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ラインアレイの特性を生かしたポータブルPAシステム=YAMAHA Stagepas 1K

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第2回 シンプルさと奥深さを備えるミキサー

YAMAHAから8月に発売されたStagepas 1K(オープン・プライス:市場予想価格120,000円前後/1セット)。12インチ径サブウーファーと中〜高域再生用のラインアレイ・スピーカーにミキサーを組み合わせたポータブルPAシステムで、中小規模の音楽ライブから各種イベントでの拡声、音楽再生までさまざまなシーンに対応する。この連載ではStagepas 1Kの有用性に迫るべく、さまざまな切り口からチェックを行う。今月はPAエンジニアであり、尚美学園大学の芸術情報学部情報表現学科で准教授を務める山寺紀康氏にテストしていただいた。 [caption id="attachment_82972" align="alignnone" width="288"]▲Stagepas 1Kをテストした山寺紀康氏。角松敏生や久保田利伸、スピッツなどのPAを担当してきた ▲Stagepas 1Kをテストした山寺紀康氏。角松敏生や久保田利伸、スピッツなどのPAを担当してきた[/caption]

聴きやすい部分を押し出してくれる どんな場所にも対応可能なPA向きサウンド

テストを行ったのは尚美学園大学の教室の一室。アコギ弾き語りライブを想定したセットを作った。「音を出すまでの工程がかなりスムーズにできました」と山寺氏は言う。 「ポイント・ソースのスピーカーでは、持ち上げてスタンドに取り付けることが多く、労力が必要となります。Stagepas 1Kはミキサーが一体になったサブウーファーと高域ユニットを接続するだけなので設置が簡単ですね」 Stagepas 1Kは中高域用ラインアレイ・ユニットに1.5インチのユニットを10基搭載しており、その指向角は170°(水平)×30°(垂直)となっている。 「水平の角度が広いですね。ボーカルの斜め後ろへ設置して鳴らしましたが、サイドの音でモニターができました。ハウリング・マージンもあるので、モニターとメインを兼用する使い方も十分にできます。場所に合わせて、ラインアレイの高さを調節できるのも便利です」 今回は2台のStagepas 1Kを使ってステレオ・モードでの使用も試してみた。マスターとなるStagepas 1Kのリンク・アウトと、もう1台のリンク・インを接続してセッティングする。 「ステレオ・モードの場合、マスター側のミキサーのみで2台のコントロールができます。L/Rで個別に音量を合わせる必要もありません。分かりやすい操作性になっています」
実際に聴いてみた印象についてはどうだろうか? 「使い勝手もサウンドも非常にPA的。バチっと聴きやすい部分が出てきてくれます。同じようなPAシステムは他社からもたくさん発売されていますが、中にはオーディオ的な印象を受けるものもありました。Stagepas 1Kはどんな場所にも対応できるような、PA向きのサウンドで使いやすいと思います」 スムーズなセッティングができる理由の一つとして、1つのノブだけで操作できる1-Knob EQが挙げられると言う。 「こういうシステムでは、大体ローとハイの2バンドEQが多いです。でもStagepas 1Kは、1つのノブでローカットからロー&ハイ・ブーストを調整できます。それがすごく面白いですよね。2バンドの方が細かく調整できそうな気がすると思いますが、実は難しい。演奏者は感覚的に調整する人も居ますから、“抜けが悪いから高域だけを上げよう”とEQして、結果的にキンキンした音になることもあります。そういうことが起きないように、ワンノブのEQになっているのかもしれません」
  [caption id="attachment_82995" align="alignnone" width="626"] ▲ミキサーのパネル。各チャンネルにレベル・ノブや1-Knob EQがあり、ch1~3にはリバーブへのセンド・ノブ、ステレオ・チャンネルにはライン・イン(ステレオ・ミニ)やBluetoothペアリング・スイッチを備える。Bluetooth機器からの信号は、端子に入力された信号にミックスして出力可。マスターには用途に応じて音の特性を調整できるMODEノブなどがある[/caption]   [caption id="attachment_82975" align="alignnone" width="352"]▲音声入出力。ch1にマイク/ライン・イン、ch2と3にはマイク/ライン/Hi-Zイン(いずれもXLR/フォーン・コンボ)が用意され、ステレオ・チャンネルにはライン・インL/R(フォーン)がスタンバイ。そのほかステレオ・ペアで使用する際に必要なリンク・インおよびアウト、モニター・アウト(いずれもXLR)などがある ▲音声入出力。ch1にマイク/ライン・イン、ch2と3にはマイク/ライン/Hi-Zイン(いずれもXLR/フォーン・コンボ)が用意され、ステレオ・チャンネルにはライン・インL/R(フォーン)がスタンバイ。そのほかステレオ・ペアで使用する際に必要なリンク・インおよびアウト、モニター・アウト(いずれもXLR)などがある[/caption]  

ワンノブのパラメーター操作でも 求めている音に近付けることができる

EQだけでなく、MODEという使用シーンに最適な音質補正ができるパラメーターもワンノブでコントロール可能だ。 「MODEは素晴らしいと思います。こういうパラメーターを搭載したPAシステムも増えていますが、Stagepas 1Kはノブでのスウィープが可能で、例えばSPEECHとMUSICの中間にもできる。プロの現場ではパラメトリックEQなどを使って細かく調整していることが、これだけでできてしまいます。ワンノブなので細かく音を詰めていくことができないと思うかもしれませんが、1-Knob EQとMODE、そしてボリュームの調整を組み合わせることで、自分の求めている音に近付けることが十分に可能でした」 REVERBもHALL/PLATE/ROOM/ECHOの切り替えとリバーブ・タイムの調整が1ノブで可能。「PA卓でリバーブをかけるというのはハードルが高いのですが、1つのノブで設定できるのは便利ですね。ただ、モニター・アウトにもリバーブが送られてしまうため、そこが分けられるとより使い方に幅が出ると思います」と山寺氏は語る。
Stagepas 1Kは本体上のミキサーでの操作はもちろん、専用アプリStagepas Editor(iOS/Android)でのリモート・コントロールにも対応している。 「アプリとの接続も素早くできました。音量調整の画面では数値で確認ができるので非常に細かく設定を行えます」 [caption id="attachment_82984" align="alignnone" width="650"]▲情報表現学科の学生、水谷美月さんに協力してもらい、アコギ弾き語りライブを想定してセッティング。メイン・スピーカーとモニターを兼ねるように演者の少し後ろ側へ設置している。写真は専用アプリStagepas Editor(iOS/Android)を使ってリモート操作している様子 ▲情報表現学科の学生、水谷美月さんに協力してもらい、アコギ弾き語りライブを想定してセッティング。メイン・スピーカーとモニターを兼ねるように演者の少し後ろ側へ設置している。写真は専用アプリStagepas Editor(iOS/Android)を使ってリモート操作している様子[/caption] じっくりと音質と操作性を試した山寺氏。最後にStagepas 1Kをこう評した。 「使う人を問わないPAシステムです。学校やカフェ・ライブ、コミュニティやサークルのイベントなどではとても重宝されるでしょう。機能が多いPAシステムだとその見た目だけで抵抗感を持ってしまうと思うのですが、Stagepas 1Kは操作子をできるだけ絞ることで抵抗感の軽減、扱いやすさを向上しています。しかし、シンプルながら音をしっかりと作ることもできる。さまざまな利用シーン、現場のニーズをしっかりと考えて作られているPAシステムだと感じました

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