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「TELEFUNKEN TF39/TF29」製品レビュー:従来のモデルをさらに進化/拡張させた真空管コンデンサー・マイク

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LUNDAHL製の出力トランスを搭載 米国ですべてハンドビルド設計

 TF39とTF29は、基本的に同じ仕様となっている。全真ちゅう製のK67型カプセルやGENERAL ELECTRICの真空管5654W、高品質な出力トランスLUNDAHL LL1935を搭載し、米国にてハンドビルドされている。また両マイクの外形寸法は46(φ)×200(H)mmで、重量は650gだ。   [caption id="attachment_83224" align="aligncenter" width="650"]▲TF39に付属する電源ボックス=M 903 PSU。左からINPUT(7ピン)、OUTPUT(XLR)、3パターンの指向性を切り替えるノブを備える ▲TF39に付属する電源ボックス=M 903 PSU。左からINPUT(7ピン)、OUTPUT(XLR)、3パターンの指向性を切り替えるノブを備える[/caption]   [caption id="attachment_83225" align="aligncenter" width="650"]▲TF29に付属する電源ボックス=M 902 PSU。INPUT/OUTPUTはM 903 PSUと同じ仕様で、右端にはノブの代わりにTELEFUNKENのロゴがあしらわれている ▲TF29に付属する電源ボックス=M 902 PSU。INPUT/OUTPUTはM 903 PSUと同じ仕様で、右端にはノブの代わりにTELEFUNKENのロゴがあしらわれている[/caption]  両マイクの大きな違いは指向性。TF39はデュアル・メンブレンのカプセルを採用し、カーディオイド/オムニ(無指向性)/フィギュア8の3パターンの指向性を付属の電源ボックス側で切り替えることができる。一方、TF29はカーディオイドのみの仕様。本体正面にはそのポーラー・パターンが刻印されている。筐体は重厚な作りのため、無駄な振動などを抑えられそうだ。  先述した付属の電源ボックスは、R-F-Tシリーズのものと比べて一回り小振りになり、ビンテージ感漂う高級な装いに変わった。またTF39/TF29との接続には付属の7ピン・ケーブルを用いるのだが、R-F-Tシリーズ時のものと比べ、よりしなやかで扱いやすいケーブルへと進化している。  

パワーを感じる豊かな中低域 明りょうな輪郭とアタック感

 それではサウンド・チェックをしてみよう。まずは、ビンテージのアコギから。TF39で収録した結果、とても中低域が強調されて実際の音よりパワーが出た印象。ほかの楽器と合奏してもボディの鳴りがしっかりと聴こえるため、コントロールが簡単であった。  続いてはサックス。これはお見事! 中低域の豊かさが幸いし、とても滑らかでありながら力強く、明りょうな輪郭かつ説得力のあるサウンドだ。例えるならば、芯の柔らかい鉛筆で筆圧を込めたときのような太さと濃さ。それでいてアタック感も適度に併せ持っており、非常に好印象だった。  次のピアノでは、TF39が単一指向性になっているのを確認し、TF29とステレオ・ペアのようにして立ててみる。ここでも、力強さは感じるが、素早いレスポンスがピアノ・タッチをクリアにとらえてすがすがしい。輪郭がはっきりし、音の余韻を最後まで逃さない描写力を感じた。  そしてストリングス。今回は1stバイオリン×8をはじめ、2ndバイオリン×6/ビブラ×4/チェロ×4/コントラバス×3と、大きめの編成でオフマイクとして使用した。高さ約3mの位置に1.5mほど間隔を開けてセッティング。結果、全体的にとてもバランス良くまとまった音になり、適度なパワー感を含んだサウンドがキャプチャーできた。瞬発力や圧力は確保しながらも、強調し過ぎない音となった。  フル・オーケストラでもオフマイクとしてテストしてみたが、奏者全員が同時に演奏する部分でも音像が破たんすることはなく、幅広い再現性を確認。特にティンパニーやバス・ドラムの深い中低域は明確にとらえられ、空間における楽器の定位が非常に明りょうであった。  最後はボーカルである。今回、男女数人のボーカリストでテストしたが、ここでも共通したのは“中低域が非常に豊か”だということ。音像としてはやや大きめになり、歌声がまとう色気は若干抑えられがちではあったが、表情やニュアンスはきちんとキャプチャーすることができた。  今回は音楽家である服部隆之氏のご協力もあり、大編成のオーケストラ・セッションにてテストを行ったため、ここには書き切れないほど多くの楽器でTF39/TF29を試すことができた。いずれも共通して感じたことは、繰り返しになるが“非常に中低域が豊か”だということ。どの楽器においても音像がしっかり前に出てくる印象で、時によっては大きくなり過ぎる場面もあった。  筆者は普段R-F-T AR-51を愛用しており、このマイクからは明らかに名機の音調を目指してチューニングされた印象を受けている。しかし、今回のTF39とTF29からはAlchemyシリーズならではのサウンドを感じた。筆者はオムニを多用するのでTF39をチョイスするが、カーディオイドでしか使わないというユーザーであれば、価格が抑えられたTF29を選択できるだろう。上級パーツを採用し、精度に優れたAlchemyシリーズのTF39/TF29。高品位な音質と手ごろな価格が大きな魅力のマイクロフォンであると感じた。     (サウンド&レコーディング・マガジン 2020年1月号より)

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