USB3.0に対応した
Windows専用インターフェース
UAD-2デバイスには、既にPCIe、FireWire(以下FW)、Thunderbolt(以下TB)接続の製品があります。ほかにもDSP搭載オーディオ・インターフェース、Apolloシリーズがあり、FW、TB接続が先行し、先日USB接続の本機が登場したのは記憶に新しいでしょう。UNIVERSAL AUDIOはMac先行のイメージが強く、Windowsユーザーとしては歯がゆいところがありました。TBインターフェース自体は、Windows機にも組み込み可能ですが、UAD-2 Satellite ThunderboltはWindows未対応であり、WindowsユーザーがUAD-2プラグインを使うには、PCIeかFW接続を選択するしか道がなかったのです。現状、FW自体がレガシー接続になり、レイテンシーと最大使用プラグイン数の面でPCIe、TB接続に遅れをとっている今、ここにきてUSB接続の製品が登場してきたことはWindowsユーザーにとって喜ばしいニュースでしょう。なお、本製品はWindows専用であり今後のMacへの対応予定はないとのことです。
著者は既に自作Windows機にPCIe接続のUAD-2 Octoを導入しています。今回使用するデモ機も同じくOctoモデル。製品には電源アダプターとUSB 3.0ケーブル、ドライバーのディスクが同梱されており、ドライバーをインストールした後、本体に電源アダプターをつなげ電源を入れ、USBケーブルでPCとつなげるとあっさりと認識が完了。既存のUAD-2システムにも問題なく組み込みができました。インストール時に注意すべき点として、UAD-2製品は複数導入によるDSPの拡張ができますが、インターフェースの種類により使用できるUAD-2製品の最大数に違いがあること(USBは最大2台まで)、ノートブック/タブレットの2-in-1システムやPCIeカードで拡張されたUSB 3.0接続は非サポートであること、USBバス・パワーには対応していないこと、USB 3.0ハブを用いた接続には注意が必要であることなどが挙げられます。これらに関しては、UNIVERSAL AUDIOおよび国内代理店であるフックアップのWebサイト(
http://hookup.co.jp/products/universalaudio/uad2/satellite_usb.html)で確認が可能。また、本体の大きさは1Uハーフ・ラックに近かったため、製品のゴム足を取ればラックに収まるのでは?とも思いましたが、そういった設置は想定されていないようです。本体がファンレス構造であり静かですが、放熱も考え設置場所を決めましょう。本体の向きは横倒しと縦置きの両方で利用可能です。
UAD-2製品は専用常駐ソフトで現在のDSP使用状況やレイテンシーの確認、さらに製品のオン/オフを設定できますが、そのソフト上でも実体感としても、PCIe接続と今回のUSB接続の製品に全く違いはありません。1製品のみの使用、複数製品の連携、プロセッサーの入れ替えも問題なく、非常に安定した動作となっています。
豊富な専用プラグインをラインナップ
Analog Classics Plusをバンドル
全ラインナップに付属されるAnalog Classics Plusバンドルのプラグインは非常に実用的なものですが、UAD-2の最も魅力的な点は、非常に質が高く音楽的な専用プラグインが豊富にラインナップされていることです。著者は主にオーケストラやジャズなど生音を使った規模の大きな楽曲を扱うことが多いのですが、常用するプラグインとしては、非常に音楽的なEQであるNeve 1073、キャラクターが異なる2つのコンプレッサー1176LN Rev. EとTeletronix LA-2A Silver、リマイキングも可能なコンボリューション・リバーブOcean Way Studios、温かなサチュレーションを加えるテープ・シミュレーターAmpex ATR-102などがあります。すべてのプラグインは14日間のデモ試用が可能なため、試してから購入を考えることができます。また、購入済みプラグインのライセンスはUAD-2本体内に保存されるため、USBの外部接続の特性を生かし、モバイル用や外部スタジオなどのWindows機に、ドライバーがインストールされていることを前提として、自分のプラグイン・ライセンスを持ち込んで使用可能です。
UAD-2ユーザーがいずれ直面する現実的な悩みは、“プラグインが良いため、使い過ぎてDSPパワーが足りない”というもの。“初めは、ボーカル・トラックのみのレベルアップだけができれば良いくらいに考えていたのですが、いつのまにか……”という声は、冗談ではなくよく聞かれるのです。例えば、筆者によくあるパターンとして、24ビット/96kHzのプロジェクト上で、EQを全トラックに差し(32基)、コンプレッサーをブラス、ドラム、シンセにかけ(8基)、楽器群ごとに違うリバーブを作り(3基)、最後にテープ・シミュレーターを通す(1基)、とプラグインを起動した場合、OctoのDSP消費は約70%となりQuadでは足りない、という状況が発生してしまうのです。
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既にApollo Twin USBを使用している場合、前述したインターフェースによる複数接続の制限として、本製品は1つしか追加できません。最近登場するUAD-2プラグインには、かなりDSPパワーを必要とするものも多いという状況や将来を見据え、本製品の購入には、まずOctoから検討することをお薦めします。その投資は決して無駄ではないことをすぐに実感できるはずです。
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![▲リア・パネルには、電源スイッチ、DCイン、USB 3.0端子を搭載]()
▲リア・パネルには、電源スイッチ、DCイン、USB 3.0端子を搭載[/caption]
(
サウンド&レコーディング・マガジン 2016年9月号より)