3セットのマイク・バランス調整で
さまざまなジャンル/編成に対応
立ち上げるとユニークなユーザー・インターフェースが目につくが、機能としてはとても分かりやすくなっている。mixタブでは3つのマイクのバランスを調整することが可能。playタブは調弦(スケール)を変えたり、ベロシティ・カーブなど、リアルタイムで演奏するときなどの調整に使うセクションだ。memoryタブでは、メモリーを圧迫したくないときなどに、使わないアーティキュレーションを個別にオフにできる。
マイクはそれぞれ距離感の違う、Direct、OH、Roomの3セット。そしてそれらのマイクを混ぜたStereoという項目も用意されている。肝心の音は、単体ごとでも各マイクを混ぜてもクセが無い印象を受けた。そのためスケールが小さいコンパクトな編成から、大きく壮大な編成、ロック・バンドに和楽器を混ぜ込むような場合までも、広く対応してくれるだろう。箏のみやびなニュアンスも感じ取ることができ、弾いていてとても楽しい。各マイクごとに4バンドのEQも用意されていてこちらも便利だ。
アーティキュレーションの幅広さにも驚かされる。弦をどの指で弾いたか、弦の後押し、押し離しなど、キー・スイッチで切り替えが可能なものだけでも20種類、計26種もある。これだけあれば人が演奏しているかのように細かくニュアンスを打ち込んでいくことも可能だろう。キー・スイッチにフレーズもアサインされているので、裏連やさまざまなグリッサンドなど、打ち込むと本物感を出すのに手間がかかるフレーズなどはこれでバッチリだろう。
曲のキーに合わせて音源のキーも変えられるので、こちらも広い場面に対応してくれそうだ。全くもってかゆいところに手が届いている。
白鍵にスケールをアサインすれば
誰でも簡単に和風フレーズが演奏可能に
箏は弦が13本あるが、ギターのようにフレット楽器ではないため、クロマチックにさまざまな音域やスケールに対応する楽器ではない。そのため鍵盤などでリアルに演奏するためにはその辺りを意識しなくてはいけない上、琴の調弦などに深い理解が無いとなかなか難しいだろう。Koto 13では13個の白鍵にそれぞれの音高をアサインできるスケール演奏モードが用意されている(
画面①)。これによりあまり考えなくても琴らしい演奏が可能になっている。ただ白鍵を弾くだけで和物らしいフレーズがすぐに弾けるため、鍵盤をたたいていて、ついテンションが上がってしまった。
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![▲画面① playタブでは、任意のスケールを選ぶと各弦に対応する13個の白鍵にピッチを割り当てる。これで白鍵を弾くだけで和風フレーズを演奏可能。“それらしい”グリッサンドも簡単だ]()
▲画面① playタブでは、任意のスケールを選ぶと各弦に対応する13個の白鍵にピッチを割り当てる。これで白鍵を弾くだけで和風フレーズを演奏可能。“それらしい”グリッサンドも簡単だ[/caption]
そしてプリセットとして平調子、半雲井調子など、28種類のさまざまな古典スケールが用意されており、さらにはユーザーが自由にスケールを作成できるユーザー・スケール・モードも備えている。楽曲ごとにマッチしたチューニングを探したり、自分で作って試したりと、自由度がとても高い。もちろん従来の音源のようなクロマチックの並びで鍵盤演奏することも可能だ。
ソフト音源の打ち込みのときに楽器の特性をあまりよく知らないまま打ち込んでいたりすることもたまにあるが、それが一般的でない楽器であればなおさらで、箏も実物を触ったこともない方も多いのではないだろうか。筆者もなんとなく和物だからと音源を無茶な使い方をして、実際の奏者から文句が出る、ということも過去にあった。
Koto 13は切り替え一つでさまざまなスケールやフレーズが試せるので、箏のオイシイ部分をすぐに理解できるのも魅力だ。ソフト音源のサウンド・クオリティが上がってきたが、あるピッチの音のサンプルのみ少し遅れたり、ピッチ自体が悪かったりと、リアルな代わりにとても使いにくい音源もまだまだ多い。その中でKoto 13はそういったこともなく、音も、使い勝手もとても良い、久々に創作意欲が刺激される音源だった。こういった音源は何かと使いたくなるため、今後箏を取り入れた楽曲を作る頻度が上がるかもしれない。
Virtuoso Japanese Series第1弾ということなので、今後ほかの和楽器の音源も制作されていくのだろう。このクオリティの尺八や三味線などの音源が出たらと思うと、とてもワクワクする。個人的には雅楽系の楽器の音源も出てほしい。今後も非常に楽しみなデベロッパーだ。
製品サイト:
http://www.minet.jp/brand/sonica/koto-13/
(
サウンド&レコーディング・マガジン 2016年1月号より)