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「ZYLIA Zylia Standard」製品レビュー:球体マイクと録音/トラック分離ソフトがセットになったパッケージ

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マイク1本で360°レコーディング 後から楽器ごとにトラックの分離が可能

ZM-1は最高24ビット/48kHzでレコーディング可能なマルチチャンネル・レコーディング・マイクロフォン・アレイ。19個ものマイク・カプセルが、手の平に乗るほどコンパクトな筐体へ球面状に搭載されていて、マイク周囲360°のサウンドを録音することが可能です。自立できる足が付いているのでそのまま机の上に置くこともできますし、高さを調整したければカメラ用の三脚などに固定することもできます。録音準備はとてもシンプルで、USBでコンピューター(Mac/Windows/Linux)と接続するだけ。専用ソフトのZylia Studioを使用して、マルチチャンネル・レコーディングを行います。 Zylia Studioを使うことで、録音後のファイルを楽器ごとに分離できます。分離後のマルチトラックはZylia Studioでレベルやパンを調整できますし、DAWなどに読み込んで、さらに音を編集していくことも可能です。 まずは録音の下準備として、ZYLIAのWebサイトからZylia Studioと、ドライバーのZM-1 Driverをコンピューターヘダウンロード&インストール。ZM-1をUSBでコンピューターに接続すると、本体周囲のリング状インジケーターが青く点灯します。ZM-1はUSBバス・パワーで駆動するため、別途電源などは必要ありません。 次にZylia Studioを起動してレコーディング・セッションの準備をしましょう(インジケーターが赤く点灯します)。Zylia Studioの最初の画面には、これまで録音したセッション・データが並びます。新しいセッションを開始するには、左上にある“Start New Session”をクリック。キャリブレーション設定画面に移行します。“Automatic Calibration”をクリックすると、楽器のアイコンが並んだ画面が表示されるので、録音ソースとなる対象の楽器などを選択していきましょう。 [caption id="attachment_78579" align="alignnone" width="650"]▲ZM-1での録音、トラックの分離/調整を行うソフト、Zylia Studio。楽器演奏をレコーディングするときは、各楽器をそれぞれ8秒間録音する。録音が終わるとキャリブレーションが自動で行われ、マイクに対するそれぞれの楽器の位置が認識される。もし位置が正しくない場合は手動で調整も可能。各アイコンの名称は任意で変更できる ▲ZM-1での録音、トラックの分離/調整を行うソフト、Zylia Studio。楽器演奏をレコーディングするときは、各楽器をそれぞれ8秒間録音する。録音が終わるとキャリブレーションが自動で行われ、マイクに対するそれぞれの楽器の位置が認識される。もし位置が正しくない場合は手動で調整も可能。各アイコンの名称は任意で変更できる[/caption] 選択し終えたら、各ソースのサウンド・チェックを行います。それぞれ8秒間録音することでキャリブレーションは完了。このキャリブレーションを行うと、ZM-1の周囲のどの位置にそれぞれの楽器が配置されているか、ZM-1に対してどれくらいの高さに位置しているのかを自動的に認識してくれます。キャリブレーションは、セッションを準備した後やレコーディングを終えた後でも再度行えるので、随時環境に最適化していくことができます。また、キャリブレーションをせずにプリセットを使うことも可能です。演奏に向いたものから、サラウンド用のプリセットまで収録されています。  

