しても十分奇麗に写っている印象。スタジオが暗かったせいか映像に若干のざらつきはあるが、このサイズのカメラとしては十分な品質だろう。 次にロビーにてオフ・ショットを撮影した。明るい場所のためか、スタジオ内よりかなり鮮明な映像に。オート・ゲインをMEETINGにしたのだが、適切なレベルで録れていた。 小型ビデオ・カメラとハンディ・レコーダーの長所を併せ持ち、画質と音質に加え操作性まで良いという、期待以上の製品だった。ライブやリハーサルを撮影するためにカメラを買おうとしているなら、ぜひQ2N-4Kを検討してみてはいかがだろうか。価格も非常にお求めやすい。今回は試せなかったがUSBマイクとしても使用できるため、近年のトレンドになりつつあるライブ映像の生配信にも使えそうだ。   link-bnr3サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より)  

「NATIVE INSTRUMENTS/Traktor Pro 3」製品レビュー:タイム・ストレッチとピッチ・シフトの音質が向上したDJソフトウェア

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Traktor Scratch Proの機能が統合 マスターに新たなリミッターを採用

まずTraktor Pro 2からの移行について。Traktor Pro 2を使用しているコンピューターにインストールする場合、既存のライブラリーや設定などを引き継いでくれるので、スムーズに移行できます。また、Traktor Pro 2とは別のディレクトリーにインストールされるのでTraktor Pro 2は上書きされず、今まで通りTraktor Pro 2を使用することも可能です。 以前はTraktor Pro 2とは別に、曲の頭出しやスクラッチなどをターンテーブルやCDプレーヤーでコントロールするDVS機能を備えたTraktor Scratch Proというソフトウェアあったのですが、Traktor Pro 3からDVS機能が統合されました。これでDVS機能のために追加のソフトを買う必要がなくなりましたね。Traktor Scratch Proが定めるミキサーやオーディオI/O以外でも、DVS機能が動作するようになったこともうれしいところです。 実際に起動してみるとグラフィックが新しくなっており、全体的に黒色が強くなっています。ですが、既存のユーザーを戸惑わせるような変化を遂げているわけではありません。説明書を確認せずとも機能がひと目で分かる上に、より洗練されて使いやすくなった印象です。具体的にはピッチ・フェーダーとチャンネル・フェーダーに目盛りが付いたり、チャンネル・フェーダーとマスターのレベル・メーターが大きくなったり……といった変更点が見られます。 レイアウトも変更されています。FX 1と入れ替えで表示されていたテンポとマスター・クロックのボタンが、以前ループ・レコーダーが表示されていた上段中央に大きく表示されています。その代わりに、ループ・レコーダーがFX 1と切り替えで表示されるようになったようです。 音質面も向上しました。極端なピッチやテンポの変更をしても音質の劣化が起きないように、タイム・ストレッチ/ピッチ・シフトのエンジンにZPLANE Elastique Proを採用しています。また、マスターのリミッターが改良されました。ClassicとTransparentの2種類のモードを用意していて、後者はコンプレッサーに近い自然な効きで、入力レベルが高くなってもひずまずに再生できます。マスターのレベル・メーターでリミッターがどの程度効いているのかを視覚的にとらえられるのもありがたいです。 [caption id="attachment_77817" align="alignnone" width="650"]▲マスターのレベル・メーター。赤い縦線のレベルでリミッティングがかかっている。ゲイン・リダクションのかかり具合は、レベルの上下に暗い赤色で表示される ▲マスターのレベル・メーター。赤い縦線のレベルでリミッティングがかかっている。ゲイン・リダクションのかかり具合は、レベルの上下に暗い赤色で表示される[/caption] ここからは新機能について。フィルター・ノブにエフェクトをアサインできるMixer FXが登場しました。ReverbやNoise、Dual Delay、Dotted Delay、Barber Pole……といったフィルターを含む9種類のエフェクトを用意。ノブは12時の位置がバイパスで、左右に動かすだけで効果的なアクセントを付けることが可能です。ミックス中にほかのデッキの音を邪魔することなく、DJプレイにマッチしたエフェクトを簡単に加えられます。 [caption id="attachment_77811" align="alignnone" width="550"]▲フィルターにエフェクトをアサインできる新機能Mixer FX。9種類のエフェクトを用意し、アサインするスロットを4つ設ける ▲フィルターにエフェクトをアサインできる新機能Mixer FX。9種類のエフェクトを用意し、アサインするスロットを4つ設ける[/caption] [caption id="attachment_77812" align="alignnone" width="312"]▲フィルター・ノブにアサインされたエフェクトは12時の位置がバイパスとなっていて、左右に回すとフィルターと同時にエフェクトがかかる仕様。画面では左側にBarber Pole(BRPL)、右側にDotted Delay(DTDL)をアサインしている ▲フィルター・ノブにアサインされたエフェクトは12時の位置がバイパスとなっていて、左右に回すとフィルターと同時にエフェクトがかかる仕様。画面では左側にBarber Pole(BRPL)、右側にDotted Delay(DTDL)をアサインしている[/caption] スクラッチやループに有効なFluxモードも進化を遂げました。Reverseボタンを押すと自動でFluxモードになり、解除時にほかのデッキと同期しながら、楽曲本来の位置に復帰できるようになっています。ほかにはデッキ内の波形の上に表示されるダウン・ビートのマーカーが各小節の頭だけハイライトで表示されるようになった、などの変更点があります。  

ステージ上での視認性が向上 フィルター効果を伴ったMixer FX

さて、実際に使ってみましょう! グラフィックはつまみ周辺の白っぽかった部分が黒くなったおかげで、ステージ上で画面がちらつかずにしっかり見えるようになりました。 改良されたサウンド・エンジンが気になるので、試しにTraktor Pro 3とTraktor Pro 2で同じ曲のピッチ・コントロールを-30%にして再生。Traktor Pro 2ではキックの頭がダブって聴こえるのに対して、Traktor Pro 3では非常にクリアに聴こえたので驚きました。これならテンポが大きく異なる曲でも安心してミックスできそうです。 面白かったのは何と言っても新機能のMixer FX。すべてのエフェクトはフィルター効果を伴ったもので、既存のエフェクトとは動作が全く異なります。中でも気に入ったものは、ReverbとDual Delay、Dotted Delay、Barber Poleの4種類。個人的にはこれらのエフェクトをアサインして使おうと思いました。特に良いと思ったのがBarber Pole。こちらはフィルターなのですが、連続的にカットオフとレゾナンスが変化していき、回し切ってもレベルが落ち過ぎずに効果的なざらつきをもたらせるので、ミックスの組み立てに重宝しそうだと思いました。同じくReverbもざらついた質感です。Dotted Delayはノブを回すとディレイ・タイムが変化して、楽曲にスタッカートのような効果を生みます。Mixer FXのおかげで、DJプレイが楽しくなりそうです。 使いやすさと音質面を検証した結果、非常に充実したアップデート内容でした。Traktor Pro 3はコンピューターでのDJの可能性や楽しさを、大いに広げてくれるソフトです。   link-bnr3サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より)  

宮川麿が使う Studio One 第2回

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第2回 AIによるスピーチを素材とした ボーカル曲の制作プロセス①

こんにちは、コンポーザーのMaroです。前回はPRESONUS Studio One 4の新機能を中心に紹介しましたが、今回はStudio One(以下S1)のツールや機能を駆使したクリエイティブな部分にフォーカスします。

 

パターン機能のリピート再生や Impact XTの素材スライスを活用

今回題材にするのは、J-WAVEのラジオ番組『INNOVATION WORLD』のAIアシスタントである“AI Tommy”とのプロジェクトです。AI Tommy(以下Tommy)は、J-WAVEと日本IBMがIBM WatsonというAIを使い共同開発した、史上初のラジオAIアシスタント。このTommyに歌詞を作らせ、歌わせるというのがプロジェクトの概要です。曲の制作は、プロデューサーの浅田祐介氏と筆者がコライトで進め、S1で作編曲からミックス、マスタリングまで敢行。ミックスはS1でサラウンド素材を仕込むという試みで、現代的かつチャレンジング、そしてテクノロジーを駆使した音作りを目指しました。 さて、その楽曲「INNOVATION WORLD」は“AIが歌うこと”をテーマにしているので、それを象徴するかのようにフューチャリスティックなシンセ・ポップにしました。作編曲の面から紹介すると、ビート制作にはS1のバージョン4から実装されたステップ・シーケンサー“パターン機能”が活躍。近年のダンス・ミュージックのハイハット・ワークには32分や64分などの細かい音符が多用されますが、こうしたパターンは打ち込みに手間を要するのが難点です。ところがパターン機能では、指定したステップをリピート再生できるため、スタッターのような効果も容易に実現可能。例えば、ある音符のリピート回数を“10”に設定すれば、フックのあるリズムを構築できます。 [caption id="attachment_77910" align="alignnone" width="650"]▲S1のバージョン4より実装されたステップ・シーケンサー“パターン機能”のエディター画面。各ステップを任意の回数リピート再生することができ、グリッチーなドラム・パターンなども簡単に作れます。また、リピートの回数が各ステップのオブジェクトに表示されるため、視覚的に分かりやすいのも特徴(赤枠) ▲S1のバージョン4より実装されたステップ・シーケンサー“パターン機能”のエディター画面。各ステップを任意の回数リピート再生することができ、グリッチーなドラム・パターンなども簡単に作れます。また、リピートの回数が各ステップのオブジェクトに表示されるため、視覚的に分かりやすいのも特徴(赤枠)[/caption]

ソフト・シンセを使うパートは、音色やフレーズによって異なる音源を使用。S1標準搭載のMojitoをはじめ、サード・パーティ製のものも多数使っています。いろいろなシンセを用いることで曲の倍音構成が複雑になり、ミックス時に飽和しづらくなるため、立体感のある音に。余計なイコライジングなども減りますし、新しい音色やこれまで使っていなかったシンセの良さを知ることにもつながるので、恩恵は大きいです。

