ナカシマヤスヒロ
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最初に手にした楽器はパソコン。映画音楽やゲーム音楽に影響を受け、独学で作曲を始める。近年は国内外の企業のCM音楽を手掛け、日本にいながら世界を舞台に活躍を続けている。
製品概要
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かつてSTEINBERG Cubaseを設計していたソフト開発者、ヴォルフガング・クンドゥルス氏らの手掛けたMac/Windows対応のDAWソフト。
Studio One 3 Professional(ダウンロード版:42,800円/USB Edition:45,800円)、
Studio One 3 Artist(ダウンロード版:12,800円、USB Edition:15,800円)、
Studio One Prime(ダウンロード版のみ:無償)の全3グレードをそろえています。フラッグシップStudio One 3 Professionalは、64ビットのオーディオ・エンジンが特徴。音質的なロスを大きく抑えた処理が行えます。ミドルレンジのStudio One 3 Artistは32ビット・エンジン仕様であるものの、インストゥルメントの搭載数5はProfessionalと同じ。プラグイン・エフェクトの数も30と、Professionalの36に肉薄しています。Studio One Primeは、機能こそミニマムですが、シングル・ウィンドウやドラッグ&ドロップを軸とした直感的な操作性などStudio Oneの基本は押さえています。
問い合わせ先:エムアイセブンジャパン Web:www.mi7.co.jp/switch/
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動作環境
●Mac:OS X 10.8.5以降、INTEL Core 2 Duoプロセッサー(Core i3以上を推奨)、VST/Audio Units
●Windows:Windows 7 SP1(32/64ビット)+プラットフォーム・アップデート/8.1(32/64ビット)/10、Core 2 DuoもしくはAMD Athlon X2プロセッサー(Core i3またはAthlon X4以上を推奨)、VST
●共通:4GBのRAM(8GB以上を推奨)、30GBのハード・ドライブ・スペース、1,366×768ピクセル以上のディスプレイ(タッチ操作にはマルチタッチ対応のディスプレイが必要)
ナカシマヤスヒロが語るStudio Oneのココがすごい!
最大の魅力は解像度の高い音質
初めまして、作曲家のナカシマヤスヒロと申します。CMなどの音楽制作をメインに活動しています。数年前にメインのDAWソフトをStudio Oneへ完全以降し、現在はStudio One 3 Professionalを使っています。
さまざまな業務でStudio One(以下、S1)を使い続けた上で感じる最大の魅力は、音の解像度の高さです。Professionalグレードには64ビット浮動小数点演算のオーディオ/ミックス・エンジンが採用されていて、しっかりしたモニター環境でほかのDAWと比較すれば、すぐに違いが分かるほど明りょうな音質です。特に物理モデリング系のソフト・シンセサイザーを立ち上げると、出音にその差が大きく出るように感じます。
もちろんすべてのDAWと比較したわけではありませんし、解像度が高いからと言って“良い音”“好みの音”とは限りません。しかし、それまで聴こえていなかった細かい部分までとらえられるというのは、音作りをする上で概ね好ましいことではないかと思います。リバーブのかすかな余韻や打楽器のアタック音といったディテールがしっかり聴こえることで、より作り込むことができるからです。その結果、生み出されるサウンドのクオリティも向上するのではないでしょうか。
頼れるキーボード・ショートカット
S1を使う理由のほとんどは音質が個人的に好きだからですが、音が良くても使いにくければ作業に集中できませんよね。しかしそこは他社のDAWよりも後発とあって、必要十分な機能がまとめられていて使いやすい仕上がりです。例えば、キーボード・ショートカット。ほかのDAWからS1に乗り換える人も多いと思いますが、APPLE Logic、AVID Pro Tools、STEINBERG Cubaseの互換キーボード・ショートカットが初めから用意されているので、いずれかのDAWから乗り換えた人は操作方法習得のハードルを下げられるでしょう。筆者は業界標準とも言えるPro Toolsのキーボード・ショートカットを自分流に使いやすくアレンジしています。そのほか、かなり細かい機能にまでキーボード・ショートカットを割り当てられるので、慣れれば手の延長のように頼れる相棒になってくれると思いますよ!
