オーケストラの楽器構成などを
キー・スイッチで瞬時に切り替え可能
まずは画面右のプリセット・ウインドウから、最もベーシックな音色“01 Smart Orchestra”を選択して読み込んでみる。画面中央には音色を切り換えるスロットが並ぶ。これらはキー・スイッチで切り替えることが可能だ。“Instruments”で大まかな楽器編成を選択し、次に“Type”と“Articulation”を選択。デフォルト音色の“Instruments”は“Orchestra”、“Type”は“Short+Perc.”、
“Articulation”は“Staccato”となっており、フル・オーケストラの短い音価で演奏した音色に加え、キー・レンジの上部に各種パーカッション音色が割り当ててある。左部の音色を切り替えることで、それ以下のスロットの音色アサインのラインナップが適宜変わるようになっており、イメージする音色に手早くたどり着くことができる。
その下には、音色の各調整を行うPERFORM/CONTROL/EDITタブが並び、一番右に各楽器セクションのミックスを調整するMIXタブがある。これらはMIDIコントロール・チェンジで変化させることが可能だ。例えば、ストリングスの白玉に中低音の金管楽器をレイヤーし、その上に木管楽器のソロを乗せ、打楽器でアクセントを付けるという楽器ごとの打ち込みでは手間のかかるアンサンブルが、Vienna Smart Orchestraを使えばキーボードの演奏とMIDIコントロール・チェンジがアサインされたスライダー(もしくはペダルなど)で、リアルタイムに演奏できてしまうのだ。
音色はどの楽器も表情に偏りがなく、鍵盤で演奏しやすい音色となっている。特に木管楽器のソロなどは、クラシカルなフレーズに適したレガートがかかり、ランやアルペジオのようなテクニカルなフレーズを演奏しても、音楽的に問題無く聴かせてくれる。また過度なEQがなく、ドライ寄りの音色となっているので、ほかの音源やスタジオ録音の生演奏とのアンサンブルなども違和感なく行える。本製品でとりあえずの骨格を作り、その後ほかの音源で肉付けしていくという使い方もよいだろう。
リアルな音場を再現した臨場感のある音
シンセと組み合わせた幅広い音作り
MIXセクションには、高品質なエフェクトが搭載されている。マスター・セクションのリバーブをClose/Ambient/Distantというプリセットから選択することにより、全体の残響の質感を整えることができる。
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![▲MIXセクションにはエフェクトが搭載されている。リバーブには3つのプリセットが用意されており、全体の質感を整えるのに便利]()
▲MIXセクションにはエフェクトが搭載されている。リバーブには3つのプリセットが用意されており、全体の質感を整えるのに便利[/caption]
また、各チャンネルの“Edit Impulse Response”で、各楽器のステージ・ポジションをシミュレートすることにより、非常にリアルな音場を再現することが可能だ。本製品だけでも臨場感あるクオリティの高いサウンドに仕上げることができる。
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![▲各楽器のステージ・ポジションをシミュレートするImpulse Responseの編集画面。本物のオーケストラのような臨場感のあるサウンドを作ることができる]()
▲各楽器のステージ・ポジションをシミュレートするImpulse Responseの編集画面。本物のオーケストラのような臨場感のあるサウンドを作ることができる[/caption]
そして、Vienna Smart Orchestraのもう一つの顔とも言えるプリセット“FX-Preset”を読み込んでみる。こちらはオーケストラのライブラリーを使ったPERFORM/CONTROL/EDITを駆使し、インサーション・エフェクトで大胆に加工されたシンセ・サウンドが多数プリセットされている。生オーケストラのシミュレーションではなく、現実には無いサウンドを高品位で多彩なサンプル・ライブラリーを使って作り上げることができるのもVienna Smart Orchestraの大きな魅力だ。
劇伴などの仕事では、手早くスマートに楽曲のデモを仕上げなければならない場合が非常に多いが、オーケストラ音源メーカーとして長年信頼の厚いVIENNA SYMPHONIC LIBRARYから、このような需要に応えてくれる製品が出たのは大変喜ばしいことだ。
筆者は日ごろ、思い付いた楽曲アイディアをピアノの音色で録音し、ストックしておくことが多いが、オーケストラの曲であればこの音源で骨格を作り、時間を置いてからブラッシュアップする、という使い方も便利そうだ。“何話目のこのシーンだけどうしても!”という急な追加曲のオーダーに対応するための心強い味方となってくれるだろう。
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(
サウンド&レコーディング・マガジン 2018年12月号より)