間奏ではS1標準装備のドラム用ワークステーションImpact XTが活躍。浅田氏より“天からAIの神様の声が降ってくるようにしたい”と伝えられていたので、ボーカル・チョップを作成しました。Impact XTはビートのオート・スライス機能を備えており、shiftキーを押しつつサンプルをドラッグ&ドロップすると、アタックの位置でスライスし各パッドへ割り当ててくれます。MIDI鍵盤などでパッドをランダムにトリガーしてみると、簡単にボーカル・チョップが作れるわけですね。 [caption id="attachment_77911" align="alignnone" width="580"]▲バージョン3までのドラム・サンプラーImpactが進化を遂げ、Impaxt XTとなりました。機能強化が図られ、単なるサンプラーの枠を超えてドラム用ワークステーションと呼べる仕上がり。インポートしたサンプルをアタックの位置で自動スライスすることが可能で、分割されたサンプルの断片もまた自動的に各パッドへアサインされます。画面はボーカル・サンプルをインポート&スライスしたところ。パッドをランダムにトリガーしボーカル・チョップを奏でます ▲バージョン3までのドラム・サンプラーImpactが進化を遂げ、Impaxt XTとなりました。機能強化が図られ、単なるサンプラーの枠を超えてドラム用ワークステーションと呼べる仕上がり。インポートしたサンプルをアタックの位置で自動スライスすることが可能で、分割されたサンプルの断片もまた自動的に各パッドへアサインされます。画面はボーカル・サンプルをインポート&スライスしたところ。パッドをランダムにトリガーしボーカル・チョップを奏でます[/caption]   アタック検知の精度は、リズム系サンプルならほぼ完ぺきですが、声ネタでは想定した個所で分割されないこともあるため、使いたい部分のみをトリガーできるよう手動でマーカー位置を調整。波形編集は“プチッ”というノイズにシビアな作業ですが、Impact XTではゼロ・クロス・ポイントにマーカーがスナップされるので、ノイズが出にくいのも大きな利点です。 使用個所が決まったら、曲に合わせて適当に鍵盤をたたき格好良いフレーズを考えます。良い感じになったら各パッドのパンを左右に振ったり、ピッチを変えるなどして加工。近年のボーカル・チョップには1オクターブ上の高い声を取り入れたフレーズが多いため、ピッチ・トランスポーズを+12に設定した声を混ぜてみます。また要所にグライドをかけたりして、今っぽさを出しましょう。そして最後にS1純正のひずみエフェクトRed Light Distortionでローファイな質感にし、Pro EQで調整。Pro EQは、確実に使うと言っていいほどお気に入りのEQです。ざっくりと使えて効きが良く、音のカラー作りから微調整にまで対応しています。 [caption id="attachment_77912" align="alignnone" width="378"]▲ボーカル・チョップに使ったPro EQ。342Hz以下をカットしつつ2.05kHzを持ち上げて、声の特徴的な成分を押し出している ▲ボーカル・チョップに使ったPro EQ。342Hz以下をカットしつつ2.05kHzを持ち上げて、声の特徴的な成分を押し出している[/caption]  

ガイド・メロディを基準にして 話し声のタイミングやピッチを調整

「INNOVATION WORLD」の制作では、Tommyによるスピーチをいかに歌へ変えるかが課題でした。日本IBMではTommyに世界の名作のテキストを学習させ、オリジナルのスピーチを生成したそうです。筆者はそのスピーチをWAVファイルでもらい、S1上で加工して歌にしました。要領としては、タイム・ストレッチの機能やCELEMONY Melodyne Studio(別売)を使い、話し声にリズムやメロディを付けていく形です。 手順は、まずMIDI打ち込みしたガイド・メロディに合わせて、話し声のオーディオをエディット。タイム・ストレッチでタイミングをザックリと合わせていきます。タイム・ストレッチのアルゴリズムは“Solo”に設定。歌の素材に対しては、最もナチュラルな効果が得られるからです。ざっくりとリズムを合わせられたら、イベントを結合してMelodyeでピッチを調整。ガイド・メロディのピッチに合わせて、エディットしていきました。例えば“ファ・ソ・ド〜”と歌い上げる部分については、最後の“ド”がスピーチのままでは短かったので、Melodyneで音の長さをぐいっと延長。それとともに、ピッチ・モジュレーション・ツール/ピッチ・ドリフト(Melodyne Studioのみの機能)を使って奇麗なロング・トーンにしています。 [caption id="attachment_77913" align="alignnone" width="524"]▲画面上段は打ち込んで作ったガイド・メロディのトラックで、下段はAI Tommyのスピーチを収めたトラック。ガイド・メロディに合わせてスピーチのタイミングをエディットし、単なる話し声を歌に近付けていきます ▲画面上段は打ち込んで作ったガイド・メロディのトラックで、下段はAI Tommyのスピーチを収めたトラック。ガイド・メロディに合わせてスピーチのタイミングをエディットし、単なる話し声を歌に近付けていきます[/caption]  

Melodyneで表情を作ったり ハーモニー・パートを作成する

このままでも“シンセっぽい人声”という感じで悪くなかったのですが、よりヒューマンな表情を狙って“しゃくり”を付けてみます。しゃくらせたい部分をMelodyneのノート分割ツールで分け、先の方にあるノートを半音〜一音程度ピッチ・ダウン。その後、Melodyneのピッチツールでピッチ変化が滑らかになるよう調整します。これで、より歌い上げる感じが出ました。ほかに、リズミックなパートでは一つのノート内で分割を行い、母音と子音を切り離してそれぞれの位置を調整したりもしています。最終的にはこのようなワークフローで、ハーモニーのパートまで作りました。 「INNOVATION WORLD」は、9月29日と30日に六本木ヒルズで行われたフェス“J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2018”にて、Tommyのライブ・パフォーマンスとして披露されました。さて次回は、この曲のサラウンド・ミックスについて紹介できればと思います。それでは素敵なS1ライフをお過ごしください。 [caption id="attachment_77914" align="alignnone" width="650"]▲Tommyの声に使ったCELEMONY Melodyne Studio(別売)。ロング・トーンのアタマの部分をしゃくらせたかったので、ノートを分割し、先にある方を少しピッチ・ダウンさせています(赤枠) ▲Tommyの声に使ったCELEMONY Melodyne Studio(別売)。ロング・トーンのアタマの部分をしゃくらせたかったので、ノートを分割し、先にある方を少しピッチ・ダウンさせています(赤枠)[/caption]   [caption id="attachment_77915" align="alignnone" width="650"]▲Melodyne Studioのピッチ編集機能で、メイン・ボーカルからハーモニーのパートを作成。画面上の声部がメインで、下の方がハーモニーです ▲Melodyne Studioのピッチ編集機能で、メイン・ボーカルからハーモニーのパートを作成。画面上の声部がメインで、下の方がハーモニーです[/caption]   *Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

宮川麿が使う Studio One 第3回

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第3回 AIによるスピーチを素材とした ボーカル曲の制作プロセス②

コンポーザーのMaroです。前回はJ-WAVEの番組『INNOVATION WORLD』のラジオAIアシスタント=AI Tommy(以下Tommy)が歌う楽曲「INNOVATION WORLD」について、PRESONUS Studio One(以下S1)での制作工程を紹介しました。S1はサラウンド対応のDAWではありませんが、同曲のために工夫して“11.1chのサラウンド・ミックス”を行ったので、そのプロセスを解説します。

 

K-20メーターを使用し ヘッドルームに余裕を持たせる

筆者は普段からS1でミックスを行っており、32ビット・フロートで作業しています。これにより、チャンネルでレベル・オーバーしてもマスターで±0dB(0dBFS)以下にすればクリップしませんし、小さな音の解像度も上がります。マスターのレベル・メーターは通常のピーク・メーターではなく“K-20”に切り替えて作業。K20に設定すると±0dBの目盛りを10dB近くオーバーしてもひずむことがなく、ピーク・メーターのように赤いインジケーターが灯(つ)くのを気にせず作業でき、書き出し時のクリップなどの防止にもつながります。 ミックスの下準備として最初に行うのは、“ステムをエクスポート”機能による各チャンネルの書き出し。これが終わったら、各オーディオ・ファイルを新規のソング・ファイルにインポートしてミックスを始めます。曲作り用のソング上でミックスするよりもCPU負荷を減らせ、視認性も良くなるため、全体を俯瞰(ふかん)しやすくなるのです。ソフト・シンセのオーディオ化は各インストゥルメント・トラックの“オーディオトラックに変換”機能でも行えますが、一度に複数のトラックを変換すると結構な時間が必要。その点“ステムをエクスポート”なら短時間でオーディオ化できるため、作業の効率化につながります。 [caption id="attachment_77926" align="alignnone" width="440"]▲K-20のレベル・メーターは、マスターのメニュー(Macではレベル・メーターをcontrolキー+クリック、Windowsでは右クリックで出現)から呼び出すことができます(赤枠) ▲K-20のレベル・メーターは、マスターのメニュー(Macではレベル・メーターをcontrolキー+クリック、Windowsでは右クリックで出現)から呼び出すことができます(赤枠)[/caption]   [caption id="attachment_77927" align="alignnone" width="576"]▲“ステムをエクスポート”機能のメニュー画面。左側に並んでいるのは書き出す対象のチャンネルの名称です ▲“ステムをエクスポート”機能のメニュー画面。左側に並んでいるのは書き出す対象のチャンネルの名称です[/caption]  