ナカシマヤスヒロのお気に入り機能
その① クオンタイズ50%
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リアルタイムに打ち込んだMIDIデータには、タイミングにちょっとしたズレが生じがちです。その補正に必要な機能がクオンタイズなのですが、
この“クオンタイズ50%”はタイム・グリッドに対して完全に補正せず半分の割合で近づけます。無機質になりがちな打ち込みにも、ある程度生っぽさや人間らしさをキープできるわけですね。またキーボード・ショートカットの割り当ても可能で、複数回かけることでタイミングの正確さを微調整できます。
その② Melodyne
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S1にはピッチ補正ソフトのCELEMONY Melodyne Essentialがピッチ補正“機能”として組み込まれています。
ほかの大半のDAWソフトでMelodyneを使う場合はオーディオの解析に時間がかかりますが、S1ではほぼ一瞬で終わります。クリップごとにかけられる“イベントFX”として機能するため、レンダー(処理)したものを元に戻すのもワンクリックです。
その③ アレンジ・トラック
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バージョン3から追加された機能で、
Aメロやサビといったセクションの入れ替えや差し替えが瞬時にできる便利なもの。見た目にも曲の構成が分かりやすくなります。今まではクリップにハサミを入れて動かしたい部分を抽出してから選択→移動……といった手間がかかっていましたが、思い切った変更をどんどんできるようになりました。
ナカシマヤスヒロおすすめの標準搭載プラグイン
その①サンプラー Presence XT
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旧Presenceから大幅に刷新されたソフト・サンプラー。付属するサンプル・ライブラリーのクオリティがかなり向上した上、各パラメーターの配置が整理されて使いやすくなりました。ライブラリーに関しては、
キー・スイッチに対応したブラスやギターの音色が丁寧に作り込まれていて好印象。EXSフォーマットなどのサンプルも読み込めるので、過去のライブラリー資産を生かすこともできます。
その②EQ Pro EQ
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ベーシックなデジタルEQ。ローカット+5バンド・パラメトリック+ハイカットの構成です。
スペアナ(次ページのSpectrum Meterを参照)付きで使いやすく、CPU消費が少なくて音質も良好。EQはミックスの基本ですし、こういうツールが標準でしっかりしているのには好感が持てます。ローカットとハイカットでは、共に48dB/Octという急しゅんなカットも可能。イコライジングの精度は“High quality”モードを推奨します。
その③リバーブ Room Reverb
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シミュレートする空間の広さ、横幅、高さを調整しつつ、
初期反射(最初に聴こえてくる反射の音)と残響成分(余韻)のバランスを変えて音作りするリバーブ。名前からルーム系リバーブだと思われがちですが、大聖堂のように大きな空間の鳴りをリアルに再現することもできるので、追求しがいがあります。
その④ディレイ Groove Delay
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ディレイ音の出力(=タップ)を4つ備えた4タップのディレイ。シンプルな見た目とは裏腹に、
各タップで内蔵フィルターやスウィング値を個別に設定でき、自由度がかなり高いです。S1標準装備のプラグインは全体的にクリアな音質で、このGroove Delayもそうしたキャラクターなのですが、他社製テープ・シミュレーターなどで加工してテープ・エコーのように使うのもありです。
その⑤スペアナ Spectrum Meter
![spectrummeter]()
多機能なスペクトラム・アナライザー(略してスペアナ)です。インサートしたトラックの音に関して、どの周波数がどのくらいの音量で出ているかをリアルタイムに計測&表示できます。表示のモードが6種類もあり、パラメーターも多く、反応が速いので使いやすい。
特に“Waterfall”モードは素晴らしく、自宅のスピーカーでは全く聴こえない超低音などもグラフィカルに監視可能。グラフにマウス・オーバーすると、そのポイントの周波数やノート・ナンバーも確認できるので非常に便利です。
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