AVID Pro Toolsユーザーに、仕事で使う道具としてのPro Toolsについて語っていただくこの連載。今回はJVCケンウッド・クリエイティブメディアのJVCマスタリングセンター赤坂スタジオにお邪魔し、Pro Tools|HDからHDXへのリプレースについてお話を伺った。
Pro Tools|HDXシステムを中心としたラック。Sync HDとHD I/O、SONNET TECHNOLOGIESのXMac Pro Serverに収められたAPPLE Mac Proが並ぶ。その上にはGENESIS SYSTEMSのADコンバーターやJUNGERのデジタル・ダイナミクス・プロセッサー、AUDIO DESIGNのクロック・ジェネレーターなど、マスタリング・スタジオをルーツとするのがうかがえる機材がマウントされている[/caption]
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プリアンプ類が収められたラック。上からコンプレッサーのUREI 1176LN、MILLENNIA HV-3D-8、FOCUSRITE ISA Two、DRAWMER 1960。1stに置いてあるプリアンプ類を持ち込むこともあるそうで、多チャンネルのマイクプリが必要な場合はSTUDERのコンパクト・コンソールを使うことも。その上にあるDIGIDESIGN時代のコントローラー、ProControlはモニター・セクションのみ使用しているとのこと[/caption]
先行してPro Tools|HDXが導入されていた1stは、マスタリング・ルームとミックス・ルームを兼ねる。新子安時代から使われてきたJVCのカスタム・モジュールを搭載するマスタリング・コンソールを軸に、NEUMANNのビンテージ・モジュールなどが組み込まれていた湯澤氏用の仕様となっている。Pro Tools|HDX用のHD I/Oは右袖のラックに設置。デスク左側のラックには192 I/Oも残してある[/caption]
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右がお話を伺った湯澤貴久氏。赤坂スタジオ参加以前はANTHEM、森高千里、 モーニング娘。、STARDUST REVUEなどの作品に携わってきた。左はエンジニアの松田慎氏[/caption]
Presented by AVID & TACSYSTEM
持ち込まれるセッションに併せて レコーディング用ルームにもHDX導入
JVCケンウッド・クリエイティブメディアは、CDやDVD/Blu-rayなどのメディア製造を主軸とし、その関連業務としてJVCマスタリング・センターを開設。名匠として知られる小鐵徹をはじめ多くのマスタリング・エンジニアが在籍する、国内屈指の規模のマスタリング・スタジオとして知られてきた。2016年、中央林間にあったマスタリング・スタジオを代官山スタジオに統合するのと併せて、代官山にあったレコーディング部門を赤坂へ移設することとなった。 その赤坂スタジオは、マスタリング/ミックスを兼ねた1stと、ボーカルやナレーション収録用のブースを備えるレコーディングの2stを備える。1stは先にPro Tools|HDXを導入しており、この3月にPro Tools|HDからHDXへのリプレースを果たしたのは2stの方だ。 「この2stでは歌もののボーカル録音からサントラの録音、あるいはナレーション収録をすることが多いですね。広いブースとは言えませんが、楽器の録音をすることもあります」 そう説明してくれたのは、所属エンジニアの湯沢貴久氏。Pro Tools|HDXへのリプレースについてはこう語る。 「最近ではPro Tools 12のセッション・ファイルが持ち込まれることも多く、外部スタジオとの互換性を考えると必要なアップグレードでした。1stのPro Toolsは先行してHDXを導入していたので、環境を合わせる意味でも導入して良かったと思います」 [caption id="attachment_67709" align="alignnone" width="331"]

アナログ入力に余裕を持ったI/Oを選択 HDX化によってサウンド面も向上
従前のPro Tools|HDではカード3枚を搭載したHD3構成だったそうだが、HDXではカード1枚で十分な処理能力が得られるとのこと。HD I/Oはアナログ16イン/8アウト仕様と、この規模にしてはアナログ入力が多いモデルを選択している。 「基本的にはボーカル・ダビングやナレーション収録がメインのスタジオですが、まれにドラムを録音するようなセッションもあります。スペース的にはかなり難しいのですが、それでもドラムを録るとなると8インでは足りないので、16インを選択しました」 もちろんPro Tools|HDからPro Tools|HDXへのアップグレードによって、サウンド面での向上も大きなメリットになっているという。 「Pro Tools|HDのころは、ミックス・バスでの飽和があるように感じていて、アナログでパラレル出力をして自作のサミング・アンプでまとめたりもしていましたが、Pro Tools|HDXになってからはそうした飽和感も解消されたように思います」 リスナーへのアウトプットとなるメディアから徐々に、制作現場へと業務を拡張してきたJVC赤坂スタジオ。スタンダードな制作スタイルが求められる現場へのPro Tools|HDXの導入は、必然とも言えるだろう。 [caption id="attachment_67711" align="alignnone" width="650"]