チャンネル・センドやバスを駆使し 12台のスピーカーに音を送出

さて、今回は「INNOVATION WORLD」の11.1chミックスを作成し、10月22日〜24日に行われるTIMM(東京国際ミュージック・マーケット)へ出展することになりました。ミックスはS1の国内輸入代理店、エムアイセブンジャパン本社のサラウンド・システムを借りて実施。スピーカー構成はフロントL/Rとセンター、LFE(Low Frequency Effectの略で、サブウーファーを指す)、サイドL/R、リアL/R、トップ(天井設置)のフロントL/RおよびリアL/Rの計12台です。コンピューターはAPPLE MacBook Proを使用し、アナログ12イン/12アウトのオーディオ・インターフェースRME Fireface UFX+を接続。Fireface UFX+の各出力は、12台のスピーカーそれぞれにつなぎました。S1では前後や斜め方向の定位調整ができないため、工夫しながらミックスを行いました。ポイントをピックアップして、音作りの方法を紹介しましょう。 [caption id="attachment_77928" align="alignnone" width="626"]▲ミックスを行った環境。写真左奥にはフロントL/Rとセンター、その上にはトップのフロントL/Rが見え、手前やや左にはサイドL、右上にはトップのリアLのスピーカーが認められます ▲ミックスを行った環境。写真左奥にはフロントL/Rとセンター、その上にはトップのフロントL/Rが見え、手前やや左にはサイドL、右上にはトップのリアLのスピーカーが認められます[/caption]   [caption id="attachment_77929" align="alignnone" width="749"]▲S1のアウトをオーディオI/Oのどの出力に割り当てるのか決める画面。フロント、サイド、リア、トップのフロント、トップのリアについてはデュアル・モノラルとステレオのいずれかで出力できるようにしています ▲S1のアウトをオーディオI/Oのどの出力に割り当てるのか決める画面。フロント、サイド、リア、トップのフロント、トップのリアについてはデュアル・モノラルとステレオのいずれかで出力できるようにしています[/caption]   ●サラウンド定位の作り方 モノラルのトラックを複製し、オリジナルとコピーの各トラックを左右に振り切ると音像がセンターに定位しますよね。この現象を利用し、各スピーカーの間に音を定位させました。例えば“ElectricGuitar”というトラックは、基本的にはフロントL/Rに送っていますが、センド(AUXバス)からサイドL/Rにも出力することで、フロントとサイドの間から聴かせています。モノラル音は、こうした方法でいろいろなところに配置しました。 ●リズム隊の処理 ドラム・キットの各打楽器はバスに送り、そのバス・チャンネルからフロントL/Rに出力。また、それと同時にセンドからLFE(サブウーファー)へも送出しています。キックとスネアはセンターからも鳴らし、一歩前に出て聴こえるような定位感を創出。ハイハットとシェイカーはセンドからサイドL/Rにも送り、真横に近い位置から聴こえるようにしました。フロントL/Rのドラム音に各打楽器のサラウンド出力を混ぜることで、目の前180°からドラムが聴こえるような定位感にしています。ベースは、フロントL/RとLFEから鳴らしています。あえてセンターから出していないのは、キックとの干渉を最小限にするため。サラウンドならではのすみ分け方です。 [caption id="attachment_77930" align="alignnone" width="280"]▲ElectricGuitarのチャンネル。フロントL/Rのほか、センド(S1におけるAUX/赤枠)からサイドL/Rにも出力し、フロントとサイドの中間に音像を定位させています ▲ElectricGuitarのチャンネル。フロントL/Rのほか、センド(S1におけるAUX/赤枠)からサイドL/Rにも出力し、フロントとサイドの中間に音像を定位させています[/caption]   [caption id="attachment_77931" align="alignnone" width="562"]▲白いスピーカーはサイドとリアのもの。写真中央やや左のスピーカーはサイドRで、奥右はリアRです。リアRの上には、トップのリアRが設置されています ▲白いスピーカーはサイドとリアのもの。写真中央やや左のスピーカーはサイドRで、奥右はリアRです。リアRの上には、トップのリアRが設置されています[/caption]  

歌はフロントL/Rだけでなく センターからも鳴らし輪郭を確保

●シンセの処理 ステレオのシンセ類を3次元的に広げるために、サード・パーティ製ステレオ・イメージャーSOUNDTOYS MicroShiftをバス・チャンネルにロード。広げた音をサイドL/Rから出力するためのバス、リアL/Rから出すためのバスという2系統を用意しました。広げたいシンセは、センドからここに送っています。例えば、サビでは最も大きな広がりが欲しかったので、メインのシンセ・バッキング(スーパー・ソウ)を6つのスピーカーから出力。フロントL/Rからは原音、サイドとリアの各L/Rからは広げた音を鳴らし、包み込むようなサウンドにしました。 イントロの“Swell SynthBrass”は、出音が前から後ろへと周期的に移っていくよう設定。フロントL/Rへの出力、サイド&リアL/Rへのセンドにボリューム・オートメーションを描き、前→後ろという音の流れを一拍単位で繰り返しています。 [caption id="attachment_77932" align="alignnone" width="650"]▲“Swell SynthBrass”は、フロントL/Rへの出力(画面の2段目のトラック)、サイドL/Rへの出力(3段目)、リアL/R(4段目)にボリューム・オートメーションを描き、1拍の中で出音が前から後ろに移動するように聴かせています。赤い枠で囲んだところが、1拍分となります ▲“Swell SynthBrass”は、フロントL/Rへの出力(画面の2段目のトラック)、サイドL/Rへの出力(3段目)、リアL/R(4段目)にボリューム・オートメーションを描き、1拍の中で出音が前から後ろに移動するように聴かせています。赤い枠で囲んだところが、1拍分となります[/caption]   ●ボーカル/ボイスの処理 Tommyのメイン・ボーカルは、基本的にはフロントL/Rとセンターから出力しています。フロントL/Rだけでなくセンターからも鳴らすことで、ステレオのダブルをフロントL/Rから出しても中央音像の輪郭を保ったまま左右に広げられます。Bメロ〜サビの2声のコーラスはフロントL/R+トップから鳴らしていますが、こちらはフロントL/Rを低めに設定。音が縦に積まれたように聴こえ、ハーモニーの重なりが立体的に感じられます。 S1ではサラウンド・リバーブが使えないので、代替案としてプリディレイの値が異なるリバーブをスピーカー・ペアの数だけ用意。歌の残響が全スピーカー・ペアから聴こえるようにしつつ、プリディレイの違いで立体感を出しています。広い空間に居ながら、目の前で歌われているような響きとなりました。 今回はサラウンド・パンナーなどを使用できなかったので、音がスピーカー群を一周するような演出はできませんでしたが、歌モノをイマーシブ・オーディオとして鳴らす可能性に一つ踏み込めたと思っています。さて来月は、S1を使用したマスタリングについて書かせていただく予定です。 [caption id="attachment_77933" align="alignnone" width="171"]▲リバーブをスピーカー・ペアの数だけ用意し(赤枠)、それぞれのプリディレイを異なる値に設定しています。画面は、ボーカルを各リバーブにセンドから送っているところ ▲リバーブをスピーカー・ペアの数だけ用意し(赤枠)、それぞれのプリディレイを異なる値に設定しています。画面は、ボーカルを各リバーブにセンドから送っているところ[/caption]   *Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

宮川麿が使う Studio One 第4回

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第4回 Professionalグレードならではの 標準搭載マスタリング・プロジェクト

早いもので、筆者の連載も最終回になりました。今回はPRESONUS Studio One(以下S1)でのマスタリング手順を紹介します。筆者はマスタリングの専門家ではありませんが、クリエイター目線のマスタリングとして大切なポイントをお伝えできたらと思います。

 

各トラックのラウドネス値をそろえて EQやコンプで聴こえ方を微調整

近年はインディー/メジャーの境が薄くなり、制作スタイルも多様化しています。筆者も作曲〜マスタリングの全工程を請け負う機会が多くなりました。マスタリングと言えば、一昔前は高価な専用ソフトが必須でした。しかしS1のProfessionalグレードには、ミニマムですがDDPイメージの作成やラウドネス管理といったマスタリング向け機能が備わっており、専用のプロジェクト・ファイル上で扱うことができます。機能が厳選されているおかげで説明書が不要なほど使いやすく、筆者がS1でDDPイメージを作成したCDも数多く流通しています。 S1のマスタリング用プロジェクトでは、各トラック(個々の楽曲の2ミックス)とマスターを個別に扱うことができ、それぞれにエフェクトのインサート・スロットやボリューム・フェーダーが用意されています。音作りの手順は、各トラックの音を微調整した後にマスターでの処理を行うというもの。各トラックの微調整時は、マスターのレベル・メーターをK20に設定し、それぞれのラウドネス値が最大−20〜−18LUFSになることを目安として作業しています。聴感上、小さく思えますが、32ビット・フロートでの作業でしたら解像度の面でも大きな問題にはなりません。パツパツにレベルを突っ込んだ状態の2ミックスは非常に扱いづらいので、ヘッド・マージンには余裕を持たせるようにしています。また、これにより複数の曲を並べたときに周波数的な問題点なども見つけやすくなります。 [caption id="attachment_77942" align="alignnone" width="650"]▲S1のProfessionalグレードにはプロジェクト・ファイルというものがあり、そこでマスタリングが行えるようになっている。画面はプロジェクト・ファイルの中身で、各楽曲の2ミックス(トラック)とマスターを個別に扱うことが可能。赤枠で囲んだ部分はマスターのエフェクト・インサートで、右側にはボリューム・フェーダーの一部が見える。各トラックにも同様のコンポーネントが備わっているため、楽曲それぞれを微調整した後、マスターで一括して処理することが可能 ▲S1のProfessionalグレードにはプロジェクト・ファイルというものがあり、そこでマスタリングが行えるようになっている。画面はプロジェクト・ファイルの中身で、各楽曲の2ミックス(トラック)とマスターを個別に扱うことが可能。赤枠で囲んだ部分はマスターのエフェクト・インサートで、右側にはボリューム・フェーダーの一部が見える。各トラックにも同様のコンポーネントが備わっているため、楽曲それぞれを微調整した後、マスターで一括して処理することが可能[/caption]   エンジニア/クリエイターの方から2ミックスを受け取って作業する場合には、当然レベルにバラつきのある状態からスタートするため、トラックの“ラウドネス情報”を更新。するとプリFX(エフェクトをかける前のラウドネス情報)とポストFX(エフェクトをかけた後のラウドネス情報)の両方を表示することができます。筆者はまず、各トラックのプリFXのラウドネス値を−18LUFSに統一。波形のゲインを上げ下げして、ラウドネス値をそろえます。こうしておけば、エフェクトのかかり具合にも統一性を持たせることができます。 [caption id="attachment_77943" align="alignnone" width="125"]▲インサート・スロットの上部には、各トラックのラウドネス情報が表示される。画面内に映っているのはプリFX(EQやコンプといったエフェクトをかける前の情報)で、ラウドネス値をあらかじめ−18LUFS程度にそろえておくのが筆者流 ▲インサート・スロットの上部には、各トラックのラウドネス情報が表示される。画面内に映っているのはプリFX(EQやコンプといったエフェクトをかける前の情報)で、ラウドネス値をあらかじめ−18LUFS程度にそろえておくのが筆者流[/caption]   [caption id="attachment_77944" align="alignnone" width="637"]▲各トラックのラウドネス値を−18LUFSにそろえる際は、波形のゲインで調整。波形の上部にあるポイント(赤丸)を上下に動かすことで、ゲインをコントロールできる ▲各トラックのラウドネス値を−18LUFSにそろえる際は、波形のゲインで調整。波形の上部にあるポイント(赤丸)を上下に動かすことで、ゲインをコントロールできる[/caption]   続いては、各トラックの“聴こえ方”に違和感が出ないよう調整していきます。トラック同士を比較してみると、低域がダブついていたり、高域が出過ぎているように聴こえる個所が見つかるでしょう。そういった場合は主にEQを使って調整しますが、S1標準搭載のPro EQでも十分な処理が行えます。このPro EQには“High quality”というモードがあって、オンにするとオーバー・サンプリング処理となるので必ずチェックを入れておきましょう。Q幅を少し広めにし、気になる帯域を0.5dB単位で調整して各トラックを聴き比べていくと、少しずつなじむポイントが見つかると思います。 2ミックスにかけるEQの影響はかなり大きいので、慎重にオペレートします。筆者は必ず、EQのバイパス・ボタンをオン/オフし、EQをかけた後/かける前を繰り返し比較するようにしています。また、過剰なピークや特定の音の突出が目立つ場合は、コンプでの処理が必須。筆者はよくFABFILTER Pro-MBやIZOTOPE OzoneのDynamics(いずれもサード・パーティ製のマルチバンド・コンプ)を使います。色付けが少なく、ナチュラルにかかるからです。 [caption id="attachment_77945" align="alignnone" width="570"]▲各トラックの聴こえ方をそろえる際には、S1純正のPro EQが活躍。ほかと比べて足りなかったり出過ぎていたりする帯域があれば、Q幅を広めに取って0.5dBずつ上げていく、もしくは下げていって、ちょうど良い値を探る(赤枠) ▲各トラックの聴こえ方をそろえる際には、S1純正のPro EQが活躍。ほかと比べて足りなかったり出過ぎていたりする帯域があれば、Q幅を広めに取って0.5dBずつ上げていく、もしくは下げていって、ちょうど良い値を探る(赤枠)[/caption]  

