パラメーター・アサインを自動化する
独自のDAWインテグレーション・プロトコル
Impact GX49が手元に届いたとき、その軽さに少々驚きました。ミニ鍵盤ではなく、演奏性を優先したノーマル・サイズの鍵盤を採用しているにもかかわらず、誰もが片手で運搬できそうな軽さです(ちなみに重量は2.18kg)。そういうわけで“演奏したときの安定感はどうなのだろう?”と思いましたが、機材としての重心の置きどころが良いようで、多少激しく演奏しても指先に不安を感じることはありません。可搬性と演奏性のバランスが取れた製品であると感心しました。
NEKTAR TECHNOLOGYの製品は“DAWインテグレーション”という独自プロトコルを採用しており、各種DAWソフトとの連携性の高さを特徴としています。簡潔に説明すると、各DAWに合わせてパラメーター・アサインを自動的に行ってくれるもので、手持ちのDAWに対応したファイルをダウンロード&インストールすれば、良い意味でコントローラーとしての存在を意識することなくオペレートできます。APPLE Logic Pro XとGarageBandでチェックしてみたところ、ほぼインストールするだけでセットアップが完了しました。
DAWインテグレーションは現時点で10種類のDAWに対応していますが、非対応のDAWでも汎用コントローラーとしてボタンやホイール、フット・スイッチ端子、コントロール・ノブなどにMIDI CCメッセージを割り当て可能。またDAWのトランスポートを制御するMMCにも対応しているので、自身の環境に応じたオリジナルの設定も簡単に行えます(AVID Pro Toolsなどに関しては、日本語マニュアルに設定の方法が記載されています)。
7つのトランスポート・ボタンには
任意の機能を14種類までアサイン可能
Impact GXシリーズはパネル上にピッチ・ベンド/モジュレーション・ホイール、オクターブ・シフト・ボタン、半音刻みのピッチ・トランスポーズ・ボタン、シフト・ボタン(以上のボタン類は自照式)、トランスポート・コントロールのボタンやロータリー・ノブなどを配置(写真①)。これらの配置と機能の割り振りがよく考えられています。
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![▲写真① パネル左側の操作子。上段には、ボリュームなどを割り当てられるロータリー・ノブ、ベロシティ・カーブの選択やグローバルMIDIチャンネルの設定時に使用するセットアップ・ボタンを配置。中上段にはシフト・ボタンやトランスポート・コントロールのボタン、中下段にはオクターブ・シフト・ボタンやピッチ・トランスポーズ・ボタンが備わっている。下段にあるのは、ピッチ・ベンド・ホイールとモジュレーション・ホイール]()
▲写真① パネル左側の操作子。上段には、ボリュームなどを割り当てられるロータリー・ノブ、ベロシティ・カーブの選択やグローバルMIDIチャンネルの設定時に使用するセットアップ・ボタンを配置。中上段にはシフト・ボタンやトランスポート・コントロールのボタン、中下段にはオクターブ・シフト・ボタンやピッチ・トランスポーズ・ボタンが備わっている。下段にあるのは、ピッチ・ベンド・ホイールとモジュレーション・ホイール[/caption]
例えばピッチ・トランスポーズ・ボタン。オクターブ・シフト・ボタンと同様に4色の自照式ボタンとなっており、このサイズの機種としては珍しく、半音単位のピッチ・トランスポーズが行えます。曲のキーやフレーズに応じて黒鍵の登場回数を減らすなど、指使いが容易な状態にセットできるので、鍵盤が不得手な人にも重宝しそうです。またバック・ライト色の違いで設定を確認できる視認性の高さは、ライブ・ステージでも安心感につながるでしょう。
7つのトランスポート・コントロール・ボタンとシフト・ボタン、ロータリー・ノブはDAWインテグレーションによって制御されます(画面①)。トランスポート・コントロール・ボタンは、シフト・ボタンと併用することでアサイナブルなボタンとしても機能します。シフト・ボタンは自照式で青く点灯し、“消灯”“点灯”“ボタンを押しながら”の3つのモードを切り替え可能。各モードでトランスポート・コントロール・ボタンを使えば、トランスポートとは別に最大14種類のパラメーターをアサインして扱えます。再生/録音やメトロノームのオン/オフなど、使用頻度の高い機能の多くが手元でワンタッチ操作できるので、“DAWに演奏情報を記録する”という肝心のプロセスに集中できます。これが本機の一番の魅力ではないでしょうか。
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![▲画面① APPLE LogicのMIDIコントーラー設定画面。DAWインテグレーションのファイルをコンピューターにインストールすると、それだけで設定が完了した。ちなみにDAWインテグレーション自体は、固有のグラフィック・ユーザー・インターフェースを持たない]()
▲画面① APPLE LogicのMIDIコントーラー設定画面。DAWインテグレーションのファイルをコンピューターにインストールすると、それだけで設定が完了した。ちなみにDAWインテグレーション自体は、固有のグラフィック・ユーザー・インターフェースを持たない[/caption]
筐体のデザインに関しては、鍵盤のベゼル(鍵盤の周囲の部分)の高さが他社のMIDIキーボードに比べてかなり低くなっています(写真②)。これは思いのほかメリットで、コンピューター・キーボードやノート・パソコンをImpact GXシリーズと同じような高さの台に乗せれば、それらと鍵盤の高さのギャップがさほど無い状態になります。他社の同サイズ製品はベゼルがもう1〜2cm高いのですが、その違いが使い心地において差を生む場合が多々あり、操作性にも直結します。ここは、セッティングにシビアなユーザーにぜひとも見てもらいたい部分です。
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![▲リア・パネルの右側には、フット・スイッチ端子(フォーン)とUSB端子が配置されている]()
▲リア・パネルの右側には、フット・スイッチ端子(フォーン)とUSB端子が配置されている[/caption]
Impact GXシリーズは、演奏性と可搬性に重点を置いた環境を望んでいる方には間違いなくお薦めできる製品。また、現状のセッティングに満足感が得られない方にも、ぜひ試してもらいたい一台です。
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(
サウンド&レコーディング・マガジン 2017年12月号より)