495種類のプリセットを用意
13個のタッチ・センサーで演奏可能
PIONEER DJと言えば、DJ用CDプレーヤーやDJミキサーなどの製品が有名だが、昨年発売されたサンプラー、Toraiz SP-16はいよいよPIONEER DJが、DJやミックスからトラック・メイクの市場にも参入か?と話題になった。今回は本格的なシンセサイザーの発売で、さらにその傾向が強くなったと言えるだろう。
このAS-1は完全アナログ回路のモノフォニック・シンセで、音源部の回路はDAVE SMITH INSTRUMENTSが開発している。もっと分かりやすく言えば同社の製品Sequential Prophet-6の回路をベースに、フィルター部分は完全に同じものを使用しているということだ。エディットや同期など、MIDI経由でToraiz SP-16と連携できるなど、同社ならではの使いやすさを融合させた製品と言える。あらかじめ作り込まれたシーケンス・パターン入りのファクトリー・プリセット495種類に加えて、ユーザー・プログラムも495種類保存可能。これらは64ステップのシーケンサー・パターンとともにメモリーできる。
パネルを見ていこう。手前に1オクターブ分の鍵盤の形で配置された13個のタッチ・センサーがある。鍵盤として機能する以外に、シーケンス・パターンのキー・チェンジや、前述のプリセット/ユーザー・プログラムの中から13種をアサインして、クイック・プログラムとして呼び出すことにも使用できる。鍵盤の上には、オクターブ(SHIFT時は半音単位)のUP/DOWN、シーケンサーのRECORD/PLAY、アルペジエイターのON/HOLD、BPM設定のつまみとTAPボタンなど、リアルタイムに操作したいボタン類。その上には、シンセサイザーのエディット用に先端が銀色のつまみが6つある。演奏中にリアルタイムに操作したいローパス・フィルターのカットオフとレゾナンス、ハイパス・フィルターのカットオフ、フィルターとアンプ両方のエンベロープのアタックとディケイ/リリース、LFOのフリケンシー(SHIFT併用でLFOのアマウント)といったパラメーターを操作できる。
最上部には、プログラム、パラメーター、ボリュームを設定する黒いつまみが4つとそれらを表示するディスプレイがある。さらに左側には、タッチ・パッド式のスライダーが搭載され、7種類のパラメーターをマルチアサインできるようになっており、さまざまなサウンド変化を演出する。LATCHボタンをONにしておけばパッドを離してもその値の状態で固定することが可能だ。
フィルターはProphetサウンドそのもの
64ステップ・シーケンサーを搭載
音源部は三角波~ノコギリ波~矩形波の連続可変VCO×2基に加え、サブオシレーターもノイズもミックス可能。フィルターはローパス、ハイパスどちらもレゾナンス付きで、ほかにVCA×1、エンベロープ・ジェネレーター×2、LFO×1という構成だ。FXもSequential Prophet-6直系のエンジンで、2系統搭載している。そのサウンドは、Sequential Prophet-6の回路を受け継いでいるだけあってやはり素晴らしい。オシレーターの連続可変で細やかな音作りができるし、フィルターはまさにProphetサウンドそのもの。レゾナンスの発振は激しい感じではなく美しいといった印象だ。全体的に太さや荒々しさよりも繊細さが際立つサウンド。しかしFXにディストーションやリング・モジュレーターも内蔵されているので、荒々しいサウンドにも対応できるだろう。これらのパラメーターはすべて、プログラムとして本体に保存可能だ。
オシレーター2はローフリケンシー設定が可能なので、モジュレーション・ソースとして使える。2つのLFOとエンベロープで別々のモジュレーションをかけるというサウンドも生成可能だ。さらにスライダーやトランスポーズを併用すれば、1つのシーケンス・パターンを演奏しているだけで、バリエーション豊富な展開もできた。
そのシーケンサーだが、パターンを作るのも非常に分かりやすい。RECORDボタンを押せばすぐに1ステップ目から入力できるモードになり、タッチ・センサーとタイ(HOLD)、休符(ARP)のボタンを使って入力していくだけ。1ステップの音符の長さは後から自由に変更できるので意識する必要もない。またSHIFTボタンと併用してLOCK SEQに設定すると、シーケンス・パターンとBPMを保持した演奏状態で、別プリセット音に変えることもできる。これらのプログラムのエディットや管理、シーケンサーのパターン制作などは、Mac/Windows対応のエディター・ソフト、SOUNDTOWER Toraiz AS-1 Sound Editor LEで行うことも可能だ。
Toraiz AS-1は操作方法に迷うことが全く無く、ある程度シンセサイザーを触ったことがあれば、説明書も無しで使いこなせるだろう。細かい音作りやフレーズはしっかり下準備して、演奏中はつまみで音色、テンポやキーなどを大胆に変化させるといった演奏方法が楽しそうだ。
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![▲リア・パネルには、左からヘッドフォン、オーディオ・アウト(R/L)、トリガー・イン(以上フォーン)、MIDI(OUT/THRU、IN)、USB B、DC IN、電源スイッチを備える]()
▲リア・パネルには、左からヘッドフォン、オーディオ・アウト(R/L)、トリガー・イン(以上フォーン)、MIDI(OUT/THRU、IN)、USB B、DC IN、電源スイッチを備える[/caption]
撮影:川村容一
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(
サウンド&レコーディング・マガジン 2017年7月号より)