マスターには3つのエフェクトを挿し −10〜−8LUFS前後にまとめる

さて、CD収録用の音源では、マキシマイザーによる処理が避けて通れません。厳密なルールはありませんが、筆者はマスターに“色付け用のアナログ系コンプ”“わずかにピークを抑えるマルチバンド・コンプ”“マキシマイザー”の3つを挿すことが多く、一枚のCDを通しての質感を統一します。マキシマイザーには高負荷なものが多いので、トラック単体にかけるよりもマスターに挿す方がCPUパワーの節約にもなります。 マキシマイザーのかかり具合は、LUFSやRMSといったメーターを見ながら、各トラックのフェーダーを上げ下げして微調整。リード曲やシングル曲を+0.3dB程度大き目にするなどの処理も、その際に行います。マスターのレベル感には好みがあると思いますが、筆者は−10〜−8LUFSくらいでまとめるよう調整し、クライアントに確認してもらいます。 ポーズ(曲間の無音部)やフェードの設定は、基本的には好みですが、1トラック目の冒頭には2秒間のポーズ(プリギャップ)が必ず入ります。これが無いと再生不良につながるので、仕様だと覚えておくとよいでしょう。最近はCDをプレーヤーで聴くことが減ったため、ポーズを多用する機会も減りました。0秒でつなぐことも多くなりましたが、2ミックスの無音部にはディザーのノイズやアナログ・モデリング系のノイズが入ることも多いので、頭とお尻には必ずフェードを描きます。  

DDPイメージは作成だけでなく 外部からのインポートも可能

続いては、プレスの際に必要となる情報(レーベル・コピー)を入力。画面左のトラック名の▼ボタンを押すと情報の入力欄が出演するので、書き込んでいきましょう。S1にはディスク・ナンバーの専用欄が無いため、複数枚組の場合はアルバム名の欄にディスク・ナンバーを入れるようにしています。 [caption id="attachment_77946" align="alignnone" width="176"]▲楽曲ごとの情報を入力する欄。プロジェクト画面の左側に備えられており、赤丸で囲んだ三角形のアイコンを押して表示したり閉じたりできる ▲楽曲ごとの情報を入力する欄。プロジェクト画面の左側に備えられており、赤丸で囲んだ三角形のアイコンを押して表示したり閉じたりできる[/caption]   こうして全プロセスが完了したら、画面上部のアイコンをクリックしてDDPイメージを作成(書き出し)。不具合を避けるためにも、プロジェクト・ファイルの名称などには日本語を使わず半角英数を使用するのが無難です。少し前の話ですが、S1にはバージョン3.5からDDPインポート機能が付きました。外部のDDPイメージを取り込んで、開くことのできる機能ですね。それまでは書き出しのみだったので、書き出したデータのチェックは別のマスタリング・ソフトやDDP再生プレーヤーで行うしかなかったため重宝しています。 [caption id="attachment_77947" align="alignnone" width="650"]▲DDPイメージの作成は、プロジェクト上部の“DDP”アイコンをクリックし(赤枠)、出てきた指示に従うたけで行える。ただし、プロジェクト・ファイルの名前に日本語が入っていたりすると作成そのものができない場合もあるので要注意 ▲DDPイメージの作成は、プロジェクト上部の“DDP”アイコンをクリックし(赤枠)、出てきた指示に従うたけで行える。ただし、プロジェクト・ファイルの名前に日本語が入っていたりすると作成そのものができない場合もあるので要注意[/caption]   [caption id="attachment_77948" align="alignnone" width="524"]▲DDPインポート機能を使用するには、新規プロジェクトを作成する際に立ち上がるポップアップの“トラックをDDPイメージからインポート”にチェックを入れる(赤枠)。この状態でOKボタンを押すと、コンピューター内のDDPイメージを選択する画面が開く ▲DDPインポート機能を使用するには、新規プロジェクトを作成する際に立ち上がるポップアップの“トラックをDDPイメージからインポート”にチェックを入れる(赤枠)。この状態でOKボタンを押すと、コンピューター内のDDPイメージを選択する画面が開く[/caption] 駆け足でしたが、あらためて4カ月にわたる連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。少しでも皆さんの制作のヒントになっていれば幸いです。S1を駆使して素晴らしい作品を作ってくださいね。ありがとうございました。   *Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

Gonnoが使う Studio One 第1回

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第1回 音質の良さを活用した アナログ・レコードのデジタイズ術

こんにちは、DJ/トラック・メイカーのGonnoです。僕は都内でハウス/テクノのDJを始めて、自身のレコードを海外レーベルより長年発表し、現在では東京以外の地域、もしくは海外でDJすることも多くなりました。この原稿を書いている今も、野外イベントでプレイするため沖縄に滞在中です。来月には、初めて呼ばれるインドで原稿を書いているかもしれません。

 

Console Shaperを通して 往年のトラックを今の音に近付ける

僕は実のところPRESONUS Studio Oneを導入したばかりで、長らくほかのDAWソフトで曲を作ってきました。2018年4月に発表したGONNO × MASUMURA『In Circles』はStudio One(以下S1)でミックス・ダウンしたものの、このソフトのことを既に深くご存じのスタジオ・エンジニアやコンポーザーの方々からすると、まだまだ稚拙な使い方をしているかもしれません。恐縮の限りですが、ここでは“DJ/トラック・メイカー視点”でのS1の魅力に迫りつつ、連載の後半の回ではS1オンリーでの曲作りも実践していきたいと思っています。 さて、S1導入の理由の多くに限りなくクリアな音質があると思いますが、その高音質を何に活用しようかと考えたとき、最初に思い付いたのがアナログ・レコードのデジタル・データ化でした。僕は、DJプレイに使用する音源としてレコードをデジタル化することがあります。それまで、ほかのDAWや録音ソフトの、どこかレコードの原音から外れた質感に違和感を覚えていました。そこで試しにS1を使ってみたところ、最も素直に録れると感じたのです。もちろん、レコードのデジタル化はソフトだけでなく、カートリッジ、ターンテーブル、フォノ・アンプ、ADコンバーターなどさまざまなツールによって結果が変わり、それらの相性も関係します。僕自身の機材環境は比較的安価でそろえやすく、S1もまたリーズナブルということで、以下に示す手順が皆様の参考になればと思っています。 まずターンテーブルはご多分にもれずTECHNICS SL-1200MK3D、カートリッジはORTOFON Concorde GoldかNAGAOKA MP-150を使用しています(使い分けは曲によりけりですが、大まかな基準としてハウスやテクノは前者、生音やダイナミック・レンジの広いリスニング系は後者)。そしてフォノ・アンプのALPHA RECORDING SYSTEM PPA-50からオーディオI/OのUNIVERSAL AUDIO Apollo 8 Quadを介してS1に24ビット/48kHzで録音し、録った日の日付けをトラック名にして保存。録音レベルに関してはピーク音量が−6〜−4dB辺りになるよう設定し、音量調整はフォノ・アンプで行うと良い結果になることが多いです。プラグイン・エフェクトなどのかけ録りをすることは、ほとんどありません。 [caption id="attachment_77972" align="alignnone" width="650"]▲レコードの音を録ったオーディオ・トラック。トラック名は録音した日の日付にし、ピーク・レベルが−6〜−4dB辺りになるようレコーディングしている ▲レコードの音を録ったオーディオ・トラック。トラック名は録音した日の日付にし、ピーク・レベルが−6〜−4dB辺りになるようレコーディングしている[/caption]   中には録音そのものが悪いレコードもあるので、S1のマスターに挿したエフェクトで簡易的にリマスタリングすることもありますが、その際に有用なのが純正のConsole Shaper。アナログ卓のサウンドをシミュレートするエフェクトで、バスやマスターに装備されています。例えば1990年代のハウスやテクノのレコードは、現行のものに比べてコンプレッションが浅めなので、そん色の無い音にしたいときに便利です。ただし、あまりに曲本来の音とかけ離れてしまうのは避けたいので、DriveやNoiseなどのスイッチはすべてオフにします(もちろんCrosstalkも、ほかのチャンネルの音が薄く入ってくるのでオフに)。つまり“通すだけ”という状態にするわけですが、曲を録ったチャンネルのフェーダーを上げてConsole Shaperへの突っ込み具合を変えることで、ちょっとした飽和感を作り出します。アナログ機材を使うような要領ですね。 S1純正の3バンド・コンプ=Tricompも同様に、古いハウスやテクノのレコードにほんのりかけると良い具合になることがあります。ただし、これもあくまで“ほんのり”で、Mixノブを3〜10%辺りに設定し原音にコンプ音をブレンドするのが良いでしょう。 [caption id="attachment_77960" align="alignnone" width="573"]▲S1のバス・チャンネルとマスター・チャンネルに標準装備されているConsole Shaper。ひずみやヒス・ノイズ、クロストークを与えることができるが、“通すだけ”が筆者流 ▲S1のバス・チャンネルとマスター・チャンネルに標準装備されているConsole Shaper。ひずみやヒス・ノイズ、クロストークを与えることができるが、“通すだけ”が筆者流[/caption] [caption id="attachment_77961" align="alignnone" width="650"]▲S1のArtistグレード以上に標準搭載されている3バンドのコンプ、Tricomp。中央の大きなノブでコンプレッションの深さをコントロールできる。筆者はS1に取り込んだレコードの音に使う場合、右下のMixノブ(ドライ/ウェット・バランス)を3〜10%にすることが多い ▲S1のArtistグレード以上に標準搭載されている3バンドのコンプ、Tricomp。中央の大きなノブでコンプレッションの深さをコントロールできる。筆者はS1に取り込んだレコードの音に使う場合、右下のMixノブ(ドライ/ウェット・バランス)を3〜10%にすることが多い[/caption]   最終的にはS1のLimiterやサード・パーティ製のFLUX:: Pure Limiterを適宜使い分け、最終的な音量を調整。純正プラグインではProEQやSpectrum Meterも高品質で、Limiterなどと同じくマスターにも使えるクオリティです。以上のような簡易マスタリングを経てステレオ・ファイルに書き出す流れなので、あらかじめマスター・エフェクトをセットしたテンプレート・ファイルを作っておくと便利でしょう。 [caption id="attachment_77962" align="alignnone" width="650"]▲Limiterは、S1のArtistグレード以上に標準搭載のリミッターで、マスターに挿せるほどのクオリティ。書き出すステレオ・ファイルの音量感を調整するために使用している ▲Limiterは、S1のArtistグレード以上に標準搭載のリミッターで、マスターに挿せるほどのクオリティ。書き出すステレオ・ファイルの音量感を調整するために使用している[/caption] [caption id="attachment_77963" align="alignnone" width="650"]▲こちらもArtistグレード以上に備わっているプラグインで、Spectrum Meterという名前の通り、インサートしたチャンネルの周波数分布をチェックすることができる ▲こちらもArtistグレード以上に備わっているプラグインで、Spectrum Meterという名前の通り、インサートしたチャンネルの周波数分布をチェックすることができる[/caption]  