ワンクリックでトラックを分離 自動でレベルとパンが調整される

今回は、筆者が普段行っているフィールド・レコーディングや舞台公演のレコーディングの現場などでZM-1を試してみました。 [caption id="attachment_78569" align="alignnone" width="225"]▲今回、フィールド・レコーディングと舞台公演でのレコーディングでZM-1を使用した。写真のように、ZM-1はカメラ用三脚などに取り付けて設置することもできる。USBバス・パワーで駆動するため、コンピューターとZM-1のみでレコーディングを開始できるのはうれしいポイント ▲今回、フィールド・レコーディングと舞台公演でのレコーディングでZM-1を使用した。写真のように、ZM-1はカメラ用三脚などに取り付けて設置することもできる。USBバス・パワーで駆動するため、コンピューターとZM-1のみでレコーディングを開始できるのはうれしいポイント[/caption] 野外や劇場内での使用なので、キャリブレーションは行わずにプリセットを使用します。キャリブレーション画面下にある“Select a preset”から、サラウンド・サウンド向けの“4.0 Quadraphonic Sound”と“5.0 Surround Sound”というプリセットを選びました。 ZM-1本体には赤い点があり、それを前面として周囲の音源の位置を微調整することができます。 [caption id="attachment_78570" align="alignnone" width="300"]▲ZM-1にある赤い点を前面として設置。このポイントを基準にして、周囲の音源位置を調整していった ▲ZM-1にある赤い点を前面として設置。このポイントを基準にして、周囲の音源位置を調整していった[/caption] マイクの入力感度設定は特に無く、録音開始ボタンをクリックするだけですぐに録音がスタート。一度のレコーディングで最大25分まで、収録時間が25分を超えた場合は別の録音データとして自動的に新規レコーディングされます。録音開始ボタンの右側に入力音声のレベル・インジケーターが表示されているので、画面を見ながら入力が適正値になるよう音源の位置を随時確認しましょう。入力感度の調整が無いことに最初は戸惑いましたが、後ほど述べるように結果的に全く問題なく録音することができました。 レコーディング終了後、オーディオ波形の右にある円形アイコンをクリックすると、セッション作成時に設定した音源の位置に基づいてマルチトラック用のオーディオ・データに変換されます。 [caption id="attachment_78580" align="alignnone" width="650"]▲録音したデータは、波形右側のマークをクリックすると、楽器ごとにトラックが分離される(サラウンドのプリセットの場合はチャンネルごと)。分離前に再度キャリブレーション設定を変えることもできる ▲録音したデータは、波形右側のマークをクリックすると、楽器ごとにトラックが分離される(サラウンドのプリセットの場合はチャンネルごと)。分離前に再度キャリブレーション設定を変えることもできる[/caption] セパレートされた各トラックは、自動でゲイン・レベルが調整され、ステレオ再生用にL/Rのパンニングが設定されていました。もちろん、それぞれのレベルやパンニングを自分で調整していくことも可能です。録音ファイルはステレオ・データ、もしくはマルチトラックのデータとしてZylia Studio内から書き出すことができます。 [caption id="attachment_78581" align="alignnone" width="650"]▲分離されたトラックは、自動的にレベルやパンが設定される。手動で調整することも可能だ ▲分離されたトラックは、自動的にレベルやパンが設定される。手動で調整することも可能だ[/caption]  

クリアでS/Nの良い録り音 演者の動きや気配もしっかりととらえる

プレイバックして最初に驚いたのが、聴こえていた周囲のサウンドスケープにとても近い音像で録音されていたこと。レコーディング中は入力値が小さかったのか、レベル・インジケーターがほとんど振れておらず心配でしたが、録り音はとてもクリアでS/Nも良い印象です。音像の定位や分離がとても良い状態でレコーディングされています。現時点では専用のウィンド・ジャマーやローカットの設定が無いので風対策は必要ですが、鳥の鳴き声や風でそよぐ葉の音もとてもクリアに聴こえます。舞台での録音では、開場からお客さんが入り、マイクの周囲を通り過ぎる様子も明りょうに録音されており、演者の動きや気配もしっかりととらえていました。 実際にZM-1を使ってさまざまな環境や現場でレコーディングを行ってみると、USBケーブル1本でコンピューターに接続してレコーディングが始められるのはとても便利だと感じます。野外の作業でも、必要な機材が少なくて済むので移動がかなり楽でした。 Zylia Pro(120,000円)という上位版もあり、ZM-1とZylia Studioに加え、Zylia Studio Pro、Ambisonics Converter、Ambisonics Converter Pluginが付属しています。Zylia Studio ProはAAX/AU/VSTのプラグインとしてDAWに立ち上げることが可能。DAWからオーディオ入力デバイスをZM-1に設定することで、指向性などをカスタマイズすることができますし、最大22.2chのサラウンド・フォーマットにも対応します。また、Ambisonics Converter、Ambisonics Converter Pluginを使うと、録音したマルチチャンネル・データをAmbisonicsフォーマットに変換することが可能。FacebookやYouTubeなどの360°音声が制作できます。 ZM-1を使えば、例えばパブリック・スペースのサウンド・デザインを行った際に現地データを保存するために使用して、サウンドスケープの雰囲気を余すことなくそのままの状態で録音。持ち帰ってから再編集し、アーカイブとして残しておく、というような活用法も考えられるでしょう。この原稿を書いている間にもソフトウェアのアップデートがアナウンスされたりと、今後がとても楽しみな製品です。 (サウンド&レコーディング・マガジン 2019年4月号より)  

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