ビンテージの名機を中心に再現した豊富なラインナップで、世界的にユーザーを増やし続けているUNIVERSAL AUDIO UADプラグイン。そのUADプラグインを動かすための専用DSP+オーディオI/OであるApolloシリーズに、待望のWindows用USB3.0接続モデル=「Apollo Twin USB」が登場。同じくDSPアクセラレーターのラインナップにもWindows用USB3.0接続モデルの「UAD-2 Satellite USB」が加わり、Mac/Windowsのノート・パソコンで手軽にUADプラグインが扱えるようになった。さらにUAD SoftwareもVer.8.6にバージョン・アップし、新たに3つのプラグインが登場した。ここでは、UNIVERSAL AUDIOインターナショナル・セールス・マネージャーのユウイチロウ・ナガイ氏に、ハード/ソフト面での最新UADトピックを聞いた。
ラップトップ中心の作業スタイルに適した Apollo Twin USB/UAD-2 Satellite USB
──MacのThunderbolt接続専用だったApollo Twinが、USB対応モデルの登場により、ようやくWindowsにも対応しましたね。 ナガイ Apollo Twinをリリースした際にThunderboltがWindowsにも普及することを期待していたのですが、なかなかうまく普及が進まず、Windowsユーザーの方はUSB3.0で接続してもらおうとこの製品をリリースしました。ドライバー作りに多少時間がかかってしまいましたが、一度できれば今後の製品作りはスムーズに行くと思います。 ──Apollo Twin USBは、やはりMacでは使えないのでしょうか? ナガイ 残念ながら使えません。MacユーザーはThunderboltモデルを使ってもらえたらと思います。 ──Apollo TwinはPCIeプロトコル、Apollo Twin USBはUSB3.0のデータ伝送速度ということですが、実効スピードに違いはありますか? ナガイ 共に十分な速度を確保しているので、使用する際に大きな違いはありません。 ──Apollo TwinをWindows環境で使いたいという声は以前から多かったのでしょうか? ナガイ 非常に多かったです。UADユーザーはMac/Windowsでちょうど半分くらいの割合なのですが、最近のトレンドとしてラップトップ・ユーザーが増えてきているんです。メイン・マシンを別の場所に持ち出したいというニーズ……例えば出先で作業をして、自宅で仕上げるなど、マルチユースを想定する方が増えているのだと思います。ラップトップで問題なのはCPUのパワー不足なので、そこをUADのDSPで補うというのは非常に理にかなった組み合わせだと思います。 ──確かに、海外ではラップトップをコラボレーション相手のスタジオに持ち込んで、コライトするクリエイターも増えているようですね。 ナガイ そのようです。そういう意味でも、ラップトップ・ユーザーのシェアは増えていますね。 ──今回のApollo Twin USBもUAD-2 Satellite USBも、電源はバスパワーではなく、電源供給が別途必要ですよね。そこはUADのこだわりなのでしょうか? ナガイ そうなんです。DSP処理はかなりのパワーが必要なので、安定性を重視して電源は別から取る設計になっています。特にUAD-2 Satellite USBは8チップの製品もありますので。それに、ラップトップでバスパワー供給した場合には、ラップトップ自体のバッテリーがすぐになくなってしまいます(笑)。ハイパフォーマンスを重視するという意味で、バスパワー対応にはしていないんです。 [caption id="attachment_56537" align="alignnone" width="520"]

ギタリスト、ミックス・エンジニア、マスタリング・エンジニアの 各ジャンルをカバーする3つの新しいUADプラグイン
──今回、UAD SoftwareもVer.8.6にバージョン・アップし、新たに3つのプラグインが登場しましたね。 ナガイ ギタリスト、ミックス・エンジニア、マスタリング・エンジニアという、各ジャンルのお客様からいただいたフィードバックをすべて実現できたと思います。 ──まず、Fender ’55 Tweed Deluxeは、その名の通り1955年製FENDER Tweed Deluxeアンプをエミュレートしたものです。 ナガイ 私たちにとって初めてのギター・アンプのエミュレートでしたので、モデリングのコア・テクノロジー開発に2年間ほどかかりました。 ──アンプだけでなく、キャビに立てるマイク・シミュレーターまで実装したプラグインですね。 ナガイ そうなんです。インプットのUnison、アンプのディストーション回路、スピーカー・システムの回路、スピーカーから空気を通して鳴らすルーム・シミュレート、そしてそれを収音するマイク・システムと、再現するパートが多岐にわたるので苦労しました。そもそもエミュレート元となるアンプの個体を探すのが大変で、スピーカーの調子が良いものがなかなか見つからず、我々が目指すベストな“ゴールデン・ユニット”がなくて……公式にFENDERの協力を得て作っているので、彼らも個体探しを手伝ってくれました。彼らのネットワークはすごいですからね。 ──サウンド面で注力した点は? ナガイ このアンプはコアなFENDERプレイヤーが大好きなアンプで、一番有名なのはラリー・カールトンがGIBSON ES-335と組み合わせて弾くフュージョン・ロック系サウンドでしょうか。このアンプの最大の特徴は、すぐにひずむことなんです。FENDERのアンプはクリーンな印象があると思いますが、これは全然そうじゃなくてナスティ。TONEツマミは1〜12まで目盛りがありますが、2くらいからひずみ始めます(笑)。どんどんひずませていくと、壊れる寸前のような音も出せるので、その暴れた部分まで完全にコピーすることを心掛けました。これを再現できたのはアンプ・モデリングの技術も大きいですが、インプット信号のインピーダンスやゲイン・シェイピングなどをUnisonによって完ぺきにマッチングさせていることもリアルなサウンドを実現するために重要でした。実際、社内でA/Bテストをしてみたところ、ブラインドでは実機との違いはほぼ分かりませんでした。唯一、違ったのはハム・ノイズの乗り方が違うというくらいで(笑)。 [caption id="attachment_56505" align="alignnone" width="580"]