24ビット/48kHzでエクスポート タップ・テンポ機能なども便利

続いては、ステレオ・ファイルの書き出しについて見ていきましょう。僕はデジタルの音源をプレイする際、データをUSBメモリーに入れて持って行き、PIONEER DJ CDJで再生します。そのため、USBメモリーに対応した機種で最も古いCDJ-2000で扱える最高フォーマット=24ビット/48kHzでエクスポートしています。Studio Oneでは、例えばABLETON LiveならExternal Instrument(というユーティリティ・プラグイン)を挿さないとできない“リアルタイム・プロセッシング”もチェック・ボックス一つで行えるため、よりリニアな音質で書き出せる印象です。 [caption id="attachment_77964" align="alignnone" width="620"]▲マスターの音をオーディオに書き出すときに現れる画面。エクスポートのビット&サンプリング・レートは、クラブなどに常設されている多くのプレーヤーで再生できる最も高い音質として24ビット/48kHzに設定している。この画面の右側にある“リアルタイムプロセッシングを使用”(赤枠)にチェックを入れると、リアルタイム書き出しが行え、筆者はその音質が気に入っている ▲マスターの音をオーディオに書き出すときに現れる画面。エクスポートのビット&サンプリング・レートは、クラブなどに常設されている多くのプレーヤーで再生できる最も高い音質として24ビット/48kHzに設定している。この画面の右側にある“リアルタイムプロセッシングを使用”(赤枠)にチェックを入れると、リアルタイム書き出しが行え、筆者はその音質が気に入っている[/caption]   また楽曲のテンポをあらかじめ測っておき、“テンポをオーディオファイルに書き込み”にチェックを入れつつ、そのテンポで新規ソングを作成すると便利でしょう。書き出した後のステレオ・ファイルにテンポ情報が入り、ブラウザーで閲覧したときにBPMが表示されるため、管理しやすくなります。またS1にはタップ・テンポ機能もこっそりあって、画面下部の“テンポ”という表記を曲に合わせてたたくとテンポが検出されます。DJとしても、簡単にテンポ計測できるのはうれしいです。 さて、レコードと言えば“プチッ”といったノイズが付きものですが、S1にはAVID Pro Toolsのペンシルツールのように波形そのものを書き換える機能は付いていません。そのため、ノイズ除去などはSTEFANO DAINO DSP-Quattroなどサード・パーティ製の波形編集ソフトにステレオ・ミックスのファイルを移して行っています。こうした機能が、S1に今後標準搭載されたらいいなと思っています。 今回はレコードのリマスタリングやデジタイズという斜めな視点でS1を紹介しましたが、少なくともDJの方には面白く読んでいただけたのではないでしょうか。次回は、GONNO × MASUMURA『In Circles』の制作から導入したミックス・ダウンについて、お話しできたらと思います。 [caption id="attachment_77965" align="alignnone" width="609"]▲S1にはタップ・テンポ機能も実装されている。楽曲を再生しながら、ソング画面の下部“テンポ”という文字のところ(赤枠)をマウスなどでタップすると、テンポが小数点以下4位まで検出される。録音した楽曲のテンポなども、この機能を使えばすぐにチェック可能 ▲S1にはタップ・テンポ機能も実装されている。楽曲を再生しながら、ソング画面の下部“テンポ”という文字のところ(赤枠)をマウスなどでタップすると、テンポが小数点以下4位まで検出される。録音した楽曲のテンポなども、この機能を使えばすぐにチェック可能[/caption]   *Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

BOSEが屋外用スピーカー、パワー・アンプ、プロセッサーの新製品を発表

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BOSEが2019年内に発売を予定している新製品を発表した。  

ArenaMatchアレイ・スピーカー

[caption id="attachment_64556" align="alignnone" width="483"]▲ArenaMatchアレイ・スピーカー ▲ArenaMatchアレイ・スピーカー[/caption] 屋外用アレイ・スピーカーのArenaMatchは、同社独自のDeltaQアレイ・テクノロジーを搭載。モジュールごとに指向性を変化させることで、客席エリアに合わせたカバレージを実現するとのこと。垂直指向性が10/20/40°の3モデルを用意し、内部のウェーブ・ガイドを交換することで水平指向性を60/80/100°に調整可能。計9種類のカバレージ・パターンを設定できる。 各モジュールには14インチのネオジム・ウーファーと、6つのEMB2Sチタン・ダイアフラム・ネオジム・コンプレッション・ドライバーを搭載。屋外施設での放送でも聴き取りやすい明りょうなサウンドを目指した。 IP55準拠の全天候仕様になっており、3層構造のステンレス製グリルや防水コーティングのウーファー・コーン、工業用ポリウレタンの外装コーティング、入力端子を保護するモールド加工のカバーを装備している。また、バイアンプ/パッシブ・クロスオーバーのどちらにも対応するほか、70/100Vトランス入力を備えており、システム構成に合わせた調整が可能だ。3月に発売を予定している。  

ArenaMatch Utility

[caption id="attachment_64540" align="alignnone" width="626"]i_ArenaMatch_Utility_AMU206_Right-Facing_Black_Grille_On_halfREs ▲写真上部の2機種がAMU105、下部の2機種はAMU206[/caption] ArenaMatch Utilityは、ArenaMatchアレイ・スピーカーと同等の音質をコンパクトなボディで再現したポイント・ソース・スピーカー。ArenaMatchアレイ・スピーカーと同じくEMB2Sチタン・ダイアフラム・ネオジム・コンプレッション・ドライバーを搭載している。縦/横の置き方にかかわらず指向性を保つ、ローテーション可能な高域ホーンを内蔵。IP55に準拠した全天候仕様となっている。8インチ・ウーファーのAMU108、5.25インチ・ウーファーのAMU105、8インチ・ウーファーを2つ備えるAMU208、6.5インチ・ウーファーを2つ備えるAMU206をラインナップ。3月発売予定だ。  

EX-440C / EX-12AEC / EX-1280

[caption id="attachment_64553" align="alignnone" width="700"]Bose_ControlSpaceEX ▲写真奥の最上段がEX-440C、その下がEX-12AEC。最下段がEX-1280だ[/caption] 音声会議向けに最適化されたデジタル・シグナル・プロセッサー、ControlSpace EXシリーズに3機種が追加される(2019年内に発売予定)。 EX-440Cはマイク/ライン・アナログ入力(4ch)、アナログ出力(4ch)、VolP、PSTN、Dante(16×16ch)の端子を装備。コンピューターとの接続に使うUSB(Micro-B)端子、対応するパワー・アンプとデジタル接続ができるBose AmpLink端子も用意する。また、ノイズ・キャンセルなどによって音声の明りょう度を高めるアコースティック・エコー・キャンセラー機能も内蔵しており、8chの入力に使用することが可能だ。 EX-12AECはDante(16×16ch)接続に対応。アコースティック・エコー・キャンセラー機能は12chに適用できる。 EX-1280はマイク/ライン・アナログ入力(12ch)、アナログ出力(8ch)、Dante(64×64ch)接続を備え、Bose AmpLink端子も装備。多数の入出力が必要となる場所にも対応する。 設定ソフトのControlSpace Designerでは、ドラッグ&ドロップによる直感的なコントロールでセットアップが可能。プロセスの簡略化、トラブルの軽減が見込める。  

DesignMax

Bose_DesignMax 商業施設に適したデザインと音響性能を持つスピーカー、DesignMaxは12種類のモデルで展開。2019年内の発売が予定されている。 天井埋め込み型や露出型、屋外仕様など10種類のフルレンジと2種類のサブウーファーをラインナップ。組み合わせることで、規模や環境に合わせた音響システムを構築することができる。どのモデルでもDSPやEQ処理無しで高品質なサウンドを再生可能。対応するプロセッサーやパワー・アンプでEQを設定したり、SmartBassプロセッシングを有効にすると、さらなる音質の向上が見込める。 Dispersion Alignmentシステムを搭載したモデルでは、一貫した軸外周波数特性が得られるので、空間内のどこにいてもクオリティの高いサウンドで聴くことができるとのことだ。独自のクイック・ホールド取り付け機構を採用しており、簡単に設置が可能になっているのも特徴となっている。  

PS404D / PS604D

[caption id="attachment_64544" align="alignnone" width="800"]▲写真手前、下段がPS404D。同奥の下段はPS604Dだ ▲写真手前、下段がPS404D。同奥の下段がPS604Dだ[/caption] PS404DとPS604Dは、同社のパワー・アンプ・シリーズ=PowerShareに追加される新モデル。 PS404Dは400Wを4chに分配、PS604Dは600Wを4chに分配可能だ。2機種共にDante接続(4ch)に対応しており、アナログ入力(4ch)と同時使用もできる。 Bose AmpLink端子も備え、同社のプロセッサー・ユニットとLANケーブルでデジタル接続が可能。どちらも3月に発売予定となっている。  

P21000A / P2600A / P4300A / P4300+ / P4150+

[caption id="attachment_64555" align="alignnone" width="700"]Bose_PowerSpace ▲上からP4150+、P4300+、P4300A、P2600A、P21000A[/caption] 商業施設に向いたパワー・アンプのPowerSpaceシリーズには、新たに5機種が追加される。 P21000A、P2600A、P4300AはBose AmpLinkに対応。低レイテンシーかつ非圧縮のデジタル・マルチチャンネル・オーディオを、LANケーブル1本で入出力可能だ。最大出力は、P21000Aが1,000W×2ch、P2600Aが600W×2ch、P4300Aが300W×4chとなっている。 P4300+とP4150+はDSPを内蔵したモデル。コンピューター上からブラウザ・ベースの設定ツールを使用し、レベルやディレイ、EQ、リミッターなどのコントロールが可能。同社のコントローラー、ControlCenterでの操作にも対応している。5機種とも2019年内に発売予定だ。   問合せ:ボーズ プロシステム事業部 ☎︎03-5114-2750 https://probose.jp/

VSL Vienna Ensamble Pro 7がプレオーダーを開始

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コンピューターのCPU負荷を軽減できる“ミキシング&ホスト・ツール”の新バージョン、Vienna Ensamble Pro 7のプレオーダーが開始された(プレオーダー価格:19,548円、アップグレード:10,152円、追加ライセンス:8,748円)。 プラグイン・エフェクトやインストゥルメントをDAW内ではなく、Vienna Ensamble Pro 7に立ち上げて使用することで、コンピューターのCPU負荷を分散させることができる。また、複数のコンピューターを接続し、それぞれのCPUを使ってプラグインを使用することも可能だ。エフェクト・プラグイン・バンドルのVienna Suite Proをベースとしたミキシング/エフェクト・ツールも統合されている。 バージョン4〜6では1製品につきライセンスが3つ用意されていたが、Vienna Ensamble Pro 7ではシングル・ライセンスとなった。使用するコンピューターの数に合わせたライセンスの購入が行える。 Vienna Ensamble Pro 7にはオーケストラ音源のEpic Orchestra 2.0が付属。前バージョンのEpic Orchestraに収録していたライブラリーがVienna Synchron Playerに対応し、総容量は6.2GBから73GBに増量されている。Epic Orchestra 2.0は単体でも購入が可能だ(13,100円)。   製品情報 https://sonicwire.com/product/41340  

【TASCAM Model 24】記事連動音源を公開!

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 TASCAM Model 24は、アナログ・ミキサー/デジタル・レコーダー(SDカード)/USBオーディオI/Oを一体化させた注目の一台。ライブ・ミックスとレコーディングの両方をサポートする仕上がりです。今回は、その実力をバンドtoitoitoiとエンジニア藤木和人氏にスタジオ・ライブ&ライブ・レコーディングで検証していただきました。詳細はサンレコ2019年4月号の誌上レポートをご覧ください! ※使用した録り音はModel 24のレコーダー(SDカード)のもので、それをDAWにインポートしてミックス     Featuring product TASCAM Model24 [caption id="attachment_78193" align="alignnone" width="650"]▲アナログ・ミキサー、デジタル・レコーダー、USBオーディオI/Oを組み合わせた製品。ミキサーは22インで、ch1~12がモノラルch13/14~19/20がモノラル/ステレオ両用、ch21/22は音楽プレーヤーなどに向けたステレオ入力。レコーダーはSDカード(別売)に録音する仕様で、最高24ビット/48kHzにて24trまでの同録に対応。オーディオI/OはDAWに24chの信号を入力でき、DAWからは22chを受けられる。外形寸法はサイド・パネルありで577(W)×106(H)×529(D)mm、重量は10.4kg ▲アナログ・ミキサー、デジタル・レコーダー、USBオーディオI/Oを組み合わせた製品。ミキサーは22インで、ch1~12がモノラルch13/14~19/20がモノラル/ステレオ両用、ch21/22は音楽プレーヤーなどに向けたステレオ入力。レコーダーはSDカード(別売)に録音する仕様で、最高24ビット/48kHzにて24trまでの同録に対応。オーディオI/OはDAWに24chの信号を入力でき、DAWからは22chを受けられる。外形寸法はサイド・パネルありで577(W)×106(H)×529(D)mm、重量は10.4kg[/caption]   Song Written & Performed by toitoitoi [caption id="attachment_78191" align="alignnone" width="611"]▲Model 24のチェックに協力してくれたミュージシャン。写真中央はtoitoitoiのボーカリスト岸川まき、右はギタリストのムラコシで、左はサポート・ドラマー高橋洋祐。toitoitoiは2019年3月18〜19日に渋谷WWWでの2デイズ・ワンマンを控える ▲Model 24のチェックに協力してくれたミュージシャン。写真中央はtoitoitoiのボーカリスト岸川まき、右はギタリストのムラコシで、左はサポート・ドラマー高橋洋祐。toitoitoiは2019年3月18〜19日に渋谷WWWでの2デイズ・ワンマンを控える[/caption]   Recorded & Mixed by Kazuhito Fujiki [caption id="attachment_78192" align="alignnone" width="608"]▲作曲家で、toitoitoiにはエンジニアとしてかかわる藤木和人氏。今回はModel 24のオペレートを担当し、レコーディングとミックスを手掛けた ▲作曲家で、toitoitoiにはエンジニアとしてかかわる藤木和人氏。今回はModel 24のオペレートを担当し、レコーディングとミックスを手掛けた[/caption]     [amazonjs asin="B07NMZJSR6" locale="JP" title="Sound & Recording Magazine (サウンド アンド レコーディング マガジン) 2019年 4月号 雑誌"]

JJJ×8020D〜クリエイターが愛用するGENELECモニター

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モニターを8020Dに替えたことで スピーカーから出る音が立体的になったと感じています

 40年の歴史を誇る、フィンランドのモニター・スピーカー・メーカー、GENELEC。現在のスタジオ・モニターでは主流となったアクティブ式のパイオニアとして知られる同社は、コンパクトなデスクトップ機からスタジオ用ラージ機までを手掛け、世界中のエンジニアやクリエイターから厚い信頼を寄せられている。この連載では、そんなGENELECモニターを愛用するクリエイターに、制作のパートナーとしてのモニターを語ってもらっている。今回はFla$hBackSでの活動を通してシーンに登場、近年はソロやプロデュース・ワークで活躍するMC/トラック・メイカー/DJのJJJに登場いただく。  

ベースのブースト・ポイントをEQで探りやすい

 JJJが現在のプライベート・スタジオに移って来たのは約1年前。そのタイミングで以前使っていたスピーカーからのリプレースを考え、選んだのが8020Dだった。  「以前は比較的安価な2ウェイ・モデルで、ウーファーが6インチのものを使っていました。せっかく引っ越すなら気分を変えたくて、楽器店で試聴をして感触が良かった8020Dを選びました。モニターを変えたことで、スピーカーから出る音が立体的になったと感じています 8020Dは、8000シリーズの中では2番目にコンパクトなモデル。ウーファー径はわずか4インチだが、その低域再生能力をJJJは高く評価している。  「音量をそんなに出さなくても低域が分かる感じがありますね。特に、キックとベースの関係を見ながら、EQでベースをブーストして、周波数ポイントを動かして探っていくことができるのが助かっています 実際に普段の再生音量でトラックを流してもらうと、途中から入ってくるサイン波系のベースの量感と音量バランスがはっきり分かる。  「このスタジオではある程度の音量までは出せますね。ここに移ってきた理由も、音量を気にせず作業したかったからですし。実は制作中は、オーディオI/OのRME Babyface側でTotalMixのEQでベースをカットしていることもあります。ラジカセ・チェックのように、低域が出ない環境でも格好良くベースやキックが聴こえるようにするためです。でも、最終的にはそのEQをバイパスしてベースの出方を調整していきます。そのときに8020Dだと、その量感が確認できるんです」  ちなみに8020DのEQ設定などは、いろいろ試した結果フラットに。テーブルトップ・スタンドに設置したことで、ツィーターが耳の位置にそろい、低域の抜けもより良くなったという。  

ビート構築で重要なアタックがはっきりと分かる

 JJJが8020Dを評価している点は、低域にとどまらない。もう一つのポイントは、アタックの再現能力だと彼は語る。  「アタックがよりはっきりと分かるようになりました。ビートを組む上で、ある音と別の音のアタックの関係は重要なので、その点も8020Dを導入して良かったポイントだと思います」  普段のリスニングなども8020Dを使うことが多いというJJJ。プライベート・スタジオに来るクリエイター仲間にも8020Dのサウンドは好評で、STUTSもそんな一人だという。STUTSと言えば、彼のアルバム『Eutopia』の「Changes」にJJJが客演したことでも話題となったばかりだ。  「STUTSはここで8020Dを聴いて、8030Cを買いました。みんな、ここで鳴らした音を気に入ってもらえてうれしいですね」  

JJJ使用モデル

8020dpm-k05 8020D オープン・プライス (ダーク・グレー:市場予想価格55,000円前後/1基、ホワイト:市場予想価格62,000円前後/1基) 8000シリーズの4インチ・ウーファー・モデルとして長らく人気を得ていた8020。2017年に最大音圧レベルが4dB向上した8020Dにバージョン・アップを果たした。周波数特性は56Hz〜25kHz(−6dB)。ツィーターは0.75インチのメタル・ドームを採用している デジマートで探す  

Creator of This Month

SRGenelecpJJJProf JJJ 1989年生まれ。川崎出身のトラック・メイカー/プロデューサー、MC、DJ。KID FRESINO、FebbとのFla$hBackSと並行してソロでの活動をスタート。NYで制作したDJ Scratch Niceとの最新ビート・テープ『ONLY』がリリースされたばかり。 ■GENELEC製品に関する問合せ:ジェネレックジャパン  https://www.genelec.jp/ 2019年3月号サウンド&レコーディング・マガジン2019年3月号より転載

テンテンコ × Snowball

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ストレスの無い体勢で使えるし 聴いたままの音が入る印象です

BLUE MICROPHONESの製品を第一線のアーティストに試していただく連載。今月は、シンガー/サウンド・クリエイターとして、ポップ・シーンからエキスペリメンタル界隈まで股に掛けるテンテンコさんの登場です。宅録のCD-R作品なども発表している彼女に、デスクトップ型のUSBコンデンサー・マイクSnowballを試してもらいました。 テンテンコ(トップ写真) <Profile>BiSのメンバーとして活動した後、2014年にフリーランスに。ノイズ、インディー・ロック、エレポップ、ダブなどを独自解釈したアバン・ポップを展開し、2018年12月にはニュー・アルバム『ALL YOU NEED IS CAT~猫こそはすべて』をPヴァインからリリースした。  

宅録に必要な要素をコンパクトに集約

使ってすぐに“すごく良いマイクだな”と。初めは“本体に近付いて使うものなのかな?”と思っていたんですが、声を出してみるとかなり高感度であることが分かったので、少しずつ離れてみたんです。そしたら、本体から30cmほどのところで最も自然な音が得られ、何気なく座っているときと同じような姿勢になっていました。 もし本体に向かってかがんだりしないといけなかったら、それがストレスになってくると思うんですが、マイクの存在を意識せずに座ってそのまま録音に移れるので、無理がかからなくて良いなと。 音はダイレクトな感じで、聴こえたまま入る印象。普段使っているダイナミック・マイクには“そのマイクの音”というような癖があるんですが、Snowballにはそういうのが無いんです。また、オーディオI/Oを介さずパソコンに直接USB接続できるからか、機材を通している感が薄く、生々しく録れるのも特徴だと思います。 いつもは録音の段階で鮮度が落ちてしまうため、エフェクトで加工して楽しむような方向性なのですが、Snowballを使えば作る曲も変わってきそうですね。近くで大声を出してもひずみがほとんど感じられず、ヘッド・マージンにかなりの余裕を見せるのも素晴らしいと思います。 マイクとしての高い収音性能やADコンバーター、設置のためのスタンドなど、あらゆる要素が無駄なくコンパクトに集約されているので、宅録にぴったりですね。声だけでなく、試したいソースがいろいろと思い浮かびました!     [caption id="attachment_78216" align="alignnone" width="650"]▲Mac/WindowsにUSB接続し、プラグ&プレイで使えるコンデンサー・マイクSnowball。単一指向性、無指向性、−10dBのPADが入った無指向性を切り替えることができます ▲Mac/WindowsにUSB接続し、プラグ&プレイで使えるコンデンサー・マイクSnowball。単一指向性、無指向性、−10dBのPADが入った無指向性を切り替えることができます[/caption]   [caption id="attachment_78217" align="alignnone" width="650"]▲プライベート・スタジオでの歌録りの様子。聴こえたままの音をキャプチャーできる印象なので、アコースティックな音楽をやっている人にも向くと思います ▲プライベート・スタジオでの歌録りの様子。聴こえたままの音をキャプチャーできる印象なので、アコースティックな音楽をやっている人にも向くと思います[/caption]   【製品サイト】 BLUE MICROPHONES   [amazonjs asin="B07CF4K3RT" locale="JP" title="サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号"]  

「RUPERT NEVE DESIGNS/5211」製品レビュー:サチュレーション機能を搭載した1Uラック・サイズの2chマイクプリ

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音楽的な倍音を付加するSILK機能 可変式ハイパス・フィルターを搭載

筆者は5211を“パッ”と見た外観から、Shelford Channelのプリアンプ部分を抜き出したステレオ・チャンネル・マイクプリなのだろうと思っていました。しかし資料を見てみると、同社Portico 5012の機能や回路設計などが進化したものに、Shelford Channelのカスタム出力トランスが組み合わさった製品だということです。 フロント・パネルには各チャンネルごとに左から0〜66dBまで調整可能なゲイン・ノブ(6dBステップ)、48Vファンタム電源、±6dBのトリム・ノブ、位相反転ボタン、20〜250Hzの可変式ハイパス・フィルター・ノブとそのボタン、その後にTEXTUREノブとSILKボタンが装備されています。 [caption id="attachment_78015" align="alignnone" width="650"]▲右上にあるSILKボタンをオンにすると、サウンドにサチュレーション効果を付加できる。左下のTEXTUREノブで、その効果をコントロールすることが可能 ▲右上にあるSILKボタンをオンにすると、サウンドにサチュレーション効果を付加できる。左下のTEXTUREノブで、その効果をコントロールすることが可能[/caption] 注目すべきはこのSILK機能。5211の出力段には、出力トランスをサチュレーションさせて音楽的な倍音を得るRED SILK回路が採用されており、ビンテージ機器に見られるような独特の音色を表現することが可能です。そして、TEXTUREノブはその効果を調節するノブとなっています。 5211のプリアンプ部分には、入力信号をできる限りピュアに扱うためにトランスフォーマー・ライク・アンプ(T.L.A.)構成が採用されており、バランス仕様ではあるのですがフローティング設計ではありません。入力部がトランスレスというところが、音質にどう影響するのかは聴きどころでしょう。ちなみに5211のマイク・イン(XLR)は、48Vファンタム電源をオフにするとインピーダンス10kΩのライン・インとして機能するので、ミックスなどでの味付けにも使えます。さらに5211のフロント・パネルに搭載されているノブは、すべてがステップ式になっているためリコールにも容易に対応可能。このあたりは現代の音楽制作に合わせた仕様で、非常にありがたいですね。  

上品できめ細やかな高域 広いレンジ感のあるサウンド

それではサウンド・チェックを行ってみましょう。まずSILK機能をオフにした状態での第一印象は“素直な音”。まるでまじめな優等生といった感じで、ギラつく/ダブつくとは無縁のサウンドです。低域は癖が無く、高域はまさにシルキーで滑らか。SN比にも優れ、天井の高さは特筆すべきところです。しかし裏を返すと“自己主張が無い”とも取ることができ、“好みが分かれる音かなあ”と思うことも。試しにShelford Channelに切り替えたところ、中低域に一本芯が通ったようなサウンドが得られました。確かに5211の方が音の素直さという意味では一枚上手ですが、きめ細やかで上品な高域が聴けるのは両者共に変わらないと言えるでしょう。 ここで5211のSILK機能をオン。すると、何か“物足りないな”と思っていた音そのものの存在感が強く現れるようになったのです! TEXTUREノブを最大にしても過剰な色付け感はなくソフトな印象で、音の輪郭も破たんすることはありませんでした。 ボーカルにおいては、母音が持ち上がり前に出てくるような感覚。エフェクト感は薄く、自然なかかり具合のためかなり使える機能だと言えるでしょう。ポップスやロック、Vocaloidを使った音楽など、主旋律に“芯”が求められるジャンルでは積極的に使える機能だと思います。 ビンテージの1073とSILK機能をオンにした状態の5211を比べると、5211の方が若干腰高に聴こえるため、音の存在感では僅差で1073の方が勝りますが、空間やレンジ感という意味では5211の圧勝です。まさに5211は現代のニーズにマッチしたようなサウンドかと思います。ちなみに可変式のハイパス・フィルターも、実際にかなり使える高品位なものだということが確認できました。  

ライン入力にも対応可能 背面には−6dBライン・アウトを装備

今度はSILK機能をオンにした状態でピアノに使用。ここではマイクに往年の名機を使ったのですが、5211を通して聴こえてきたのはつややかで音抜けが良く、明るく聴かせたいときや速いパッセージの部分には持ってこいのサウンドです。何よりそのマイクが持つ本来の音を感じることができ、マイクのキャラクターをそのまま表現しつつ、さらに現代でも使える音にしてくれるようなイメージ。名機と言われるビンテージ・マイクを使用しても“現代のオケの中では埋もれてしまいがち”と感じている方にも、ぜひ5211を試してみてほしいと思います。個人的にはここが一番ポイントです。 最後にミックスでのテスト。先述したように5211はライン入力にも対応するため、今回はドラム・バスにインサートしてみました。SILK機能をオンにしてTEXTUREノブをひねると、キックのうねりやスネアの倍音感をコントロールすることができ、プラグインとはまた一味違う“オーガニックなひずみ”を得ることが可能です。 リア・パネルには通常のライン・アウト(XLR)以外に、−6dBライン・アウト(XLR)を装備。このためチェイン内のコンバーターやほかの機器をクリッピングさせず、5211自体の出力トランスをドライブさせて自然なサチュレーション・サウンドを得ることができます。レコーディングでも試してみましたが、−6dBライン・アウトを使ったときの方が中域に張りが出て、心地良い倍音を増幅させることができました。これもオマケとしてではなく、しっかりと使える機能だと言えるでしょう。 5211は単なるクリアなマイクプリかと思いきや、SILK機能や−6dBライン・アウトを活用することで色付けもでき、かなり守備範囲が広いツールだと感じました。リコールにも対応できるため、現代の音楽制作ではさらに活躍できる機会が増えることでしょう。何より価格も魅力的ですね! (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)  

Gonnoが使う Studio One 第2回

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第2回 標準搭載のプラグインが大活躍! アルバム『In Circles』のミックス

皆様こんにちは、Gonnoです。今回は、PRESONUS Studio One(以下S1)本格導入のきっかけとなったGONNO × MASUMURA『In Circles』のミックスについて書いていきたいと思います。

効果が自然なGateプラグイン サンプル・トリガーとしても機能

この『In Circles』はドラマー増村和彦君との共作したアルバムで、2018年の春に発売されたものです。 増村君との楽曲制作は、基本的にスタジオでアイディアを出し合ってセッションを行い、ドラムをその場で録音→僕がデータを持ち帰りシンセやシーケンス・フレーズを足していくという流れです。当初は、従来から使ってきたABLETON Liveでアレンジからミックスまで行おうと思っていましたが、ドラムのパラデータをミックスする際に、Liveだとどうしても音が飽和してしまうような気がしたので、S1でミックスすることに。ちなみに、音の飽和はLiveそのものが原因というよりも、Liveにおける自分の手癖(トラックを複製してレイヤーを組むなど)が曲に合わなかったからだと思っています。 アルバムの制作期間はかなりタイトだったので、作業のスピードが懸念されましたが、いざS1を使い始めるとミックスに向いた親切設計で驚きました。手順としては、まずパラデータをアレンジ画面に配置。オーディオ・ファイルを用いる場合は、もちろんドラッグ&ドロップするだけで各トラックが自動生成されます。一昔前のDAWだと自動生成されず本当に面倒だったので、テクノロジーの進化に頭が下がります。 [caption id="attachment_78223" align="alignnone" width="650"]▲S1では、アレンジ画面にオーディオ・ファイルをドラッグ&ドロップすると自動的にオーディオ・トラックができる。この画面は、楽曲のパラデータをドラッグ&ドロップで読み込んだところ。これと同様に、ソフト音源をドラッグ&ドロップすればインストゥルメント・トラックができる ▲S1では、アレンジ画面にオーディオ・ファイルをドラッグ&ドロップすると自動的にオーディオ・トラックができる。この画面は、楽曲のパラデータをドラッグ&ドロップで読み込んだところ。これと同様に、ソフト音源をドラッグ&ドロップすればインストゥルメント・トラックができる[/caption]   こぼれ話ですが、アルバムの曲では「In Circles」のみLiveでパラ書き出ししたものをS1でミックスしていて、ほかの曲はReWireでLiveをスレーブにし、S1にオーディオを送出/録音してからミックスしました。ReWireを使用すれば、編集とアレンジをシームレスに行いやすく効率的だったのですが、それとは裏腹に「In Circles」が一番満足のいくミックスにできた記憶があります。“ReWireのオーディオ・ストリームを使ったミックスと、書き出したオーディオ・ファイルでのミックス”の音質比較も時間の許すときにトライしてみたいですね。 閑話休題。ミックスでは、とにかくS1純正プラグインが重宝しました。各トラックにPro EQやCompressor、Limiterなどを使ったのはもちろん、一番ありがたかったのはGateで、これがかなり活躍。「In Circles」のドラムは、自分が狙っていたよりも少しばかりライブな音に録れたのですが、増村君が気合い一発のOKテイクだったので、その躍動感を残しつつ余分な空気感はできるだけ取り除きたかったのです。ただ、ミックスの段階でドラミングの自然さを保ったまま音を変えるというのは、とても難しい作業。Liveの機能やトランジェント・コントロール系のエフェクトなどでいろいろと試してみたものの良い結果が得られず、S1のGateでやっとこさ、自然なデッド感が出せたと思います。 [caption id="attachment_78224" align="alignnone" width="650"]▲キックのダイナミック・マイクにかけたGate。ナチュラルなかかり具合や、音源をトリガーするためのMIDI信号出力機能が特徴(赤枠)。これを使用すれば、Gateを挿した生ドラムの音に合わせてソフト・サンプラーなどのサウンドをトリガーすることが可能 ▲キックのダイナミック・マイクにかけたGate。ナチュラルなかかり具合や、音源をトリガーするためのMIDI信号出力機能が特徴(赤枠)。これを使用すれば、Gateを挿した生ドラムの音に合わせてソフト・サンプラーなどのサウンドをトリガーすることが可能[/caption]   Gateをかけたのは、タムのステムとキックのダイナミック・マイク。前者は、タムが演奏されていない部分の空気感を取り除くためで、キックに関してもダイナミック・マイクは空気感不要と判断したためインサート。僕は普段あまりゲートを使わない方で、空気感を処理する場合はどちらかと言えばオーディオ・イベントの無音部分をカットするのですが、S1のGateは効果がかなり自然です。通常の4拍子のポップスでしたら、2&4拍目のスネアにかけてもほぼ違和感が出ないでしょう。 また、このGateはソフト音源をトリガーするためのMIDI信号を出力できる優れもの。ゲートが開いて発音しているときにMIDI信号が出力されるので(初期設定ではベロシティ100のC3)、音源を立ち上げたトラックのトリガー入力欄で“Gate”を選ぶと、その音源を鳴らせます。これを利用すれば生ドラムの発音タイミングに合わせてサンプラー内のドラム音色などを鳴らすこともできるので、連載後半のデモ曲制作の回で実践してみたいです。 [caption id="attachment_78225" align="alignnone" width="323"]▲Gateのトリガー・アウトでソフト音源を鳴らしたい場合は、対象となるインストゥルメント・トラックのトリガー入力欄から“Gate”を選択する。これだけでルーティングは完了だ ▲Gateのトリガー・アウトでソフト音源を鳴らしたい場合は、対象となるインストゥルメント・トラックのトリガー入力欄から“Gate”を選択する。これだけでルーティングは完了だ[/caption]   サイド・チェインの設定が超簡単 柔軟な仕様を持つミキサー画面 プラグイン・エフェクトに関しては、Compressorにも必ずお世話になります。この曲ではサイド・チェイン・コンプに活用しました。ガッツリかけるEDM的な手法ではなく、シンセのピークをキックのタイミングで抑える目的です。ルーティングはとても簡単で、まずはサイド・チェイン・コンプをかけたいシンセのバスにCompressorをインサート。プラグイン画面上部の“サイドチェーン”というボタンを押してサイド・チェイン入力をアクティブにします。そしてトリガー信号となるトラック、この曲であればキック・バスのセンド欄から“サイドチェーン>シンセ・バスに挿したCompressor”を選択すれば完了。センド欄ではトリガー信号の音量もコントロールできます。また、コンプのかかり具合がメーター右側にゲイン・リダクション・メーターのようにして表示されるのがとても分かりやすいです。 [caption id="attachment_78226" align="alignnone" width="650"]▲Compressorの画面上部には“サイドチェーン”というボタンがあり、これを押して水色にするとサイド・チェイン入力(キー・イン)がアクティブになる(赤枠)。あとは、トリガー信号にしたい音をミキサー・チャンネルから送るだけでサイド・チェイン・コンプをかけることが可能 ▲Compressorの画面上部には“サイドチェーン”というボタンがあり、これを押して水色にするとサイド・チェイン入力(キー・イン)がアクティブになる(赤枠)。あとは、トリガー信号にしたい音をミキサー・チャンネルから送るだけでサイド・チェイン・コンプをかけることが可能[/caption]   [caption id="attachment_78227" align="alignnone" width="364"]▲︎サイド・チェインのトリガー信号をどこに送り込むかは、チャンネルのセンド欄で選べる。“Sidechain”という表示の右にある“▼”マークを押すと、候補のサイド・チェイン入力を一覧表示可能。見てみると、CompressorのほかEQやGateにもサイド・チェイン入力できることが分かる(赤枠) ▲︎サイド・チェインのトリガー信号をどこに送り込むかは、チャンネルのセンド欄で選べる。“Sidechain”という表示の右にある“▼”マークを押すと、候補のサイド・チェイン入力を一覧表示可能。見てみると、CompressorのほかEQやGateにもサイド・チェイン入力できることが分かる(赤枠)[/caption]   トリガー信号の選択先を見てお分かりの方も居ると思いますが、Pro EQやGateもサイド・チェイン入力を備えています。例えばGateをサイド・チェインから操るとだいぶ面白い効果が得られるので、変わったアレンジが欲しいときなどに重宝しそう。この記事を書く前に少し試してみたところ、キックをトリガーにして上モノにサイド・チェイン・ゲートをかけるとカットアップしたような雰囲気が出て、とても面白かったです。 さて、この楽曲をミキサー画面で見てみると全27chです。ドラムに関してはキック、スネア、オーバーヘッド類などの各バス、それらをまとめたドラム・バス、シンセをまとめたバスなども含まれるため、自然とチャンネル数が増えます。そうなると当然、ミキサー画面の視認性が悪くなりますが、ここもS1は親切設計。ミキサー画面左端にある右上向きの矢印マークを押すと、アレンジ画面から独立した形で立ち上がります。さらに、全体の視認性を上げたい場合は左側の“◀▶”マークなどを押すことで画面全体の大きさを変えられたり、メーター主体の画面に変化させることができます。 S1は、一見純正のプラグインが少なく寂しいかな?と思いきや、隠れた素晴らしい部分がまだまだたくさんあります。今回は字数が尽きたので、続きはまた次号で! [caption id="attachment_78228" align="alignnone" width="650"]▲S1は、基本的に全セクションを1つの画面内に表示する仕様だが、チャンネル数が増えたときなどに視認性を向上させるべく、ミキサーを独立した画面として表示できる。下はその様子で、手前にミキサーがポップアップのようにして立ち上がっている。左側のマーク(赤枠)を押すと、サイズを変えたり、この画面のように各チャンネルのピーク・メーターを大きく表示することなどが可能だ ▲S1は、基本的に全セクションを1つの画面内に表示する仕様だが、チャンネル数が増えたときなどに視認性を向上させるべく、ミキサーを独立した画面として表示できる。下はその様子で、手前にミキサーがポップアップのようにして立ち上がっている。左側のマーク(赤枠)を押すと、サイズを変えたり、この画面のように各チャンネルのピーク・メーターを大きく表示することなどが可能だ [/caption]   *Studio Oneの詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/

【第17話】つまみちゃん〜兄がこんなの買えるわけがない〜

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サウンド&レコーディング・マガジン2017年11月号より掲載がスタートし、本誌としては異色のマンガ連載として各所をザワつかせている「つまみちゃん〜兄がこんなの買えるわけがない〜」。落ち込まないで、別れは出会いの始まりだから。 tsumami17_001web tsumami17_002web
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